最も恐ろしかった悪夢
このnoteを悪夢の記録として利用しようと思ったが、最近全く悪夢を見ないし見てもすぐ忘れてしまう。
自分の脳をある1種のコンテンツみたいに面白がったのが良くなかったのか。
つまらないのでこれまでの人生のなかで最も恐ろしかった夢の話を書くことにした。
高校に入学して少し経った頃、中学校の卒業式の夢を見た。謎の県議会議員の長い話や校長の長い話、同期の誰かのお母さんの長い話などを聞き、歌を歌い教室に帰ってきた。後輩たちは、悲しいようにも疲れたようにも見える顔をして全員帰っていった。
しかし、我が母校の卒業式には裏番組なるものが存在した。
「1クラス30人のうち2人」
黒板の餞の言葉を消して再び書かれたそれが最初何の割合なのか私も分からなかったし、クラスの全員が分からなかった。
担任が「これはうちを卒業し将来的に社会に出ていったときに、引きこもりになってしまったり、犯罪を起こしてしまったりした人の割合だ」と言った。
どうやら過去50年ほどの生徒のその後を追跡し 得たデータだという。
「このままその2人を生き延びさせ、社会にのさばらせるのは、その生徒ら自身にも周囲にも負担がかかる」
「だから今から、このクラスで2名選んで校舎の屋上から突き落とす」「これは例年行われてきたことだ」と担任は続けた。
今まで在校生として卒業式後はすぐ帰らされていたために、私たちはみなこの事実を知り得なかった。それにも関わらず、クラスには特にどよめきの1つも起きなかった。みんなそれが当然で来るべき時が来たというような顔をしていた。
その状況に恐ろしさを感じつつも、自分も当たり前のような顔をした。そしてひっそりとこのクラスだったらあの子とあの子かな、とか私が選ばれないといいなとか汚いことを考えていた。
担任の説明が終わり、投票の時が来て、クラス全員が小さな紙に名前を2つ書いて箱に入れていく。結果突き落とされるのは私が目論んでいたその子とその子になった。
その2人は、泣くわけでも反抗する訳でもなく、ただ屋上から飛ぶ時を待っているように見えた。私は、自分が選ばれなくてよかったとまた汚いことばかり考えていた。
ついにその時が来た。1グループ14人の計2グループに分かれて、選ばれなかった全員が選ばれた2人の背中に手を置く。他のクラスもそのような感じで、選ばれた人が屋上に横一列に並ぶ。選ばれた1人に対して14人が集まるのだから、みんな片手の人差し指とかでその背中に触れていた。
やはり全員が当たり前のような顔をしていたが、人差し指という小さな部分を用いて人を殺すことで、それぞれ少しでも罪悪感を減らそうとしているのかしらと私は呑気に考えていた。
その後すぐに、ものすごい轟音と何かが潰れる音がして、ベージュの校庭が赤に染まった。全てが終わってもなお、みんな当然という顔をしていた。
中学校までだいたい1番だった自分が高いプライドを抱いたまま、高校という新しい環境で劣等感を強く感じて見た夢だった気がするし、何でもいいから何かを見下したかったのだと今は思う。今だってうっすら誰かを馬鹿にしているし、それが暗い活力をくれていることも理解している。この夢は、いわゆるこっそり下に見る存在が自身の精神安定につながるということを高校に入って認識したきっかけだった。
これが今までで1番恐ろしかった夢です。もっと恐ろしい夢を見てみたいとも、1番が更新されないといいなとも思います。