アメリカミシガン州 KyokofromTokyo#5 ホームスクーリングとマウントプレザントへお買物
犬のごちそう
リニーのバースデーパーティの翌朝、料理の残りはすっかり犬たちのご飯になっていた。
「パーティの後はいつもこれ、NOTエコ、よくないわよね、、」
「しかたないよ、パーティだったんだし、、」
黒土の畑に積まれたごちそうにありつく3匹のボクサー犬を眺めながら、リニーと立ち話。
ホームスクーリング
ところで、リニーは子供たちにを学校へ通わせる予定はないらしい。
「どうして?」
「今の学校教育は良くない。自分の子供時代の学校生活でいい思い出はない」というようなことを言う。
「え、じゃ教育はどうするの?」
「Home Schooling、ホームスクーリングよ」
こちらではよくあるらしく、無料のボランティアで教えてくれるらしい。びっくりした。
リニーは、学校教育を全く信じていない様子だった。
「じゃ、将来、子供達が大学へ行きたいって言ったらどうするの?」
「その時は、子供達の気持ちを尊重するわよ」
なるほど、そのあたりの「義務教育」なんたらや社会の柔軟さは日本よりだいぶ一般的かもしれないな。
今思えば、
この時2016年にリニーが言っていたこと、アメリカの内情が少しわかる気がした。カントリーサイドの農家の人達の生活環境、本来の古き良きアメリカと反対の方向へ、リベラルに傾きすぎた政治と教育にも疑問を抱いていたのだろう。2016年大統領選挙(トランプ政権誕生)の直前だったし、少しリニーが感情的に見えたのは無理もなかったかもしれない。今となっては、日本も同じようにリベラルを輸入過多してしまってもはや不調和な状況だし、、
後日談では、レーガンもマーティンも、結局小学校へは行ったらしい。2人ともサッカークラブに入って楽しんでいたそうだ。
特にすることもなく、彼らと同じように田舎の生活に浸った日々を送っていると、写真を撮ろう!という気もあまり起きなくて、ただ外を散歩したりする。ときどき犬のマギ―がくっついてくる。
森をうろうろ、山道を入ったり、道がないところへ入って行ってみたり。
畜舎
家畜用の新築の納屋を見に行くと、藁が山積みになっていた。見事な梁。リニーのおじさんが大工さんとのことで、建ててもらったそうだ。これはすごい技術だ。小屋Barnもおじさんに建ててもらったって。
リニーはここで畜産を始める予定なのだ。
「一緒に仕事はしたけど。お金を払って、建ててもらってるのよ」
大工職はこの辺りでは年収1000万円くらいになるらしい。
巨大な冷蔵庫
「Miceli Trucking」ブルーのロゴが入ったリニーの白いトレーラーが2台、空き地に停めてある。全長7mくらいある。ずっとモーター音が鳴っている。「トレーラーのコンテナに何が入ってるの?」
「大量に肉を買っておいて冷蔵してるのよ」ほあー、ダイナミックだなー
リニーはトレーラー(トラック)ドライバーなのだ。自営もしている。過去、アメリカ大陸ほぼ全域を仕事で運転したそうだ。
ダイナミックといえば、Barnの中の巨大な棚に、大量のおむつが買いだめしてある。ジョンとリニーのスーツケースもなぜか巨大に見える。
Sam's Club
「買い物に行こう!」とジョン。
「いつもとちがうスーパーマーケットだぞ」
午前中の少しどんよりした曇り空の中、マウントプレザントの街までドライブ。
広い車道に、ミシガン大学やスーパーマーケット、レストランやショップが並ぶ。交通量が多くて少し渋滞しても、林や森が多くて静かな街。
スーパーマーケット Sam's Clubに到着、地平線が見えそうなだだっぴろい駐車場は隣接するウォルマートと共有している。
ジョンが Sam's Club の隣にあるウォルマートを指して
「こっちじゃないぞ!」と言いながら、Sam'sClubへ入っていく。
「でかいからkyoko驚くぞ!」なぜかジョンが嬉しそうだ。確かにでかい。広くて、ただただ倉庫である。
野菜や、いちごも山積みになっていた。大きなイチゴ。
「Kyoko,イチゴ1パック選んで」とリニー
ここに来る前に、寿司や天ぷら以外のおいしい日本食のおかずを聞かれて、私が好きな生姜焼き(ジンジャーポーク)の話をしたら、それは美味しそうとリニーが言っていたので、Barnで私が作る予定にしていた。
生姜焼き用の薄切り肉や豚小間肉を探したが、そんなやわな小さく切った肉は売ってなかった。ミンチか分厚いポークかどちらかである。むむむダイナミックだな、仕方ない、ステーキ用の一番小ぶりの5枚入りパックをカートへ。
バースデーケーキコーナーもあった。リニーのバースデーパーティの時のカーマイン生クリームチョコレートケーキもあった。他にもカラフルなケーキがたくさん。四角いケーキが多いんだな、こっちは。
私は日本へお土産のアメリカンなお菓子ばかり探していた。天井までそびえる棚に段ボール箱のまま、大量にクッキーやらチョコレートやらが収まっている。
