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ものすごい本を読んでしまった。〜ハンガンの『少年が来る』
1980 年5月18 日、韓国全羅南道の光州を中心として起きた民主化抗争、光州事件。重く、暗く、痛く、悲しい、命の尊厳の話。1980年に起こった光州事件をテーマに、6人の語り部が登場する。始めはぼんやりとしていた事件の輪郭が、次第にくっきりとしていく。
「あんなにたくさんの人が死んだのに、信じられない」と現代に生きる作者は感じる。今も全貌が明らかになっていない悲惨な事件を、たくさんの失われた魂を、作家が傷つきながら引き受け、研ぎ澄まされた言葉によって、読者の心の奥深くに突き刺していく。こうした歴史的事件を引き受けて文学として昇華させる作家が自国にいる韓国を、本当にうらやましく思った。もちろん、韓国の苦労を重ねてきた歴史があって文学が生まれているという日本とは全く違う土壌があるので、うらやましいと軽率に言ってはいけないのではあるが…。
また、こうした作家がきちんと評価される世の中で本当に良かったと思う。文学にはまだまだ力がある。世界を暴力から踏みとどまらせることができると確信。(ノーベル財団Good job👍)
エピローグの終盤、本の最後の5ページ目で、突然涙が止まらなくなった。今まで涙をこらえていたこと、読むことで心が傷ついていることも忘れるほど、ハンガンの書く言葉を一つも逃すまいと集中し、すべてを受け取ろうとした読書体験だった。
(2024.10.13)