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一般成人男性ヲタク vs シルバニアファミリー


某月某日。

一般成人男性ヲタクこと、筆者は秋葉原にいた。
午前中の客先での仕事を終え、あとは帰社するだけ。
その前にお昼でも食べようかなぁと思い、乗り換え駅である秋葉原駅で途中下車する。
駅前のラーメン屋だったり、カレー屋のリストを眺めながら、何食べようと思案している矢先だった。


ふと、視界の端にファンシーな光景が広がり、足を止める。

『わくわく♪シルバニアファミリーくじ』

ふーん。
駅の構内で物産展をやっている光景はよく目にするけど、シルバニアファミリーのポップアップをやっているのは初めて見たな。

それこそ物産展ならまだしも、30歳overの成人独身男性にとって、シルバニアファミリーとは中々縁遠いものである。昔、妹が小さいころにシルバニアで遊んでいたな、なんて遠い昔の記憶はありつつも、さてさてカレー♪ラーメン♪どちらにしようかな?で頭はいっぱいだった。まばらな人混みができているファンシーな一角を一瞥しその場を後にしようとした時、ふとカレーとラーメンに割って入る一人の人物の顔が浮かんだ。


アイドルグループ『SW!CH』のHARUKAさん。
何を隠そう、筆者が応援しているSW!CHのメンバーの一人である。そして、公式プロフィールの好きなものの欄に『シルバニアファミリー』と書いたり、生誕祭の展示品にシルバニアファミリーが飾られたりするなど、自他ともに認めるシルバニア好きである。事実、SW!CHが関東圏以外に遠征する際などはIKEAの小さいビニールバックにシルバニアファミリーを監禁……お連れして旅の思い出写真を撮るはるちろ(HARUKAさんの愛称)の姿が何度も目撃されている。

スシロー インザスカイ ウィズ シルバニア


右)はるちろ


エビとエビ

ふーん、シルバニアねぇ。

ヲタクの悪い癖でもあり、良い習性だと思うのだが、それまで全く興味の無いものだとしても、『推しの好きなもの』『好きな人の好きなもの』はいつのまにか『無関心』と『関心』の丁度間にひっそりといることがままある。

ふーん、シルバニアくじかぁ。1回700円ねぇ。手頃だな

気をつけて欲しいのだが、この『手頃』という表現は比較対象による、相対評価なのだ。
アイドルヲタクはいわゆるプロの調教を受けている。
野口英世が数枚飛ぶような、ランダム性の高いくじなんでごまんと見てきた。そして、その数多くが報われない末路になること、まるで砂漠の中で金を見つけるような、ごく限られた栄光しか埋まっていないことをよく知っている。
700円?箱で買うワンドリンク、つまりはペットボトル500㎖と同じ金額なのだ。これは、安い。安いぞ。ランダムというワクワクと、好きなメンバーへの土産話がペットボトル500㎖で買えるのであれば、それはもうタダ同然である。繰り返す。アイドルヲタクは特別な訓練を受けています。

金銭面はオールクリア。
しかしながら、もう一つ、シルバニアくじへの障壁があった。

自分の格好を改めて確認する。革靴、昨今もはや珍しくなりつつあるネクタイまでしっかり着用したスーツ姿。THE ビジネスマン。時間は、ド平日のお昼過ぎ。
はちゃめちゃに浮きますねぇ。
ブースを見ると、お客さんは100%女性。秋葉原らしくロリータ衣装に身を包んだ人、女子高生くらいの女の子、同年代か少し上くらいの女性、子供連れのお母さん等々。スーツ姿の成人男性が入り込む余地……無し。

さて、どうしたものかと思案する。
遠巻きにシルバニアファミリーのブースを凝視する成人男性、改めて思うとこっちの方がヤバイ。
ここでさらりと、「ふんふーん♪ 知り合いのシルバニア好きのために1回だけやりますよっと」みたいな何食わぬ顔でくしだけ引ければいいのですが、変な羞恥心が勝ってしまう。

その結果、とりあえず一種の逃げとして、駅構内にあるラーメン屋『東京じゃんがら』に逃げ込み、一旦心を整えることにした。

一時避難所


豚骨ラーメンの気分じゃなかったんだけどなぁ、と思いつつ、この後どうするか脳内作戦会議。豚骨ラーメンはもはや味とかそういうのじゃなく、お腹に入れ込む作業と化す。こっちは真剣なんだよ、馬鹿野郎。

もう、諦めて会社に戻ろうかなと思った。
もし、仮にですよ、大きいやつ、赤い屋根の大きなおうちみたいなもの当てちゃったらどうするの?と。コインロッカーにぶち込むにしても、赤い屋根の大きなおうち持ったスーツ姿の成人男性、めっちゃ目立つよ? いくらヲたくの坩堝(るつぼ)と言われる秋葉原ですら、それは異物だよ?と。

でも、そんな無駄な思い込みをしている間にも、かすかに店内まで鐘の音が聞こえてくる訳です。カランカラン。福引特有の当たりの音。ランダムとかそういう類のものに弱い悪魔のような鐘の音が。

鐘の音とともに浮かびあがるのは、はるちろの笑顔。
はるちろの笑顔、好きなんですよね。破顔、って言えるような口を大きく開き、本当に楽しそうな笑顔。

舞台上のはるちろ


舞台上のはるちろ②


ラーメンを胃に流し込む作業が終わった時、心はもう決まっていました。

vs シルバニアファミリーくじ。

ラーメン店に別れを告げ、颯爽と、風を切るように、駅構内のブースへ一直線に向かう筆者。
肩慣らしに、ブース内の商品を見つめる。種類豊富なシルバニアファミリーを見つめる。シルバニアダイスキ。シルバニアダイスキ。自己暗示。

