どこよりも詳しい院試体験記(東大物理学専攻,広域科学専攻相関基礎科学系)
はじめに
本記事は、東京大学理学部物理学科B4の某学生が書いた、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学系D1サブコース(相関基礎と略します)と、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻(物理学専攻と略します)についての、2024年度入試の体験記です。(名前が長い)
最終的には両方受かり、相関基礎の方に行くつもりです。
記事の対象者はメインとしては弊学物理学科の後輩と、外部からこれらの専攻を受けようとしている方々です。
主に物理学専攻について、私が学生同士の非公式情報で集めた範囲での、おおよそ必要な得点率については有料ゾーンで公開しています。最後まで読んで役立ちましたら、投げ銭のつもりで買っていただけるとありがたいです。
研究室が決まるまでのあらましは個人体験談の側面が大きいため、試験のことだけ知りたい人は試験対策等のパートに飛んでください。
研究室が決まるまでのあらまし
私は物理学科に入った当初、なんとなく物性が面白そうだなと思っていました。しかし同時に、一通り色々な物理を触ってから何をするか決めよう、という気持ちでいました。しかし結局は、量子情報という全然違った文脈に落ち着きました。
2年生のAセメスター(10~1月)、コロナ禍のオンライン授業をゴロゴロしながら聴く日々の中、slackでの物理学科の有志でやっているPhysics.Labという5月祭の出し物向けのゼミに参加することにしました。物性班にもいましたがゼミが途中で流れ、もう一つ参加していた量子情報班でのゼミがメインになりました。そこで学科の超優秀な量子情報好きの同期に助けられながら、Neilsen ChangのQCQIを輪読していきました。その後3年の5月に向けて記事を書いたりで色々勉強しているうちに、なかなかどうしてこの分野が面白く見えてきました。幸い弊学には量子情報っぽい授業がいくつか生まれていた時期だったので、3年生を通してそういう授業をとっていくうちに、こいつはいよいよ面白いなという気分になってきたのです。
世間が量子コンピュータで囃し立てているのからわかるように、量子情報は実験分野において、まだまだ課題が山積しています。特に、現在はどの系で実験すると量子コンピュータとして使いやすいかという絶対的勝者は決まっておらず自由度があることから、まだ誰も掘っていない山がありそうだなと感じたのも大きいです。
ここまで量子情報の実験に傾いたのは3年生の春休み(4年になる直前)くらいでした。それまではなんとなく、持ち上がりで物理学専攻に行くかなーと思っていたので、物理学専攻の研究室を複数訪問していました。
しかし厄介なことに、物理学専攻には量子情報実験をやっている研究室はないです。(厳密に言えばkbys先生なんかは近い分野ですが、かの御大は測定に振っている感じです。ちなみに理論だと先生がいます)
よって、春休みから物理学専攻以外で量子情報実験をやっている研究室を探し始めました。
2023年現在分野の頂点を走っている研究室は東大か阪大に多くあり、その他の大学にも散らばっています。
なんだかんだでそのうちの一つが、自分の興味と最も合致したため、志望することにしました。
じゃあ物性はどうなったかという話ですが、学科で勉強したり実験をこなすうちに、物性実験が個別の物質の探索に終始しており、使う装置や技術も大まかには決まっていることがわかってきました。もちろん、既存物質の知られていない性質を見たり、そのために誰も使ったことがない装置、技術を入れるから研究として成立するわけですが、自分はもう少し統一的に記述できる物理をやりたいなと思うようになってきました。ただ迷いはあったので、4年Sセメ(4~7)月の研究室配属は物性ど真ん中の研究室を選び、物性への適性を測ろうと考えました。結果として迷いを断ち切り、今は量子情報をやろうと決意することとなりました。
(一応触れておくと、私は物性アンチでもなんでもなく、ただ個人的な相性の問題です。物性分野は理論、実験ともに、素晴らしい研究者が無数にいらっしゃいますし、応用も広いすごい分野です。
物性に限らず、物理の各分野が好みかどうかは人によって分かれ、変化することも多いので、自分で一度体験してみるのが早いです。)
