「てならいのうた」4日目

「人間の世界から」

人間の世界から
言葉や文字を抜いてしまうと
とてもさっぱりとした
世界になる

あちこちで
ワニとヌーとの戦いがあり
スーパーでは
猿たちが餌に群がる
路上の至る所では
マイコドリやカイツブリが
求愛行動に励んでいる
湿った石の下のダンゴムシは
瞑想を欠かさない

人間の世界から
言葉や文字を抜いてしまうと
魂まで抜けてしまう
魂が抜けると
喜怒哀楽も抜けてしまう

苦海に沈んだ人間たちは
どこかでそうなりたいと望んでいる
人間であることから解放されたいと

それは人間としての死を意味するが
生き物としての死ではない
草花のように樹木のように
直接に宇宙に交流し
自然の摂理のままに生き死にし
不快を知らない
そういうさっぱりとした生き方を
したいものだと願っている

彼らの心には
人間界の人間は
死ぬまで愚かでいなければならない
そんなふうに思えている


いいなと思ったら応援しよう!