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その辺に生えてるのに見向きもされないスーパーフード、スベリヒユを食べてみた

7月に入って続く猛暑。この茹だるような暑さは現代っ子から元気を含めた諸々を奪う。僕は基本的に年中元気がない人間だが、夏のそれは他の季節と一線を画すものがある。しかしそんな酷暑にすくすくと成長する植物がある。なんとも見習うべき姿勢ではないか。是非とも夏を乗り切るために力を貸してもらいたい。

彼らの名前はスベリヒユ。多肉質の葉は乾燥に強く、炎天下でも地を這うようにして逞しく成長する。とはいえ所詮は雑草。畑なんかに勝手に生えてはしぶとく増えていくその生き様は、農家にとって迷惑極まりないだろう。

真夏のアスファルトの上でも余裕がある

そんな彼らだが、実は、今話題のオメガ3脂肪酸を含むスーパーフードとしても注目されている。オメガ3脂肪酸は人体で作ることができないので、摂取するしかない栄養素だ。その効果は血液をサラサラにして血栓・動脈硬化を防ぐだとか、血圧を下げるだとか言われている。まあスーパーフード云々を抜いても食味が良く、日本では山形県で以前から食べられてきたようだ。また、ギリシャやトルコでは野菜として、サラダやスープなど様々な料理に使われているという。自分の経験上、ちゃんとした食文化が残っている野草は美味しいと思っているので、その点でもスベリヒユはかなり期待ができる。こんなものが身近にあって食べない手はない。さっそく採りに行こう。

現地に生えているものを観察してみると実に可愛らしい見た目をしている。もう少し成長すれば、これまた可愛らしい黄色の花が咲くという。ちなみに、園芸用として人気のポーチュラカもスベリヒユの仲間であり、こちらも食べられるそうだ。
地面を這うように生えているので、結構土や砂なんかが付いているが、どうせ洗うだろうとブチブチ摘み取っていく。ただナメクジのフンらしきものがついているところは避けた。加熱するとはいえ寄生虫は怖いし、あんまり気分も乗らないし。美味しく食べるにあたって、食材へのマイナスなイメージが無いに越したことはない。
これも葉を食べる野草の例に漏れず、加熱するとカサが減るので少し多めに取っていくといいだろう。

食べる前の注意点

すぐ近くに生えていたこの植物。違いが分かるだろうか。これはコニシキソウという毒草だ。
分かりやすい違いは3つ。1つ目は、スベリヒユに比べて全体的に薄っぺらいこと。2つ目は、葉が先端に向けて細くなっていること。そして3つ目は、茎を千切ると断面から乳白色の液体が出ることだ。これが一番分かりやすいので慣れない人は一度千切ってみるといいだろう。もちろんこの時に出る液体は毒を含むので、間違っても液がついた手で目や鼻を擦ったりしないこと。

後から写真見たらめっちゃボケてた

調理

とりあえずは綺麗に洗う。ボウルに溜めた水で洗ったら、再度水を換えて洗う。これを数回繰り返すだけだ。気分の問題もあるので僕はこの作業に時間をかける。スベリヒユは他に手間はいらないのでそのくらいはしてもいいし、するべきだと思う。
せっかくなので洗ったものを生で食べてみる。葉も茎も肉厚で歯ごたえがいい。味はどぎつい酸味のレタスという感じだ。ヤブカンゾウを生で食べたときもレタスっぽさを感じたが、エグさのない野草というのはだいたいこの辺に落ち着くのかもしれない。
よく洗ったスベリヒユは沸騰したお湯で1分くらい茹でてから冷水に落とし、その後水を換えて10分程度シュウ酸抜きをする。
ちなみにオメガ3脂肪酸は高熱に弱く、揚げる料理には向かない。オメガ3のことだけ考えるなら生で食べるのが1番いいのだろうが、ナメクジの寄生虫対策やシュウ酸抜きも兼ねて、茹でがちょうどいい落とし所なんじゃないかと思う。
茹でた後は絞って水気を切るが、この段階で粘りがもの凄いことになっていた。茹でたモロヘイヤをイメージすると分かりやすいかもしれない。強く絞るとグズグズになりそうだったが、水っぽいまま食べるよりはと思って結局強く絞った。
味付けは、本場山形の食べ方に倣い、からし醤油和えにした。味の補強に鰹節、ゴマも入れる。また、カルシウムを多く含むそれらは、シュウ酸の吸収を抑えるのにも一役買う。紅茶やコーヒーに牛乳、ほうれん草に鰹節やゴマを合わせるのは食味の良さだけでなく、栄養面でも実に合理的なのだ。

実食

完成したスベリヒユのカラシ醤油和え。
濃淡それぞれの緑と優しい赤が混ざった見た目は、そこいらの雑草とは思えないほどに食欲をそそる。恐る恐るという感じではなく、自然と箸が伸びた。
生で食べたときとは違い、酸味が抜けている。味はほうれん草に近く、ヌルヌルシャキシャキとした食感が夏らしくて良い。ほうれん草にオクラやモロヘイヤの粘り気を足したような感じだ。スベリヒユを知らない人がこれを食べても、野草や山菜を食べているとは思わないだろう。何か新しい野菜を食べていると思うはずだ。そのくらいに、味が洗練されている。興味本位で一回食べたらもういいやという野草ではなく、ノビルのように毎年採ってでも食べたいと思える美味しさだ。
このぬめりを活かすなら、オクラのようにタタキにして素麺なんかに乗せてもいいし、山形の郷土料理である「だし」に入れるのも美味しそうだ。
何にせよ、来年も食べることになるだろう。来年と言わず、今年中にまた採ることになるかもしれない。

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