他には、東大の物理工学専攻も割とギリギリまで受験を迷いました。研究室訪問も複数行きましたが、物理工学専攻の量子情報系は、流行りのおかげかめちゃ人気で受かるか不確定性が大きそうなことと、物理学科とカリキュラムが違うことによる追加学習の負担量から、本命の相関基礎と保険の物理学専攻、という形で出すことにしました。
ポイント・研究室選び編
研究室訪問は一つでも沢山、少しでも興味があれば行きましょう。出願の際には思ったよりたくさんの研究室名をかけますが、訪問したことがある研究室が少ないと、私のようにHPで見たものを適当に埋めることになりかねません。この場合、志望調書を書くときなどに苦労することになります。
私の同期たちは、行きたい研究室が確定したのが出願1月前だったり1週間前だったりしたので、早めに決まっていないからといって焦らずとも大丈夫です。なんなら複数出願していて、出願時に保険として出していたところが後から本命になった人もいます。
各研究科の入試形態
それぞれ入試形態が違うので、先に少し解説します。試験の詳細や対策は次節移行で詳しく書きます。
物理学専攻
物理学専攻ではサブコースという枠で出願を行います。
A0からA8の9つのサブコースが存在し、各サブコースごとに原子核理論、素粒子理論…のように分野が決まっています…
(詳しくは下記を参照してください)
受験者はサブコースを2つ選んで出願することができ、第一志望のサブコース、第二志望のサブコースを書けます。
第一志望のサブコースに所属する先生を第一希望から第四希望まで選んで書き、第二志望サブコースも同様に書きます。
さらに、各サブコースごとに、第四希望までの先生以外の指導教官で採用されるか選ぶことができます。
(第一志望のサブコースしか書かなかったり、第一希望の先生の名前だけを書いたりすることも可能です)
試験は数年前から数学が1大問と、物理が3大問あり、これを4時間で解きます。量子力学、統計力学、電磁気学が1つずつのことが多く、稀に電磁気が古典、解析力学になります。また、今年度までは英語試験がその場で受けるタイプのTOEFLであるTOEFL ITPでしたが、来年度からTOEFL iBTもしくはTOEIC L&Rのスコアを提出する方法に変更になります。
これらを突破した人が口述試験に進みます。人によっては第二志望のサブコースのみで口述試験に呼ばれることもあります。
広域科学専攻相関基礎科学系
広域科学専攻はいくつかの分類に分かれており、分類ごとに受験方法が異なります。ここでは相関基礎科学系に絞って書きます。
相関基礎科学系はA,B,C,D1,D2のサブコースに別れており、それぞれ大まかに科学史、素粒子/弦理論、物理理論、物理実験、化学/生物実験となっています。
これらのサブコースのうち、希望するサブコースを2つ選べます。第一志望のサブコースは5人、第二志望のサブコースは2人まで、希望する指導教官を選択できます。
相関基礎科学系の試験は問題が共通しており、数学1大問、物理4大問と、化学、生物、科学史などの大問から3つを選択し、3.5時間で解く形式です。一応どれを選んでもいいことになっていますが、物理実験をやりたくて受けるのに科学史をとっているときっと面接とかで突っ込まれるだろうと考え、数学と物理に絞って対策していました。
英語はTOEFL iBTを提出する形式です。
物理工学専攻
受けはしませんでしたが、物理工学専攻の受験方式も触れておきます。
物理工学専攻は、数学を6大問(微積、線形代数、フーリエ/ラプラス変換、複素積分、ガウス曲面、確率/統計)から3つを選んでとき、物理は古典力学、量子力学、統計力学、電磁気学、固体物理などから4大問が必修として出されます。
英語はTOEFL iBTを提出する形式です。
私の出願記録も残しておきます。
相関基礎では、本命の研究室があるD1サブコースを第一志望にし、本命の研究室の次に、分野が近くて興味のある研究室を第二志望に入れました。第三志望は第二志望のついでに見学したところをかき、第四志望以降は研究室見学もしていないところについて、HPの研究内容で興味のある順に埋めました。
サブコースをもう一つかけることを出願段階で知ったので、こちらも訪問したことない研究室を、HPの内容から選んで書きました。
正直相関基礎は、第二志望までに受からなければ物理学専攻に行こうと思っていたので、第三志望以降はかなり適当でした。
