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エフェクチュエーション往復書簡 タニモクとNTP


 しづのさん
 
 しづのさんのお手紙、興味深く拝読しました。
 たにせんさんとの出会い、まるで小説を読んでいるようでした。一歩行動することで、予想もできないことが本当に起こるんだと驚きました。まさに事実は小説より奇なり、ですね。
 一つ感じたのは、しづのさんがただなんとなく流されていたから、カフェでの垣内さんとたにせんさんのセミナーにつながったわけではなない、ということです。猫のエッセイを書くということで、しづのさんが自分にできることで貢献したからこそ、セミナーに繋がったのだと思います。
 たにせんさんによると、エフェで最も重要な原則は、「飛行機のパイロット」だそうです。しづのさんが、自分がやれること、コントロール可能な範囲に集中し、パイロットとして行動したからこそ、最終的にカフェでの豪華なセミナーにつながったのだと思います。しみじみ。

 一方で、自分とたにせんさんとの出会いは、劇的なものは特にない、普通のネット上の出会いです。たにせんさんと出会ったのは、とあるフェイスブックグループでしたが、そこになんだかスゴイ人がいる、と思ったのを今でも覚えています。
 間違って参加したクラブハウスのイベントで発言をして、その後、なぜかそのクラブハウスのイベントにゲストとして参加することになったとか、とにかく日々が非日常にあふれていていて、まさにドラマの主人公のようでした。
 
 そのたにせんさんが、いつもつぶやいていたのが、「エフェ」でした。
 それ以来、エフェが気になって、たにせんさんの投稿をフォローしてました。まあ、ある意味おっかけです。
 そんなある日、たにせんさんが、エフェを学ぶための「レモンガーデン」という場をつくる、というのを耳にしました。これが自分とたにせんさん、そしてエフェとの最初のつながりです。
 
 そのレモンガーデンでやらせていただいたのが、前回のしづのさんのお手紙にあった「タニモク隊長」です。
 「タニモク」は、パーソルの三石さんという方が開発されたワークで、
「他人に目標を立ててもらうワーク」のことです。


  このタニモクをレモンガーデンでやってくださいと、入ってすぐにたにせんさんに頼まれました。これがタニモク隊長の仕事でした。
 簡単に言ってしまうと、タニモクは、お悩み相談会です。
 三人もしくは四人で集まって、お互いの悩み事をシェアし、他の参加者が解決方法(=目標)を提案します。
 ただそれだけなのですが、これがめちゃくちゃに楽しいのです。
やってみないとなかなか実感できないのですが、毎回とっても盛り上がります。
(しづのさんとも一度、一緒にやったのでご存じですよね)
 
 タニモクの良い点は、以下の二つです。
・人に話すことで、自分の抱えているモヤモヤが整理される
・自分では決して思いつかない解決法が得られる
 
 タニモクでは、まず自分の抱えている悩みについて、他の参加者に説明します。面白いもので、説明していると、この段階で「あぁ、こうしたらいいかも」ということに気がつく人もいます。他人に説明していると、自分の中のモヤモヤが整理されることってありますよね。これがタニモクの効用の一つ目です。

 次に、自分の説明をした後に、他の参加者に自分の悩みを解決するための解決方法=目標を提案してもらいます。ここがタニモクの二つ目の効用であり、醍醐味です。
 悩みというのは、自分で解決するものだと大抵の人は考えています。
当たり前です。皆さん普段は、自分で考え、自分で解決しています。これを他人の頭を借りてやるのがタニモクですが、毎回、自分では決して思いつかないような解決方法が提案されます。これが何より楽しいのです。 

 悩みと言うのは一人っきりの行為ですし、袋小路に入り込みがちです。というのも、自分で考えると、同じような解決方法しかでてこないし、それもう既にやっているというケースがほどんどだからです。
でも、他人の解決方法を聞いていると、どれだけ自分の視野が狭かったのかということに気がつけます。そうかあ、世界ってこんなに広いんだ、と。これが実感できるだけでも、ものすごく気が楽になるし、勇気が出ます。
 
 そんなこんなで結局一年にわたってタニモクをやらせていただきました。本当に学びが多い時間でした。
 
 話は変わりますが、たにせんさんに、「タニモク隊長やって」と言われた時、実は自分はタニモクが何か知りませんでした。それでも、自分はその時、「タニモク隊長やります!」と言えました。しづのさんが、猫に関するエッセイを書いてと言われて、数秒で「書きます!」、と言ったのと同じです。
 せっかくなので、なぜすぐにイエスと言えたのかをエフェ的に考えてみたいと思います。
 
 まずあげられるのはエグゼクティブコーチである中島さん(※1)の教え、「NTP」です。
NTPとは、ノー・タイム・ポチッの略です。このNTPを知っていたからこそ、すぐに返事ができました。
 
”新しいことをするときあれこれ考えてしまって、行動を起こせない人がいます。そういう時は、考える前にポチッと押して申し込んでしまいましょう”
(※2)
 
 自分が知る限り、エフェクチュエーションの熟達者、エフェクチュエーターはこのNTP力が半端ないです。
 株式会社サニーサイドアップを創業した高橋恵さんは、著書の『営業の神様が笑うとき』(※2)で、「5秒で行動しないことには成功も幸福もない」と書かれています。
 竹林一先生の著書、『たった一人からはじめるイノベーション入門』(※3)でも、「PDCAはDoから回せ」と言う言葉がでてきます。
 
