ラブタイツ炎上事件に関するネット記事の問題点(魚拓まとめ篇)
はじめに
約2年経った今でも、時々話題にのぼるラブタイツ炎上事件。
当時の公式ツイートは削除されているので、ネットで情報を探るしかないが、この件に関するネット記事には信頼できるものが少ない。
例えば上のまとめ記事は、ラブタイツイラストの大半を収集していることから、多くの方に参照されているが、私は、その文章内容は信用できないと思う。気づいた問題点を二つばかりあげておく。
1年前のインタビューを引用していること
「タイツの日のラブタイツで炎上して~」と言いながら、なぜか冒頭でその1年前、2019年11月2日のニコニコニュース記事を引用している。
このニュース記事に於いて、
アツギはインタビューを受けた側であって、
アツギが実施したラブタイツキャンペーンと直接の関係はない。
では、なぜ1年も前のニュース記事を唐突に引用したのか。
まとめ作者はこう言っている。
このATSUGI公式Twitterアカウントは、ATSUGI社の女性社員が運用している
…特にどういう感性の持ち主なのかというのが記事冒頭でのイラストレーター「よむ」との対談形式によって判明しているので
この「記事冒頭」とは、その年に放映されたアニメ『みるタイツ』(原作よむ氏)に触れた部分である。
インタビュワーが自作を話の枕にするという、よくある流れだが、それだけで取材対象先の「感性」が「判明」するものだろうか。
このまとめ作者は、『みるタイツ』のフェティッシュなイメージが、そのままアツギ担当者の「感性」を表しているとでも言いたいのだろうか。
そもそも、このインタビューの趣旨は、次のようなものだ。
ファッションであったり、防寒目的であったり、普段何気なくはかれているタイツがいかに作られているのか。糸一本の研究から紡がれるタイツ製造のあくなきこだわりをお届けしていこう。
さて、大分余談を挟んでしまったのですが、ここからは本題であるタイツの製造に関してお聞きしていければと思います。まず、タイツがどのように作られていくのか教えてください。
タイツの製造工程を、アツギ担当者が解説する。
この部分こそが、このインタビューの核心である。
実に専門的で真面目な話なのだ。フェチやエロの話ではない。
アツギ担当者の人柄も、その語り口から、自ずと伝わってくる。
自分の仕事に情熱を持ち、知的で誠実な人物であると、私には思われる。
このまとめ作者は、ラブタイツキャンペーンとは時期も内容も異なるニュース記事を恣意的に引用し、しかもフェティッシュな印象を与える冒頭部分を抜き出して、企画担当者に対する印象を誘導しているように思う。
広告をカットしイラストだけ切り抜いていること
このまとめ記事にはもう一つ、致命的な欠陥がある。
広告文言をすべて取り去っていることだ。
ラブタイツキャンペーンは、アツギ製品の企画広告である。
イラストに描かれているレッグウェアは、
すべて実際に販売されているアツギ製品であった。
製品の違いが判別できるよう、一点ずつ描き分けられていた。
アツギ公式ツイートでは、
商品名、パッケージ写真、商品詳細ページ、そしてイラストが、
ワンツイート内に収録されていた。
この内容は、どう見ても、
購買層のための広告企画である。
イラストファンのみに向けたものではない。ましてや、
男性向けのエロフェチなどであろうはずがない。
この大前提を知らずに、単なるイラストとして漫然と見たのでは、
作品のテーマを見誤る可能性が大きい。
ところが、このまとめ記事では、なぜか商品名その他の
商品情報一切をカットして、イラストのみを転載している。
これでは何という製品の広告かさえもわからない。
しかも『みるタイツ』の話題の後にすぐイラストを並べているから、
いっそうフェティッシュな作品と誤解されやすくなっている。
そのように思わせることこそ、まとめ作者の意図だったと思われる。
おそらく。故意かどうかまでは知らないが。
おわりに
繰り返しになるが、ラブタイツのイラストは、同社が販売するところの
実際の製品を、イラストレーターによる精密なイラストで表現し、
顧客に製品のイメージを伝えようとしたものである。
イラストのテーマは、人物でも背景でも脚でもなく、
レッグウェア製品そのものなのだ。
このまとめ記事の作者は、このようなラブタイツの企画趣旨を把握できていないのだろう。悪気はないのだろうが、結果的に、
企画担当者の人柄や、イラストのテーマについて、
読者に偏った印象付けをしている。
このまとめ記事のような恣意的な文章では、ラブタイツキャンペーンを「まとめ」たとは言えない。
だから文章を真に受けてはいけない。あくまで「イラスト魚拓」として参照するにとどめるべきである。
補足
ついでにもう一つだけ。
このまとめ記事のアイキャッチ画像が、ツイッターでよく引用されていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1665200655427-1t3dFfPj81.png?width=1200)
ツイッター上での議論に際して、このサムネイルを寄せ集めた画像を、
これが「ラブタイツ」だと思い込んで、議論をしている方々がいた。
これは大きな間違いだと思う。
・まず、当然ながら、この集成画像はアツギが作成したものではない。
・先に述べたように、商品情報がカットされている。
・画像が小さすぎて作家の表現意図が判読できない。
・細かいことだが、欠けている作品が4点ある。
私がお話した方の中にも、画像が小さいために、膝丈スカートをミニスカートと誤認し、下着の見えるいやらしい画像だと思い込み、立腹している方がいた。
この方に限らず、自分の勘違いと偏見から身勝手な怒りを募らせ、
担当者やイラストレーターに理不尽な言いがかりをつける人たちがいた。
ラブタイツ炎上事件そのものが、そういう問題なのだと思います。
(2022.10.12)ちょっとタイトル変更しました。