物理学専攻では、第一志望にA4(物性実験)サブコース、第二志望に保険としてA6(一般物理実験)サブコースを書きました。
第一志望に物理学専攻の本命である、割と量子情報に近い研究室を書いたあとは、特別実験でお世話になった研究室を書き、あとは授業をとっていた先生の中で一番興味があるところを書きました。
A6サブコースは完全に保険のつもりだったので、HPの研究内容を見ながら順番を決めて書きました。A6サブコースの研究室は、どれも訪問したことがなかったです。
試験対策
過去問の使い方編
数学と物理に関しては、ひたすら過去問を解くことによって対策していました。
理物には過去の先輩が作った物理学専攻の院試解答集が出回っており、20年分の数学と物理の解答を利用することができました。そのため、物理学専攻に関しては、20年分の問題を一人で解き進めたり、同期たちと開催していた物理学専攻の過去問を解くゼミに参加して解法を確認したりしました。
一方、相関基礎の方は解答が流通していませんでした。(統合自然科学科の知り合いに聞いたところ、内部でも出回っていないようでした)そのため、私がゼミを主催し、過去15年分の数学と物理の問題を一緒に解いて答え合わせをしていました。
私以外は駒場の素粒子、弦理論の研究室を目当てに受験する学生がほとんどだったため、理物でも有数の賢者たちが集まっていました。そのため、基本的に全問題の解答を照らし合わせることができました。
他にも、物理工学専攻の過去問とその回答を10年分入手したため、こちらも解いて答え合わせをしていました。
これらの3専攻は、問題の傾向が少しずつ違います。相関基礎は熱力学と統計力学、電磁気学と古典力学(特に慣性モーメント)がそれぞれセットで出題される上、数学の難易度が物理学専攻よりかなり高いです。さらに、理物の授業でいうところの固体物理学Ⅰで扱う範囲の問題を選択することも可能だったため、総じて相関基礎の方が幅広い対策が必要でした。また、物理工学専攻では練成振動や弾性体などが出たりして、理物生なら講義をとったことがない可能性がある部分の出題があります(これにより手が回らなくなりそうだったのも、物理工学専攻の受験を諦めた理由の一つです)。
ただ共通して言えるのは、過去問を解答付きでやるのが最も効率良い勉強だと思われることです。なんだかんだ20年分くらいやると、おおよその問題には触れたことのある状態にな理、一度やったことのある操作で8割くらい解けるようになります。
内部生の皆さんは、流通する過去問を解答と照らし合わせて解くと同時に、わからなくなった点をすぐに友達に聞けるようにしておくことが重要です。
内部生と外部生が最も差がつく点は、この解答へのアクセスと、聞ける人の存在になるかと思います。
外部生でも他大に所属する方々については、同期の方々と一緒にゼミをして、過去問の回答を照らし合わせて解き進めることをお勧めします。社会人の方などは苦労されるかと思いますが、院試ゼミをオンラインで主催するグループも存在するようですので、そういう場面で仲間を見つけることをお勧めします。
物理学演習編
内部生向けのコメントになりますが、内部生の皆さんは、授業で物理学演習1~5を取り、演習に励むことになっています。これらをちゃんと毎週解いていれば、院試前に少し過去問を解けばなんとかなる、という体験記を、私も何個か見たことがあります。ただし、私はそこまで真面目な学生ではないので、持ち帰り演習はテスト前に解けるようになって、その後忘れることを繰り返してきました。おそらく院試勉強を開始した時点で持ち帰りも解けるような学生は、過去問を少しやれば大丈夫な真面目な学生たちです。ただ、私の同期の大半はそんな状況ではなかったので、物理学演習が解けない状態から勉強する場合を想定して書いておきます。
個人的な所感を述べると、その場演習は全て解けるようにしておいた方が良く、持ち帰り演習はある程度過去問をやった後に見直す程度で良いと思います。院試の難易度はその場演習以上持ち帰り演習未満といったところです。そのため、その場演習はサラサラ解けるようにしておいた方が、院試を解くのがスムーズになります。一方、持ち帰り演習を全て解けるようにするのは過剰かなと感じます。ただ、その場演習で扱われているテーマが院試として出ることは結構な割合であるので、その場演習の中でも簡単な方の問題は見直しておき、忘れている箇所があれば関連部分を復習することが重要だと感じます。
参考書