 皆さんが、共通して言っているのは、まず行動することが大切、ということです。
 
 なぜすぐに動くことが大切か、それは迷っていても良いアイデアは出てこないからです。
 実行する前に考えても、出てくるのはあんなことになったらどうしようというリスクや、やらなくても良い理由ばっかりです。
そもそも人間は現状維持が大好きです。だってその方が楽ですよね。新しいことなんかやらずに、自分が分かること、知っている範囲のことをやってる方がはるかに楽です。
 だからNTPせずに、やるかやらないかを考えていると、やらなくて良い理由ばかり浮かんできて、結局最初の一歩が踏み出せなくなる。一方で、迷っているよりも行動したほうが、得られる情報は圧倒的に多い。それが分かっているからこそ、エフェクチュエーターは、NTPするのです。
 
 とはいえ、我々、凡人にとってNTPはそんなに簡単なことではありません。
 もしやるかやらないかで悩んでしまったとき、考えてほしいことがあります。
 
 それは、「やらなかったことによる機会損失」です。
 この機会損失、もしもの世界の話なので、なかなかはっきりと見えません。でも、見えないだけで確実にそこにあります。

 あるセミナーに参加したいと思っていたとします。でも、自分にはちょっと荷が重い。どうしよう、なかなか参加のボタンをクリックできない。考えていたら、胃が痛くなってきた……。そんなことは良くあります。

 中島さんは、「幸運のバスは定期便ではないよ」と言います。※4
 
”次の(バスに)に乗ればいいや……。いやいやいや。もう二度と来ないかもしれません。幸運のバスは決して定期便ではありません” 
 
 そうなんです。もしセミナーに参加したら、新しい何かに繋がるかもしれません。でも、参加しなかったらそこで終わり。ゼロです。
 もちろん参加したけど、自分に合わなかった、ということもあるかもしれません。それはそれでいいんじゃないかと思います。こっちは自分に合わなかったという事実が自分の中に残れば、次の選択の質は確実に上がります。
 
 と、偉そうなことを書きましたが、タニモクが何か分からずにタニモク隊長に任命された時、自分は「困ったらたにせんさんに聞けばいいや」と思ってました。
 やって、と言った以上、たにせんさんは聞いたら間違いなく教えてくれるだろうし、教えてもらえば多分、なんとかなります。そんな軽い気持ちで、「やります!」と言ったわけです。
 
 もしかしたら、「自分にはできないこと」というのも「手中の鳥」なのかもしれません。
 エフェでは、まず私は誰か、私は何を知っているか、私は誰を知っているか、という自分の「手中の鳥」を整理し、具体的な行動につなげます。
 手中の鳥を整理する過程で、自分には出来ないことも当然、見えてきます。でも、それは誰かにお願いすればいいわけです。自分に出来ることと、出来ないことを仕分け、出来ないことは誰かにお願いする。それで誰かに繋がれば、それがクレイジーキルトとなって、また別の選択肢が見えてきます。

 視点が変わりますが、脳科学的には、失敗を多くした方が、最終的により良い学習成績が残るそうです(※5)。エフェでいう、レモネードの原則ですが、これも行動するからこそ得られる情報です。行動して失敗するからこそ、次により良い選択が出来るようになるし、沢山の失敗をしているからこそ、より良い未来に近づくことが出来る。
 そう考えると、NTPするのもちょっと気が楽になってきませんか?
 
 話題をタニモクに戻したいと思います。とある場で話していたときに、こんなことを話してくれた人がいました。
 
「最近、多様性、多様性って言うけど、私は同じ、っていうのも大切だと思うんです」
 
 この方がどういう意図でそうおっしゃったのかははっきりしませんが、多様性は確かに楽しいばかりではありません。
 ここのところ多様性が大切と多くの場所で言われるようになりました。ウェルビーイングの視点からもビジネスの観点からも、多様性の大切さが語られています。
 一方で、この方がおっしゃる通り、多様性というのは本来キツいものです。楽しいことばかりではありません。だって、自分と違うものと向き合うわけですから、間違いなくキツいです。自分と違うものは、誰でも受け入れがたさを感じてしまいますよね。

 自分としては、多様性は良いとか悪いとかではなく、ただそこにあるものであり、好き嫌いにかかわらず受け入れざるを得ないものだと思っています。
 「違う」ということは、キツいことではありますが、同時に自分の知らない新しい世界への入り口でもあります。

 視点が変わると、自分から見えている世界が大きく変わります。タニモクはこの多様性の良い点を腹の底から実感できるワークです。三、四人集まれば、どこでもできます。それこそカフェでもいいし、オンラインでもかまいません。
 この記事を読んで、ちょっとタニモクが気になってきたあなた、そんなあなたにタニモクはおススメです。ぜひ、NTPしてください。
 
 しづのさんは、エフェライフコミュニティに入って、色々とやってますよね。入る前と入った後で何か心境の変化があったのなら、ぜひそこを伺いたいです。
 夏の京都、本当に暑いというのは良く訊きます。ぜひご自愛ください。

 ではでは。

※1 株式会社ドリーム・チーム・ディレクター (中島さんの会社です)

※2 『TraZmind』 中島克也(著)

※3 『営業の神様が笑うとき』 高橋恵(著)

※4 『たった一人からはじめるイノベーション入門』 竹林一(著)

※5 失敗こそが学び




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