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Photo by
inagakijunya
飽き性な女のnote「100日投稿」30日目 見つけられた落書き
まだ20代の頃設計事務所で働いていた。
その頃はドラフターという物で図面を書いていた。
斜めに傾いている図面台にA1の紙を貼り、そこで
図面を書いていた。
ある日、事務所の取引先の社長N氏が来た。
N氏は自社で色んな内装材を開発していて、その当時勢いがよかった。
気前もよく一見軽そうだが、実はとても気の使いが細かい人だった。
N氏が私のドラフターの横に来て、軽く会話をしていた。その時、N氏は立ち止まり
「君はなかなか繊細だな」
と言ってきた。 なんのことか思ったら
私が自分のドラフターに貼ってある紙に書いた小さな落書きを見ていた。
その落書きは
「人はお節介という親切で人を傷つけている」
なんでそんな事を書いたかは、いまでは思い出せない。きっと何か煮詰まっていたんだろう。
思わずそれを見られて赤面した。私は
「しまった」という顔をしていただろう。
N氏は「まぁ色々あるよ、気にしなさんな」と肩を叩いて去っていった。
それ以降N氏は私を気にかけて「大丈夫か?」と声をかけてくれる様になった。
何年後かにN氏は病魔に侵されこの世を去る。
今でもあの時の光景を覚えている。