想いは秋葉に乗せて
最近は寒さが増して
だんだんと冬になっていると感じ
ニュースなんかではもう
秋の季節だとかなんとか
だんだんと日が進み
20を迎える子供たちは
大抵、楽しみにしてるであろう
成人式がある
なぜ大抵と付けたか
成人式は一月だから
2月、3月が誕生日の人は
まだお酒が飲めないからだ
高校三年生の頃
クラスで孤立するわけでもなく
常うるさく仲間内でいるわけでもなく
色んな人と話してほどほどに
青春というものをしてた
女子ともよく喋ってたし
男子のそれなりのノリにも乗ってたし
割とクラスの中心にいた方
だと勝手に思ってる
そんな中でもよく話す
一人の女子がいた
蓮 : あははっ!わかる、あれまじ面白いよね!
彼女は岩本蓮加
男女混合のダンス部で一緒になり
クラスでもよく喋るようになっていた
ただ俺は仲良く"友達"として
接していたつもりだった
けれど
休み時間に蓮加と話して
授業のチャイムで自席に戻ると
男 : おい、お前岩本のこと好きなんだろ?
なんて言われることがよくある
正直、恋心なんて
持っていなかったけど
そんなこといっぱい言われたら
ちょっとは気にしちゃうじゃん
ちまたでは付き合ってるとかいう噂まで...
っていう噂話を蓮加と二人に
なった時に話してみた
蓮 : あははっ!うける!笑
〇 : そんな笑う?笑
太ももを叩きながら
声をあげて笑う蓮加
蓮 : だって、あんたと私が付き合ってるとかなんて!笑
今度はお腹を抱えて笑う蓮加
〇 : ...
そんな面白いことかなぁと思いつつ
叶わぬ夢になってしまうんだなと
心の中で密かにそう感じていた
蓮 : ...
蓮加は〇〇の顔を見て
少し下唇を突き出した
蓮 : ...まぁあくまで噂話だもんね〜
〇 : ...そうだよな
その日は気まずくなって
すぐさま帰った記憶
でもその日はとても
嬉しかった記憶もある
それから卒業を迎え
皆んなそれぞれ別々の進路へ進んだ
俺は大学に進学した
大学2年の冬
成人式のために
わざわざクリーニングに出した
正装を着て会場へ向かう
家を出る時には一通のメールが
「バレないようにしっかりね」
と苦言を通して一言が
「はいはいわかってますよ」
と一言返事をして家を出た
成人式の会場に着いて
久しぶりの面々と顔を合わせ
少し喋りそのまま式が始まり
式を終えた後、一度家に帰宅した
「こんな服でいい?」
「もっとカジュアルな方が良いんじゃない」
あまり服に興味がない俺は
なに着ていけば良いかを訊いて
言われた通りの服に着替え
同窓会の場所へ向かった
最寄駅に到着し会場まで
歩いていった
会場にはもうほとんど揃っていて
仲良いメンツのところに入り込んだ
男1 : おい遅せーぞ!
〇 : 悪い悪い
俺を大声で迎え入れる友達
俺が入ってから数秒後に
蓮 : やっほー
女 : おっ蓮加!久しぶり!
高校の頃一番仲の良かった
蓮加が入ってきた
男友達に囲われ席に着くと
男 : お前まさか岩本と一緒に来たのか?笑
なんて言われて
〇 : そんなわけないだろ笑
と笑って返した
男 : まぁそうだよな。お前に彼女がいるわけないもんな!笑
〇 : ぶっとばすぞ笑
とか言われて場が
笑いに包まれていた
女1 : 男子たち盛り上がってるね〜
女2 : あの頃と変わらないね〜
見えない壁を挟んで
男子と女子に分かれている
微笑ましいなとか
懐かしいとか
たった2年会ってないだけなのに
こういう感情を持つんだなぁ
男子同士て会話に
花を咲かせていると
〇 : ...ん
ちらっと見た女子の方を見ると
蓮加と目が合った
蓮加は軽く手を振って
また女子軍の会話に戻っていった
男2 : おいおい、岩本に惚れちまったのか〜?笑
〇 : そんなわけないだろ笑
また揶揄われたから
さっと受け流す
男1 : そういえば岩本と付き合ってるとかいう噂あったよな
思い出したかのように
口を開くとまた俺の話
〇 : あったな。まじでやめて欲しかったわ
男2 : まぁあの仲の良さなら間違われるよな〜
そんな話はどうでも良いと思いつつ
突然やってきた久しぶりの担任に
場は大盛り上がりし皆んなの口には
どんどんお酒が入っていった
一次会が終わり二次会に行く話で
盛り上がっているなか
女2 : あれ蓮加帰っちゃうの?
