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オフショア、北風が強くて寒々しい朝。
ホワイトのタートルネックニットにホワイトのワイドパンツにアウターは何にしようか、スキンカラーのロングコートはやめて、グレージュのフェイクファージャケットにした。今日みたいな冬空にぴったりだ。パンツの下にこっそりタイツを履いてきたのも正解だった。寒風をものともせず高い空を見上げる。
年末、元報道カメラマンだったカナダ人と二週間ほど一緒に過ごした。カナダ国籍ではあるが、自分のルーツはアイルランド、僕はアイリッシュなのだと言っていた。若いころベトナム戦争の取材のため現地に赴いていたという。自分の体験を話して聞かせてくれた。それは一瞬の出来事だったと。彼がとても親しくしていたカメラマン、YOSHIが目の前で撃たれて倒れた。悲しむ間もなく実務に追われた。戦地ゆえ、彼自身が亡骸をケアし、フリーザーに保管し、故国へ搬送する手配を行った。彼は今も苦しんでいる。
サバイバーは苦しいよ。でも、行ってしまった彼らのたましいも苦しみとたたかっているんだよ。
わたしたちは三人で冬枯れの山の中にいた。リビングルームという名の高い吹き抜けのあるラウンジで、中央にある大きな暖炉の残り火を見つめながらそれぞれが思いを馳せる。
泣き疲れても、歩き疲れても、それでもまだ、白い花が咲き乱れる広い野原で、どこかに行ってしまったあの人を探して歩き回る自分の姿が見えた。