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ファッション感覚でNISAやってみた③
8月、日本株が下がった。ブラックマンデーに次ぐ下がり方とか言われたし、8月上旬はおどろおどろしい記事が多かった。3週間で20%以上下がったのだ。まぁまぁエグいのだ。
日本株の暴落があった8月上旬、ネットではNISA民に対する同情や蔑みに似た声が目についた。「NISA民涙目w」とか「安直に投資すな」とか言う話。某証券会社のコールセンターは今後の資産運用についての相談が後を絶たないと言う話も聞く。その報道に対して「お前ら投資向いてないわ」と言うインフルエンサーもいた。「このくらいでパニックになってたらこの先無理やで」と言うことだろうか。「NISA民は恐怖に陥って株を手放した」と言う話も多かった。
「投資=貯蓄」という考えや意見を至る所で聞く。ネット、銀行、証券会社、同僚との会話。推測するにこういう主張や言説はチャールズ・エリスが「敗者のゲーム」を著した時から広まったのだろうか。もしくはシーゲル教授が「株式投資」を書いた頃からかもしれない。
そういう一面もあるだろうが、この手垢まみれの考えを銀行や証券会社などがこねくり回してないか。こねくり回して変に煽ってはいないかとも思う。煽られて真に受けた結果、損をする人も間違いなく存在するのだ。
僕は人間関係が広い方ではない。それでも知り合いのうち5人、NISAをしていた人がいた。で、この8月に2人がリタイアした。2人はもちろん損をしたから辞めたのだ。
2人とも家庭を持っているし仕方ないわな…と思うのだが「何だかなぁ」とも思う。約2年前の誓いは何だったのか。
「金貯めて老後に備えようぜ」
「俺ら、余剰資金で老後も茶店でモーニングしばいてパチ○コ行こうぜ」
「パチ○コ打ったらボケ防止になるんだぜ?」
元同僚には失礼な話だが、職業柄「すぐ辞める奴の傾向」を考えてしまう。
NISAや投資をする人らは4つに分類できると勝手に思っている。勝手にカテゴライズしてみた。
①金はなく知識もない。それでも生活費や娯楽費を切り崩してNISAにぶち込む人
②金はないが知識はある。そして生活費や娯楽費を切り崩してNISAにぶち込む人
③金はあるが知識がない。そして生活費や娯楽費を切り崩さずNISAにぶち込む人
④金があり知識もある。その上で生活費や娯楽費を切り崩さずNISAにぶち込む人
この場合の「知識」とは何を言うのだろう。
よく聞く「短期間では損することもあるけど、何十年単位で見たら損することはない」って言う説がある。それこそシーゲル教授から始まり、今や銀行家や証券マンが営業をかける際に多用するフレーズだ。これを知っているかどうかが知識人かどうかを分けるのだろうか。
僕はそうは思っていない。
知識というのはつまり、金融や経済関連の知識だと思っている。例えば金利とは何か?とか、なぜ金利が下がったら債権価格は上がるのか?だとか、為替とは何か?とか、なぜ円安になれば日経225の株価が上がるのか?とか、こういったことをちゃんと説明できることだと思っている。それなりに決算書を読めることだとも思っている。
僕は①か②だ。本音では②だと思いたいが、経済学部をくぐってる人や証券のプロとか、それらの人に比べたら足元にも及ばない。主にはジュンク堂に通って本を買って得た知識だ。所詮は独学の域である。決算書を正確に読めているかと訊かれても自信がない。会計関連の知識も入門書程度のものと思っている。
そして僕の周りでNISAを辞めた人は恐らく①だった。
つまり8月、なぜ日本株が下がったのか理由がわからなかった。理由がわからなかったから、いつ下げ止まるのかまで見当がつかなかった(正確な日など誰にもわからないが、少なくとも向こう何ヶ月〜何年も続くかそうでないかくらいはわかる)。
だから早々にNISAを降りた。高い勉強代だったと思って。キャリートレードがどうとか金利がどうとか為替市場の傾向が変わるかもとか言われても「はぁ?」だったのだと思う。
昔、僕はパチスロをやっていた。その時の気持ちを思い出す。設定狙いをしていた頃だ。
パチスロには設定1〜6まであり、数値が高くなればなるほど勝ちやすい。機種にもよるが、設定1を1日打ち続けると2万円くらい損する。6は4−5万くらい勝てる。理論上は。もちろんこの数字は1日だけじゃなく、何年も打ち続けたと想定して弾き出されたものだ。だから設定6を1日打っても5万損したとか全然あるのだ。逆の場合もある。
で、いかに高設定を掴むか?という話になるのだが、判別方法は色々ある。高設定ほど特定の演出が出る確率が高いとか。高設定ほど特殊な当たり方をしやすいとか。
アメリカ株は最強だ。日本株も調子が良い。バブルの高値を超えた。20年〜30年単位で見たら損することなどない。歴史が証明している。だから積み立てを続けよう。下げても一時のことだ。
皆これを知っている。そう教えられてきた。友人や同僚、報道、銀行家たちから。
株は、パチスロで言えば高設定だ。資産を形成する手段として。
しかし、何を以て最強なのか。何が理由で調子が良いのか。
これをわかっていなければどうなるだろうか。よくわからないけど、積み立てた金額の1割が一晩で飛んだ。我慢(節約)の結晶が台無しになったけど理由がわからない。この状況で「でも長期的に見たらプラスだよ」っていう友人や銀行家からの説を信じて盲目的に積み立てられるだろうか。苦境に陥った人間って大体は疑心暗鬼に陥らないだろうか。悪いことに暴落が起こったときに限って報道もめちゃくちゃ不安を煽るのだ。「これはバブルだ」とか。そしてそう主張する根拠を提示しまくる。
例えるなら「これは高設定だ」っていう友人からの教えを信じて、なけなしの金で設定6を打っているようなものだ。高設定だって凹むときは凹む。サンドに入金するたびに疑念は膨らみ続ける。不安に耐えられずリタイヤしやすい。設定判別する素養や知識がなければ、高設定を示唆する演出に自ら気付けない。気付けないから不安になり、そのフラストレーションを友人に転嫁するのではないか。
最初の暴落が起こった4日後、僕は人生で初めて日本株を買った。アパレル関連の企業を2社。どちらも小型株。どちらも円高の恩恵を受けるかなぁ…と思った。「来年以降の決算が楽しみやなぁw」と思ったが…買った直後に日銀の副総裁が鳩的な発言をされた。すると株価が上昇した。思ってないところで株価が15%くらい上がったのだ。副総裁のたった一言でここまで反応するのかと驚いた。
その後徐々に下がって、また損失分を補填したと思ったら下がって、ということを繰り返している。
当面売るつもりはない。
…でも冬物のコートが欲しい。