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2024年度気管支鏡専門医試験を終えて

 2024年度気管支鏡専門医試験を受験した皆様、お疲れ様でした。
いやー難しかったですね。自信を持って解けたのは体感5-6割もいかないくらいでしょうか。試験の内容や感想、来年度受験する方へのアドバイスなど書いていこうと思います。まだ合格しているかもわかりませんが(笑)。あくまで個人の感想・勉強内容なのでご容赦いただければ幸いです。


気管支鏡専門医試験について

 試験は2024年10月19日に東京で行われました。例年は8月末で、今年ももともとは8月31日の予定でしたが、台風の影響で延期となりました。その影響もあってか、座席の名簿は159名受験となっていましたが、ちらほら空席が目立っており実際に受験したのは140-150名程度と思われます。
 当日は13:00から受付開始、13:30から試験スタートで試験時間は2時間です。試験の問題数は昨年に突然80問→100問と増えていましたが、今年も昨年と同様に一般問題60問、画像問題40問で計100問の構成でした。勉強した分差がつくので、問題数が多くなったことは良いことだと思います。ただそれなりに勉強していきましたが、問題を一通り解いた段階で1時間半ほど経過しており、見直しの時間はほとんどなかったです。来年度受験される方はペース配分も注意してください。
 選択肢は5つで、正しいものを選べ、誤りを選べ、という出題形式です。特にこの試験を難しくしている要因として挙がるのが、正解をすべて選べの選択肢があることです。しっかり数えたわけではありませんが、3割くらいは正解選択肢をすべて選べの問題だったと思います。1問だけ5つすべて選択肢が正解だった(自分が間違えているかもしれません)問題があり、めっちゃ不安になりました。
 気管支鏡テキストの内容を概ね覚えて、枝読みや解剖の問題を落とさず、気管支鏡所見で診断させる問題に食らいつければ合格はできると思いますが、問題はテキストから逸脱した問題やテキストだけでは対応できないものもチラホラありました。ウェステルマン肺吸虫症と診断させ治療薬を選ぶ問題、画像で再発性多発軟骨炎と診断させ特徴を選ぶ問題などはテキストには記載がない問題でした。一般問題はそうでもなかったですが、画像問題でわからない問題が2-3問続いたときは正直焦りましたね。中葉支の解剖学的特徴など、一般問題でも画像問題でも問われて重複している問題もいくつかありました。
 試験はとても難しく感じましたが、これまで受験した先輩に伺うと、だいたい同じような手応えで合格しているので、合格していると信じています。というかこれで落ちていたら、なかなかこれ以上勉強の仕様がないので絶望です。

2024年度の専門医試験振り返り

試験の内容や振り返りは、
オープンチャット「2024年度気管支鏡専門医試験振り返り」

こちらのオープンチャットで行っています。来年度以降受験する方はもちろん、過去に受験した方も大歓迎です。匿名ですし、試験対策に間違いなく役立つと思いますので、是非覗いてみてください。

よく問われる内容

以下によく出題されている(と私が個人的に思っている)内容を書いていきます。

・内視鏡的層別用語と正常気管支所見
縦走襞や輪状襞がどの層でみられるか、またそれが異常(不明瞭化や圧縮強調など)だと何を意味するか、気管支鏡所見から診断させる問題も出ます
・気管支鏡の消毒液の特徴
グルタラール、フタラール、過酢酸、アルコールが何に有効で何に無効か
・EBUS-TBNAでみえる血管
・気管支とリンパ節、動静脈の解剖学的位置(気管支鏡画像上で)
・枝読み
4-5問でます、亜区域支まで必須です
気管支鏡画像でa,bまで選ばせる問題、CTの気管支を選ばせる問題など
・悪性腫瘍の気管支鏡所見(腺癌:尖形狭窄、縦走襞の圧縮強調など)
・硬性鏡の適応
・小児の気管支鏡検査について
・リドカインの極量や副作用
・抗血栓薬の休止期間
鬼問です。毎年問われる薬剤が変わっており、テキスト該当ページの薬剤すべて覚えてないと解けない可能性があります。代表的な薬剤ならまだしも、マイナーな薬まで聞かれるのがきついです。
・気管支鏡検査後の合併症、特に発熱・気胸・出血の頻度や対応など
・ミダゾラムに影響を与える薬剤
・内視鏡的早期肺癌の診断基準
・ホルマリンの固定時間
・BALFのCD4/8比
・対極板が必要な処置、高酸素でも大丈夫な処置はどれか
・AFBについて
・APCについて
・光線力学療法PDTの特徴(664nmの赤色レーザー、40mg/m2、100J/cm2、120mW 数字のひっかけ問題がでていました)
・ステントの適応疾患やステントの使い分け(良性疾患にも適応あるかなど)
・EWSの適応
・TNM分類(今回は第8版、横隔神経や反回神経)
・各疾患についてはテキストで確認してください、今年は肺胞蛋白症は出ていなかった気がしますが、満遍なく出ている印象です。
気管支鏡所見で気管支結核と診断し、気管・気管支軟化症をきたすの選択肢を選ばせるなどの複合問題もありました。
内臓逆位の問題がでていて、過去には内臓逆位のある人の枝読みもでていたようです。

