板
なにもわざわざ紙に書かなくったっていいぢゃないか。
ほらこのように板の上でサラサラと書いてみれば手を動かせばかけることもあるんだよ。ただ手を動かす。それだけで、人は誰かにものを伝えることができる。高度な知能とか他の動物にはできないとか言うけれど、ううん、そういうのぢゃあないんだよ。ただ、人間というものが、そういう伝達とかっていう戦略をとっただけで。そうそう、君たちはしっているか?猿たちの戦略を。木の枝を使って上手に蟻を食べる方法を知らないだろう。
え、蟻なんて食べる機会がないって?
まあ、そりゃあそうだ。蟻なんていつたべるんだらう。いつかは食べる日もくるかもしれないけれど、そのときはまた、その時の人が蟻を取る機械を発明してくれるかもしれないしね。
君たちは今我が顔をしてこの板を使っている。勝手に文字が打ち込める面白い魔法の板だ。ただ板を手で叩くだけでいい。ではこの板はどのようにこうして文字を中に閉じ込めることができるんだろう。そんなこと知らないけれど今あるんだから使えるものは使おうっていうそんなとこかな。でもふんぞり返って使っててみなさい。痛い目をみる。
今この世界の人たちは板を眺めるので精一杯。本当のものなんてものはなくて、板の上に乗った景色をみる。もはやそれは景色でもなくて、さながら机上の空論だ。世捨て人が、会社に向う黒い影に背を向けて歩き出し、そして哲学らしきものをあたりに撒き散らして、喚き散らして闊歩する。
社会か、世捨て人か、二分はできない。そんな簡単な世の中ではない。でも人間は分別する。いらないものは捨て去る。急に敵だとみなす。敵に命中したなにかがくっ刺さる。跳ね返ったそれは自分を深く傷つける。傷つきいたものはいつの間にか板になる。
ものを大事にしろと言い張りながら、いらないものはどんどん捨てる。一口たべては新しいもの、新しいもの。
手当たり次第手当たり次第。飽きたら捨てる。どんどんすてる。
そうそう捨てられたものはどこにいく?
捨てられたものは板になる。板はどどんとたまる。どどんどどん。ど、ど、ど、どーーーーーーーーー。
人間は板の餌食。板を獣のように弄って
私達は獣
獣のようには間違いか。
板を弄る獣に未来などない。
誰か助けてくださらない。
誰が助けてくれますか。
誰も助けに来てくれない。
呼んでみても、つまんでも、叫んでも、引っ掻いても、
誰も助けに来てくれない。