外部生の方々は過去問回答を見つけたり、学習仲間を集めるのが難しい方も多いと思いますので、使用すべき参考書をいくつか挙げておきます。(Amazonのリンクに飛べます)
参考書・教科書編
マセマシリーズ
内部生には不必要な参考書ですが、物理学科ではない方などで、大学物理、数学を一切知らない状態から始める場合は、ここから始めると良いかと思います。
EMANの物理学
最強of最強。この国の物理学への貢献は計り知れないビックなお方です。
しかも、ウェブサイトで全記事を公開しているので基本的に無料で学習できます。まさに神。高校生の頃から今まで、ずっとお世話になってきました。
力学
物理学序論としての力学
力学の教科書といえばこれが有名ですが、正直EMAN先生の方がわかりやすいので、買わずにEMAN先生の記事だけ読んで、さっさと演習に移ったほうが効率的です。
熱力学、統計力学
田崎熱・統計
清水熱
弊学物理学科の学生は、この2冊のどちらかの信者であることが多いです。哲学が違う2冊ですが、どちらも非常に明快かつシステマチックなので、少なくとも一方は読んでおくと良いです。
電磁気学
長岡電磁気
入門レベルならこれが一番わかりやすいと思っています。
砂川電磁気
入門レベルとはいかないですが、簡単なところから高難易度まで網羅的にカバーしている一冊です。
量子力学
猪木河合
東大の先生が、東大の量子力学Ⅰ~Ⅲの講義をベースに作った教科書です。範囲としてはまさにピッタリ。
入門現代の量子力学
X(Twitter)上で活発に(過激な)発言をなさる堀田先生の本です。最近の本ですが、量子情報っぽい側面から量子論に入りたい人にはお勧め。
参考書・問題集編
マセマシリーズ
教科書編と同じく、全く大学物理をやったことがない場合のみ、これから始めると良いです。
久保統計・熱力学
統計、熱力学の参考書といえばこれです。某youtuberの方はこれを全問解いたことが知られていますが、全部解かなくてもある程度やればムキムキになれます。
詳解力学演習/詳解電磁気学演習
力学に特化した演習書ではほぼ唯一かも知れません。同期の何人かがやっていました。
詳解と演習 大学院入試問題 数学
詳解と演習 大学院入試問題 物理
東大院の問題よりは少し簡単といった難易度です。演習量は積めるので、過去問前に何かやりたい人に向いています。
演習 大学院入試問題 数学Ⅰ,Ⅱ
演習 大学院入試問題 物理Ⅰ,Ⅱ
古い東大院の過去問がメインですが、回答がめちゃ雑です。自分で過去問の解答を入手できない方は買うと良いと思います。
これらを使用すれば、過去問を解かなくてもある程度まで対策できると思います。
あくまで最短経路が過去問を解答付きで解くことで、これらを使った場合は少し遠回りしつつ、同じ範囲をカバーできるというイメージです。
TOEFL iBT対策
私は相関基礎対策にTOEFL iBTを受けたため、その所感を書いておきます。来年度から物理学専攻の受験生も受ける必要があり、注意すべき点は知っておくと良いです。
TOEFL iBTはReading,Listening,Speaking,Writingが30点ずつの120点です。
私は相関基礎を受けると決めたのが4年になってからだったので、TOEFLを受験したのは5月中旬でした。(大体申し込んだ日から1月先くらいに受験することになります)相関基礎はオンラインpdfをの印刷を送付すればよく、pdfは受験後1週間ほどで送られるため、総じて締切の5週間ほど前に受けることになります。相関基礎は6月末の申し込みの時点でTOEFLのスコアが手元に必要で、結果として1度しか受ける時間がありませんでした。
さらに、5月祭と呼ばれる東大の文化祭の直後に受けたため、ほぼ対策する時間がなく、過去問を2回ほど解いただけで特攻する羽目になりました。
ここからは対策方法を述べていきます。
Readingは、各パラグラフごとにPCの画面に表示され、1パラグラフごとに2問ほどと文法問題が出題されます。よって、最初に問題を読んで、解答を探しながらパラグラフを斜め読みし、解答を見つけたら次に行くようにして読めば、時間内に解けると思います。文章中にある単語と近い意味の単語問題は、音が似ているものはダミー、のように、いくつか受験テクが存在するので、ネットで検索したり、そういう対策本を見ると良いです。
Listeningは東大英語とほぼ同じ形式で、長い講義や会話を聞いた後に、1問1文の選択肢4つから1つを選びます。ただし、時間は東大英語の2倍あるので、集中し続ける体力が必要になってきます。