 画像問題については枝読みや解剖の問題で6-10問程度、気管支鏡の画像で診断させる問題が10-15問程度、その他臨床問題・CT所見などの複合問題、といった感じでしょうか。まずは枝読みや解剖をしっかり抑えることが重要だと思います。ここを落とすと合格が厳しくなりそうです。
 気管支鏡画像1発問題はある程度特徴はありますが(赤色点→乳頭腫や扁平上皮癌、尖形狭窄→腺癌など)、特に気管・気管支の良性・悪性腫瘍の鑑別はかなり難しかったです。乳頭腫、顆粒細胞腫、過誤腫、多形腺腫、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、カルチノイド、平滑筋種、転移性気管腫瘍など、いろいろ出ていたと思います(画像も特徴も)。
 術後の気管支鏡所見はどれか、やステント留置後の胸部X線写真が提示されステントはどれか、などの問題もありました。今年は手術方式を選ばせる問題は出ていなかった気がします。
 テキストの画像からそのまま出ているものはなかったと思うので、テキスト以外の画像やそらさじさんのnoteを参考に雰囲気を掴むのもお勧めします。

アドバイス

 気管支鏡テキストの購入と熟読は必須と考えます。私はだいたい試験の3ヶ月くらい前から勉強を開始して、直前にはテキストに書いてある内容はひと通り覚えていきました。それでこの手応えなので、正直かなり難しい試験であることは間違いなく、また満点を取れる試験ではないのでひとまず絶対合格ラインである6割を超えることを目指すのがよさそうです。前述の頻出事項やオープンチャットでの振り返り問題を中心に、テキストと合わせて覚えていく方法がよいのではないでしょうか。気管支鏡テキスト以外ももちろん使用して良いと思いますが(特に画像問題は)、コスパ的にはテキストをしっかり理解すれば合格はできると思います。難しい問題やテキストに載っていない内容は大部分の人が解けないので、無視で良いと考えます。国家試験と同じで周りが解ける問題を落とさないことが重要な気がします。

 一応私が試験勉強としてメモしていた内容もnoteに挙げておきます。

これくらいの内容が頭に入っていれば大丈夫だと信じたいところです。誤りがあるかもしれない点はご注意ください。

合格発表について

 合格発表は例年12月ですが、今年は延期の影響でどうなるでしょうか。気になる合格のボーダーラインですが、毎年一般問題、画像問題ともに最高得点の60%以上を合格とする、とあります。ですのでどちらも6割取れていれば文句なしの合格であり、基本的には6割以上の得点を目指す方針がよいと思います。ただ公表されている去年の点数をみると最高得点は一般問題で55/60問、画像問題で34/40問でしたので、その60%である一般問題33/60問、画像問題21/40問あたりがボーダーラインかなと思っています。もちろん満点の人がいると話は変わってきますが、5割ちょっとでも合格の可能性は残っています。

 今回は延期になったこともあり、私と同様一回集中の糸が切れてしまった方も多いのではないでしょうか。試験も会場の関係で年明けかな?と思っていましたが、10月と思ったより早く開催され正直驚きました。まあまだ知識が完全に消えていなかったことは良かったかもしれません。ただし呼吸器専門医試験やがん治療認定医試験と同時期の開催となったため、地獄のような試験期間を送っていた方も中にはいるかもしれません。本当にお疲れ様でした。

以上簡単ではありますがまとめてみました。少しでも試験勉強の参考になれば幸いです。

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