どうせならザ・アメリカンなものがいいなと、そればかりだった。リニーが「CHEEZ-IT チーズイット」が美味しいと教えてくれる。
「これは美味しいよ」のちにハマることになる。
これが日本から通販で買うと値段が3,000円と異常に高い。(当時は5,000円くらい)
買い出しが終わって、出発前に駐車場で子供たちが遊ぶ。
駐車場の緑地帯にたんぽぽやクローバーが咲いている。花輪を作って遊ぶレーガンとマーティン、ローラとジョンに、私にも花輪を作ってくれた。
平日だからかとても空いている、でもリニーに言わせると、ミシガンで道路が空いているのは、平日も週末も関係ないみたいだった。
マウントプレザントのドライブ
Sam's Club の帰り道は晴れてきて、気持ちよかった。左にミシガン大学を見て、住宅地内に入って、くるりとUターンして、QDOBA Mexican Eats メキシカンレストランでランチに入る。 自分で注文しようと思っていたら、その間もなく、ジョンにメニューを告げたらさっさと買ってくれてしまった。広い駐車場のダイナー、周辺の若葉と青空を眺めながら、タコスチップスサラダをつまむ。
タコスを食べればおなかいっぱい、やはりなぜか日本にいる時のように三食いらないのだ。
帰り道は新緑の森を左右に見てとても気持ちいい、上下に交差したハイウェイを通ったりして、信号もない道路を気持ちよく飛ばして、帰宅、おつかれさま。
車からSam's Clubで買ったガーデニング用の土の袋をぐいっと持ち上げて運ぶリニー、すごい力持ち、私は持ち上げることさえできない。いくつものビニール買い物袋をキッチンへ運んで、まったり。
こういう時の「おつかれさま」的な便利な挨拶はこちらにはない。「ただいま」の挨拶も特に習慣がないので、リニーもジョンも無言だった。
リニーの兄ダニーは「Oh, boy」(やれやれ)と言っていたけど。
便利な挨拶「おつかれさま」の日本語は発音が難しくて、説明してみたけど、結局リニーは「??」だった。
テレビは見ない
リニーたちは家でテレビを見ない。大きいスクリーンはあったが、映画を鑑賞するでもなく、たまに子供のDVDを観るくらいのようだ。
リニーはスマホ、ジョンはiPadで情報収集をしていた。パソコンは持っていないようだった。
トトロとラピュタ
"FROZEN"(アナと雪の女王)が日本でも大ヒット、好きだと言ったらDVDをかけてくれた。今思えば子供っぽく思われていたかもね。
リニーは日本のアニメにも興味はなく、宮崎駿は聞いたことがある程度という。JAPANIMATION(ジャパンアニメーション)とこちらでは言うらしい。
「ジャパニメーションなら、弟のマークが詳しいわよ」
私は子供たちに宮崎駿アニメーションを見てもらいたいな、と帰国後「天空の城ラピュタ」と「となりのトトロ」の英語版DVDを送ったのだった。
トトロはマーティンもレーガンも歌に合わせて踊って楽しんで観ていたらしいが、ラピュタについては、古いロボットが敵のミサイルで死んでしまう場面で、レーガンが「そんなのだめ!やだ!」と泣き叫んで泣き止まなくて困っちゃったわ、とリニーからの手紙に書いてあった。さすがは感情豊かなレーガン!
リニーは「お箸がほしい」と。あ、なるほど。OK。ジョンとリニー、子供たちには子供用のお箸にマーティンとレーガンと名入れを注文して帰国後お礼に送った。
のちに、家族でお寿司を食べた時に、送った名入れのお箸を子供たちが使ってる写真を送ってくれた。
やることない
田舎だとやはり時間はゆったりしていて、私などほんとにやることがない、ダイニングに座って子供たちが遊ぶのを眺めていたり、冷蔵庫にあるものをなんでも好きに食べていいからね、と言っていたリニー。こちらの食事はまさにそんな感じだった。そろって食べるというより、それぞれにおなかがすいたら何かつまむ感じで、そもそもあまり食事をするという感じはなかった。
スイスチーズがおいしくてつまんで、ハムもうまいのでつまんで、ブルーベリーをつまんで(日本より安くて、たくさん買えて羨ましい)ジョンが入れてくれるコーヒーを飲んで、不思議とごはんとみそ汁が欲しいとは思わないのであった。コロラド州のダニーの家へ行った時もそうだった。気候風土が食べ物を決めるのだなあとつくづく思う。
まったりした夕方、部屋の中が見えれば、節電して発電機の電気はつけないから、薄暗い夕方のBarn。ソファに座ってくつろいでいるジョンに、両親や家族の話を聞いてみたりした。ジョンはコロラド州デンバー育ち、リニーの親戚が集まる遠いミシガン州まで、よくぞはるばる移住して来たなーと思った。
気晴らしに、思い立ったジョンはパパ大好きなレーガンとふざけて大はしゃぎ、そしてどっかに頭ぶつけて泣き叫ぶレーガン、ごめんと謝るパパ、なんてのを眺めてるしかない。