というのは冗談で、割としっかり見入ってしまう。
昔、子供のころには全く気づかなかったことですが、本当に良くできたフィギアであり、おもちゃであり、人形ですよね。加えて、備品というか、テーブルや椅子といったインテリアも凄く精巧で。
ミニチュアとしての完成度が高く、子供向きなだけじゃないおもちゃ。展示物を見ていると、普通に飾ったら楽しそう。コレクター心くすぐられるし、普通に欲しくなってしまいます。

そんなこんなしてたら、くじの辺りの人がまばらになってきたので、店員さんとファーストコンタクト。

筆者「シルバニアファミリーくじ、一回お願いします!」
店員さん「はい!1回700円になります。これを、くじ担当のスタッフにお渡しください」

レシートを渡される。これが半券がわりになるようだ。
すぐ横のくじエリアに向かう。前に1名、同じくらいの年齢の女性が一心不乱にくじを回している。
既に、下の賞を指すであろう白に近い色の玉が数個。分かる。分かるぞ。こうなるとムキになって、次は当たるんじゃないか、って沼るんですよね。

そして、ここで驚愕の真実が発覚。
ハズレ無し、だからどんな色の玉でもカランカラン、悪魔の鐘を都度鳴らしていたのか。ガッデム。やられた。そんなのありかよ、ベイビー。ええい、ままよ。乗せられた船だ、そのまま乗ってやる。

とぼとぼと意気消沈して、くじブースをあとにする前の女性。
あなたの分まで、私が敵をとります(1回だけど)。

「1回ですね!一度左に回して中をかき混ぜてから、右に回してください!」

店員さんの分かりやすい指示のもと、福引くじのペダルを回す。
ぐるぐる。中の玉が混ざる音。よし、ここだ。

ゆっくりと、右回転。
よし、こい。

ころん。

黄色の玉。

きいろ。

アカン、これ、絶対白に近いやつだ。
やっぱり、砂漠の中で金を見つけるようなものなんだ……。


「おめでとうございます!!黄色です!!」

ん?
何か店員さんの反応がおかしい?
明らかに、『普段起こらない時』の反応をしている。

ここで初めて、当たりの景品を確認する。
もうね、引くことが大事だったので、景品の確認すらしていなかったのだ。

黄色……うぉ!!!景品が小さい袋のタイプじゃなく、小さいけど箱だ!!!
上から……三つ目の当たり!?

上二つは明らかに建造物(家)らしき大きな箱で、その特別枠を除くと一番の当たり。
やったぞ!!!1発1中だ!!!やったぞ、はるちろ!!!

明らかに、周りの人たちがざわついている。
それもそのはず。何度も回してきた人たちが中々上の賞を当てない中、スーツ姿の成人男性が、1回回しただけでそこそこ良い賞を当てたのだ。


当初の予定より、明らかに目立ってしまっている。
早く、この場から立ち去りたい。
頼むから仕事関係の人、知人、通らないでくれ。頼む。頼む。頼む。

もう、当てたことより早く帰りたい、が勝る。
そんなぐっちゃぐちゃな精神状況の中、店員さんは少し興奮気味に、よく分からないことを聞いてきた。

「黄色の賞、どちらにしますか???」

どちら???

よく見ると、黄色の賞は選択肢がある。

①にじいろようちえんバス

かわいい。

②アヒルのみつごちゃん なかよしおさんぽセット

かわいい。


分かんねぇよ!!!
正解、どっちだよ!!!
※シルバニアファミリーファンの皆様許してください。

羞恥心にさいなまれながら、頭をフル回転させる。
ようちえんバス、箱が明らかにデカい。こちらの方がインパクトあるし、元値高そう。
※シルバニアファミリーファンの皆様お許しください。

それに比べて、アヒルのみつごちゃん、箱が一回り小さい。
というか、シルバニアファミリーに今アヒルっているのね。ショコラうさぎとかしか分からんぞ。キャラクター的に少しマイナーなのかな。根強いファンがいる的な?
※シルバニアファミリーファンの皆様お許しください。

思い出せ。
はるちろの持っている子たちを思い出せ。
遠征の度に上がってた写真を思い出せ。
はるちろカワイイなぁ!!!しか全然覚えてないけど、はるちろの手元を思い出せ。


確か、鳥(※アヒルのこと)はいなかった……はず。
あと、ハイハイしてる子がいた……よな?


ここで、筆者に電撃が走る。

イメージ図

それは、小さい頃のかすかな思い出。
妹が泣きじゃくる思い出。
シルバニア用の車かなんかを買ってもらったものの、車に書いてあるシルバニアファミリーが入ってなくて泣きじゃくっていた思い出。

そして、もう一つ。
SW!CHの公式プロフィール、はるちろの欄に記載のあった『シルバニアの赤ちゃんを集めること』の表記。




キミにきめたあああああああああああああ!!!!!
ウェルカム!!みつごちゃん!!!


ということで、無事、みつごちゃんを選び撤収。
持ち帰り用の袋を購入し、その際、店員さんと話を少ししたのですが、1回でこのレベルの賞を当てたのはやはり珍しいらしく。


店員さん「良かったですね!!」
筆者「はい笑 シルバニア好きのに良いお土産が出来ました!!」
店員さん「お姉さんに、当たったよ!!ってドヤっていいですよ笑」


とのことだったので、


お姉ちゃん!!!当たったよ!!!!




P.S.

この記事を書きながら、はるちろシルバニアファミリーのレパートリー写真を集めるために彼女のSNSを探っていたところ、









え???




持ってるどころか、被ってるじゃないですか!!!!!
ごめん、お姉ちゃん……!!!!!


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