SpeakingとWritingは問題の形式が完全に固定されているため、過去問を何度かやって型を作ってしまうことをお勧めします。
以下のリンクが参考になると思います。
高得点を取りたい方は自力を鍛えた方が早いですし、それはネットで検索したら出てきますが、英語に時間をかけるより物理に時間をかけたほうが効率が良いので、型を使ってある程度の点数をきっちり取った方が安定的です。
特にReadingとListeningは数をこなすほど得点が上がりやすいため、問題をこなすことをお勧めします。
私は時間がなかったので、公式問題集を買って対策していました。
解説が丁寧なので、とりあえずこちらは買うことをお勧めします。(リンクから買ってもらえると喜びます)
ただ、これだけでは問題量が少ないので、私は中国TPOを用いて対策していました。(と言いつつ時間がないのでほとんどできていないです。同期たちはこなしていました)
これは中国のウェブサイトで、TOEFLの過去問をPC上で50回分ほど公開しています。
ちゃんとライセンスを取って公開しているのかは不明なので少々怖いですが、
中国のウェブサイトでもいいよという方は使うことをお勧めします。
アカウントの登録方法等は以下のウェブサイトにあります。
TOEFL ITP対策
今年まで物理学専攻はTOEFL ITPを用いていたので一応触れておきます。しかし、来年度から物理学専攻を受ける人はiBTもしくはTOEICを受ける必要があるため、勘違いしないよう気をつけてください。
ITPはReading,Listening,Grammerが存在します。ReadingとListeningはiBTでの注意事項とほぼ同じです。Grammerについては、間違った語を選ぶ問題と穴埋め問題の2種類があり、前者は内容的な間違いでなく、完全に文法のみで正誤判断する形式です。おそらく東大を受験したことがあるなら、形式に慣れるために数回過去問や模試をやれば十分な難易度だと思います。
私は友人に以下の問題集を借りてやりました。
完全攻略!TOEFL ITPテスト 模試4回分
こちらはアプリで音声をダウンロードできて便利でした。公式過去問は1回分しか問題がないのに対し、こちらは4回分収録されているのでお勧めです。
気をつけたいのは、問題集によっては本番よりリスニングのスピードが遅いものがあることです。彼らは本番のリスニングが練習より早くて戸惑い、そんなに良くなかったと言っていました。リスニングは心持ち早く再生して練習しましょう。(上記の問題集は大丈夫でした)
TOEIC
私は遊びでTOEICを受けたことがあるので、こちらにも触れておきます。SpeakingとWritingが入試でやるL&Rにはいらないので、これらが苦手な人には向いているかもしれません。TOEFLが大学講義や大学生活、アカデミックな話題が中心なのに対し、TOEICはビジネスや経済的なトピックが多いです。それにより、TOEFLの方が単語がわからないときに詰みやすいかも知れないです(私はなんだかんだ意味を推測して読めば読めたので、誤差程度だと思います)。
ただ、海外大学院等を視野に入れる人は、練習も込めてTOEFL iBTを受けるべきです。また、他大学でもTOEFL iBTのみを指定しているところと、TOEICのみを指定しているところがあるため、受験校に合わせて受けるか、受験校が曖昧ならとりあえず全て受けておくことをお勧めします。
ポイント・英語試験編
TOEFL iBTは受ける回ごとにトピックが違い、ギャンブル要素が強いです。また、慣れも含めて、2回受けることを前提にしてスケジューリングすることを推奨します。
一度申し込んでから結果が来るまで5週間はかかるので、2回受けるには3月かかると思った方が良いです。また、院試が近づけば近づくほど、英語に割く時間はなくなるので、3年生の春休みまでに1回は受験しておくことを推奨します。
さらに、TOEICは受験申し込みの締め切りが1ヶ月前で、結果が来るのが受けてから1ヶ月はかかるので、申し込みから結果受理まで2ヶ月かかります。
よって、とにかく一度両方を受けてみることをお勧めします。TOEICもTOEFL iBTも2年間有効ですから、2年生の秋以降ならいつ受けても良く、早く受ければ直前に数物に時間を回せます。
