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アメリカミシガン州 KyokofromTokyo#10 2016年のアメリカ大統領選を聞く!

リニーの家を出発

今日は、ステイさせてもらっていたリニーの家に別れを告げて、デトロイト美術館へ行くべく、デトロイトへ移動する。
朝からパッキングに四苦八苦。明らかに買いすぎたお土産のお菓子がスーツケースに入りきらない。履き古したスニーカーを捨てさせてもらって、どうにも入りきらないお菓子をリニーに渡して「子供たちにあげてね!」

「Kyoko! まだ準備してるのか?」
とジョンがベッドまでのぞきに来た。
「もうちょっとまって~」デトロイトまでリニーの家から車で4時間掛かる。美術館へ行くなら急がなくっちゃ。
子供達レーガンとマーティンを途中で保育所へ預けるから、彼らも一緒に乗っていく。
ジョンはお留守番。外で本宅建設の材木を運んだり、木の皮を剥いだり、クレーンなどの重機を使った作業をするときには、親戚に子守を頼むそうだ。子供たちを見てもらわないと落ち着いて作業ができない。でも今日は親戚の人たちの予定がつかなかったから、保育所に預けることにしたそうだ。

ジョンとはここでお別れ。ばたばた荷物を車に積んでもらって、「ほら、ハグだ」ジョンとしっかりハグして、ありがとう!♡

リニーがいつものジーンズのアクティブな装いに真っ赤なリップをしてドライバー席に。普段メイクしなくても美人でカッコいいリニー、お出かけの時はお化粧するんだ~ かわいい。

ペッパースプレー

相変わらず人も車もいない、広い林や農場の続く道を車で走る。交差点も広い。目印にするものが何もない。目立つような大きな木とかもないし、どこを走ってもずっと同じような風景。これ、道迷わないのかなー。

「ところで、黒人さん Black people はこのあたりに住んでるの?」
「いないわね、でも1、2回見かけたことはあるわよ」

「デトロイトへ普段行くことはあるの?」
「普段はデトロイトへは行かないわ。避けている。どうしても用事があるときだけ。その時はジョンはGun銃を車に積んでいくよ。私はペッパースプレーを車に携帯してるわ」
「ペッパースプレーを実際に使ったことあるの?」
「あるわよ。車内にいたときに外からいちゃもんつけられて、窓の隙間から外にスプレーして逃げたわ」

デトロイトは治安が悪化して危険だとは聞くけれど、リアルだなあ。

2016年アメリカ大統領選挙 だれに投票するの?

今は2016年5月。秋には大統領選挙がある。
民主党からはヒラリー・クリントン、共和党からはドナルド・トランプが立候補していて「次期大統領選挙は、オバマ政権から「まさか」トランプ政権に?」という世論が一般的だった日本。トランプさんの奇抜さだけがテレビで放映されている日本、現地のアメリカ人が実際にどう思っているか、好奇心がわく。
「リニーはトランプとヒラリー、どっちに投票するの?」
「トランプは好きではないけど、彼(共和党)しか選択肢がないわ」とリニー。
とてもびっくりした。そうなんだ!日本のメディアでは、「アメリカは次期大統領候補にトランプさんというニューヨークのビジネスマンが出てきて、大旋風、彼の奥さんは元モデルさん」といった表面的で週刊誌的な情報の報道が多かったし、「まあ、普通は民主党(ヒラリー)じゃない?」的な雰囲気だったから。

「現政権のオバマは嫌い。それに大統領には白人しかなれないのよ」(注意:その時のリニーの発言のまま)
「じゃ、彼はどうして大統領になれたの?」
「黒人層を政治の味方につけるための国の政策よ」
そういえば、リニーの兄ダニーも同じことを言っていた。現オバマ政権は嫌いだと。それを聞いたのは、オバマ政権2期目の2013年秋、コロラドからグランドキャニオンへ向かったとき、予告なしの国立公園の閉鎖に出くわした時だった。ダニーによると「彼は国立公園を閉鎖して人件費を削減することで経費削減を突然行ったりするんだ」ということだった。

私がニューヨークへ行ってワクワクして楽しかった話をして「行ったことある?」と聞くと、
「ニューヨーク?ドライバーの仕事で行ったことあるけど、嫌いだわ」
と、なかなかに冷たい反応。リニーはトラックドライバーでアメリカ全土を仕事で回っていた。ウォール街的な、金や権力の匂いのするような場所は好きじゃない、という感じだった。

リニーのセリフだけ聞くと、ずいぶん偏った考えのようにも思えるが、私はニューヨークのアートシーンと街を楽しんだ観光客視点の感想であって、アメリカのカントリーサイドに住んでいる白人アメリカ人にしか分からない事情があることはなんとなく理解する。

こちらにくると、とにかくいろいろな人の考えに遭遇する。日本人が日本で得たイメージでこっちに来ても、実際に話を聞くと全く違っていたりする。
もはや「正しいこと」なんてないんじゃないかとも思う。「間違ったこと」なんてのもないのかもしれない。フラットでいたいと思った。
たぶん、考えが違うからと毛嫌いしていたら、キリがないだろうな。

ジョンの演説

昨晩、リニーの家最後の夜、ジョンとリニーと3人で外のベンチに座ってコーヒーを飲みながら、ジョンにも大統領選挙のことをどう思っているか、聞いてみたのだった。
ジョンは自分の思いを話してくれて、長い熱弁だったが、残念ながら政治関連の内容の英語を私は聞き取ることができなかった。
英語を懸命に聞き取ろうとジョンを凝視する姿を見て「そんなに難しく早く話してもKyokoは分からないわよ」とリニーが諭してくれた。笑 ただ、ジョンにすごく熱い主張があることは見てとれた。

まず、過去の共和党「レーガン大統領」の苗字をそのまま長女の名前に「レーガン」とつけてしまうくらいだから、それはそれは思い入れが強いことだろう。レーガン大統領は80年代当時、日本でも人気があったと聞く。

たまたま私は友人の意見を聞いただけだけれど、
2016年の大統領選挙直前にアメリカ人の話を生で聞けたことは感慨深かった。2024年の今、彼らが言っていたことはとてもわかるような気がする。
もはや民主党政治は昔の良きリベラルではなくなってしまったというし、金と権力の政治がアメリカを乗っ取り始めてしまったような、リベラルに傾きすぎてしまって、カントリーサイドに住んでいる彼らにとって、市民による市民のための古き良きアメリカに再建をトランプさんに期待するのは当然のことかもしれない、と思った。彼らはオバマ政権(2009-2017)の時からずっとそう思っていたということだ。

日本ではアメリカのリベラル系メインメディアの日本語訳をテレビや新聞で流されるだけだと聞くし、またはハリウッド風にエキサイティングに脚色や湾曲されたニュースとして情報と映像を見るだけ、日本人の我々は、何かに乗せられて踊らされてしまうように、情報を捉えているのかもしれないのだった。

保育所へ立ち寄る

森や林や農地が広がるほとんど変わらない景色を、1時間ほど走った頃、ちいさな町が見えてきた。学校やお店があるけど、とても静かな町。
保育所に到着。すっかり寝ていた子供たちを起こして、保育所へ入る。
「さあ、Kyokoとバイバイよ」
よろよろ車を降りて、ただただ眠そうなレーガンとマーティンとそれぞれハグしてお別れ。
私も保育所に入れさせてもらって、入口で待つ。遊具とデコレーションがいっぱいの部屋が入口の受付と小さな柵で仕切られていた。
子供達をスタッフの女性にお願いして、さあここからいよいよデトロイトの街へ向けて出発だ。



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