と訊いてくる子に対し
蓮 : ちょっと用事があってね、今日は楽しかったよ
と、一言だけ伝えて
すぐにその場を去った
二次会に行く話が
盛り上がる中
男1 : おーい〇〇〜お前行くか〜?
〇 : いや〜ちょっと酒が入りすぎちゃってよ
なんてジンジャーエールで温めて
赤くなった頬で簡単に嘘をつく
〇 : 酔いが浅いうちに帰ろっかなって
男1 : まぁそれならしょうがないな
いつもおちゃらけてるやつでも
年は20を迎えるんだから
それぐらいのことは理解してくれる
二次会に行くやつとは逆に
駅まで足早に歩く
駅の柱で待つ一人の女性を見つけ
少し遠くから声を掛ける
〇 : ごめん少し遅くなった
蓮 : 全然、意外と早く来れたじゃん
周りには誰一人として
言っていなかったが
俺たちは付き合っていた
高校三年のあの日
蓮加に噂の話をして
めっちゃ笑われたあの日
無言が続き気まずくなって
帰ろうとしたその瞬間
蓮 : ねぇねぇ?
〇 : ...なんだ
蓮加が口を開いた
蓮 : 噂じゃなくてさ、ほんとにしちゃわない?
そんな一言で本当に付き合うことになった
意外にも今日まで続いており
2年と半年になる
蓮 : さっとりあえず行くよ
〇 : はいはい
日が沈み暗くなり始める時間帯
蓮加に手を引かれて歩き出す
蓮加の家の近くのスーパーに寄って
お酒やらなんやらをたくさん買い
蓮加の家に行き
二人きりの二次会が始まった
蓮 : うわぁ〜!
机に並べられた
色んな種類のお酒たち
蓮加は目を輝かせて
一つ一つ眺めている
〇 : さてと、じゃあ飲みますか
蓮 : あれ意外と乗り気じゃん
お酒を飲むのは好きだけど
あまり飲むことができない〇〇が
飲むぞといわんばかりに
やる気に満ち溢れた顔をしている
〇 : ほんとは飲みたかったのに蓮加に合わせて飲まないようにしたんだから感謝してよね
蓮 : はいはいありがとありがと
別に私は飲んで良いよと言ったのに
それに対して〇〇は
〇 : 蓮加の初酒と一緒に飲みたいから
とか言って
同窓会では飲まないと決めていた
今日の日のために買った
二人だけのグラスに
〇〇が蓮加のグラスに
お酒を注ぐ
蓮加の初酒のために
わざわざ買ったビデオカメラ
蓮 : また無駄な買い物して〜
〇 : まぁまぁ、これから思い出作りにも使えるしさ
時計の針が0に重なり
なんて誤魔化す君と乾杯をして
グビっと喉を通す
一つのソファに座る蓮加に
膝枕されて寝ている〇〇
〇 : zzz
蓮 : まったく...弱いのにたくさん飲むから
多分〇〇は私を楽しませるために
ここまでしてくれたんだと思う
お酒を飲まずジンジャーエールだったのも
この日のためにビデオカメラを買ったのも
たくさんお酒を買ってくれたのも
〇〇の優しさが
心から溢れ出たんだろうな
自分の足で寝る〇〇の
頭をゆっくり撫で続ける
蓮 : (...あーなんか顔が熱くなってきたかも)
熱くなってきた顔を
手の甲で挟むように確かめる
いやわたしは
〇〇の人柄に
"また"惚れちゃったのかも
fin
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