また、TOEFL iBTは本人確認が厳しく、同期の一人が本人確認に失敗したせいで本命の志願先を諦めることになりました。
運転免許証、マイナンバーカード、パスポートのいずれかを持っておくのが一番楽なので、どれかしらは取っておきましょう。
別の同期は、ReadingとListeningの点数が離れていたという理由で後から不正を疑われ、TOEFL iBTの得点が無効になる事態が発生しました。かなり理不尽な理由で結果が取り消されることもあるので、そう言った観点からも、とにかく早めに受けておくことをお勧めします。
時系列での勉強記録
3年生の春休みまで
量子情報のゼミでQCQIや圏論的量子力学を読んだりして自習していました。
一方、院試に出るような基礎物理は抜け漏れが多かったです。運動量演算子の符号がわからなかったり、確率流密度の形がわからなかったり、分配関数の定義が怪しかったり、マクスウェル方程式を積分形で使えなかったり、複素積分で留数定理が全く出てこなかったりという有様でした。
4年生の4月
物理学専攻の過去問を解くゼミが始まったので、それに合わせて週に1年分くらいの過去問を解くようにしました。
同時に、物理学演習のその場問題を一通り解けるようにしました。
特別実験を選択した上、授業も興味に任せて取っていたので、平日は2限から5限まで大体埋まっており、自由な時間は金曜の午後くらいしかありませんでした。
5月
相関基礎を受けようと決めたので、相関基礎の院試ゼミを立ち上げ、過去問を週に1年分解き始めました。
物理学専攻の問題も、並行して週に1年分解いていました。
中旬にTOEFLを受けたため、その数日前からはそちらの対策をしました。
6月
物理工学専攻を受けるか悩み、物理工学専攻の過去問を入手して、上のゼミに加えて週に1回くらい解き始めました。
結局月末には受けるのをやめようと決めましたが、勉強になるなと思ったので、解くのはやめませんでした。
7月
月末までは試験とレポートが立て込み、特別実験の発表まで入ってきたので、上のゼミ以外は院試勉強を止めていました。
7/31に特別実験の発表が終わったので、院試勉強にフォーカスできるようになりました。
8月
最初の数日までで物理学専攻の問題を一通り解き終えるペースで進め、相関基礎の受験日までにもう一周復習しました。
相関基礎の問題も引き続き週に1年のペースで進めつつ、復習も並行しました。
相関基礎の本番数日前は物理工学専攻の残った年度を解きつつ、相関基礎のゼミのペースを上げて15年前まで遡れるようにしました。
相関基礎の本番後は過去2年分のセットを残していたのでそれを解き、TOEFL ITPの問題を2セット練習しました。
志望理由書
物理学専攻は志望理由書、相関基礎は研究計画書が課されました。どちらもA4サイズに1枚くらいです。
私は今まで学んできたこと、志望した研究分野に興味を持った流れ、志望先の研究室を志望した理由、志望先の研究室でどういうことがやりたいかを自分の興味と絡めて書くこと、を意識して書きました。
また、書いた文章は友達に見てもらい、文章構成や誤字、脱字のチェックを相互に行いました。
適当に書いて出した同期もちらほらいましたが、後悔している声も聞かれたので、ちゃんと字数ギリギリまで真面目に書きましょう。
本番の流れ・相関基礎編
9時10分に集合だったので8時50分くらいにつきました。割り当てられた席の上の蛍光灯が切れかけてめちゃチラついたので、試験官の方に席を変えてもらいました。そうこうしていると時間ギリギリになったので、余裕を持って行くのは大事です。
受験票を印刷して持っていく必要がありますが、同期の一人がそれを忘れており、友達と一緒にコンビニに印刷しに行っていました。間に合ってよかった…
本番は量子論、熱/統計力学、古典/電磁気学の3大問を選ぶつもりでいました。量子と統計は見たことある形ばかりで安心して解けるなと思っていましたが、量子力学の途中でやったことある操作(コヒーレント状態の規格化)をド忘れして焦りました(結局完全な回答になっていなかったです。)そこで一度電磁気に移ろうとしたら、剛体の問題が嫌な方向に軸が決められていたり、行列形式で解くタイプだったので、剛体はほぼ取れなそうだ、どうしよう…と困惑しました。電磁気は全部解けそうだったので迷い、一旦物理の残り1大問を見にいきました。この大問は、最近は固体物理学で固定されていましたが、今年はこの大問も電磁気と古典力学の組み合わせになっており、これなら7.5割くらい解けそう、と判断してこちらに取り組みました。おそらく物理理論/実験の方は古典/電磁気の大問を解いた方が先生の心象が良いですが、結局点数が高いことが最優先だと割り切って解きました。
量子と統計を行ったり来たりしながらこの選択を迷い、どちらも最後まで書いた後に最後の大問に取り組み、終わったら量子と統計に戻ろうと思っていましたが、結局古典/電磁気を解き切ったところで時間切れになりました。
本番の流れ・物理学専攻編
こちらも試験開始20分前くらいに会場につき、服を着替えて汗冷えを防いだり、理物の同期たちと話してリラックスしたりしていました。TOEFL ITPが始まった時は緊張して、リスニングパートは普段より集中できずに振るわなかった感覚がありました。所詮ITPの割合なんて低いと切り替えて、文法と読解に集中して午前を終えました。
元々お昼は学食で食べるつもりでしたが、周りの同期はご飯を買ってきて用意してある人がちらほらいて周到だなと思いました。ただ、学食にいっても時間的余裕はあったので、同期と話しながらまったり過ごしました。
午後は数学、物理が統合して4時間ぶっ通しで、どこから解いても良い形式です。順当に頭から解き始めたところ、いきなり正準方程式の問題が来て焦りました。正準方程式を書いたは良いものの、それを足し引きするという単純な事態に思い当たらずかなり焦ります(結局ここは最後まで解けてないです)。切り替えて量子っぽい話になったパートから解き進め、行き詰まったところで統計に進みました。統計は一巡目で大体解け、2問くらいわからないところを残して電磁気に進みます。電磁気も割と解きやすい問題で、一巡である程度回答できました。空の色の原理という、私が物理を好きになった原点の一つが出たり、光ピンセットが出たりと、解いてて少し嬉しくなる問題でした。数学はフーリエ変換と行列で、最後の2問ずつくらいで詰まりました。まあ数学は解けなくてもしょうがないと思っていたので後回しにし、見直しに入ります。量子で詰まったところを丁寧に計算して解き、統計と電磁気も解き直しているときに大きな計算ミスを複数発見して修正しました。
ポイント・試験本番編
会場には時計がありません。正確に言えば、時計がある部屋でも時計が見えないようにされていました。よって腕時計必須です。直前に慌てて買うことのないよう、事前に準備しておきましょう。
面接
どちらも面接は守秘義務があるので、具体的な中身には触れません。
事前に対策したことといえば、前期の特別実験でやったことをレポートにまとめる過程で知識を整理したり、基礎的な物理用語について自分で説明できるようにすることです。
就活と同じような点、例えば第一志望ならしっかりと第一志望ということなどは心がけました。
全体を含めたポイント
院試は油断すると落ちます。特に理論は容赦なく落ちます。内部生でも面接に進めなかった人がいますし、第一志望でないというパターンは普通にあります。院試体験記を見ると、2週間くらいの勉強で合格したといった記録ばかりで錯覚しがちですが、もっと勉強しないと普通に落ちるという心構えで臨むべきです。
内部生に関しては、Sセメで特別実験を選んだり、授業をそこそこ取ったりすると、思った以上に勉強時間が少なくなります。ゼミに参加するなどして、意識的に勉強時間を確保していくことが大事になります。
また、個人的にゼミへの参加は強くお勧めします。学習時間の確保以外にも、同期の鮮やかな解き方を知れたり、情報交換やモチベ管理の場にもなるからです。
他の院試体験記
2023年(私の同期たちです)
院試体験記 @manmaru_fukuro
院試体験記 @saki_fps
進路決定・院試合格体験記(TOEFLポロリもあるよ!) galaxx
架空院試体験記←嘘記事ですが、他の院試体験記へのリンクが充実しています @puroporiporis
2022年
大学院入試体験記(合否が出る前に) いぇとさん
ここまでお読みいただきありがとうございました。読者の皆様の院試がうまくいくことを願います。
有料ゾーンに、私の得点と、知っている限りで物理学専攻、相関基礎の各サブコースの専門科目と、英語で必要な得点率について書きました。(物理学専攻メインです。)ここまで読んで役立ったと感じた方は、投げ銭してもらえると嬉しいです。
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