祈初タイトル!プロ雀士日吉辰哉_彼はいかに第2回AKracing杯予選D卓を戦ったのか【9月23日決勝】
第2回AKracing杯は16名の選手で争われる。
○予選A卓
瀬戸熊直樹
前田直哉
滝沢和典
白鳥翔
○予選B卓
二階堂亜樹
和久津晶
高宮まり
岡田紗佳
○予選C卓
二階堂瑠美
魚谷侑未
東城りお
伊達朱里紗
○予選D卓
藤崎智
萩原聖人
HIRO柴田
日吉辰哉
何とも豪華かつ実力者が揃った。
ここまで行われた予選でA卓から白鳥翔、予選B卓から和久津晶、予選C卓から伊達朱里紗が勝ち進んでいる。
言葉の魔術師、日吉辰哉46歳。彼は麻雀タイトルは無冠だ。予選参加16人のうち、ほぼ全員がタイトル獲得歴がある。かつ、第39期前期鳳凰戦リーグではC3リーグからD1リーグに降級。マイクを持った日吉プロは無敵と言って良いが、肝心の牌を握った彼がどこまで力を発揮するのか。ただの賑やかしなのか。かませ犬なのか。いったいどう戦うのか?
対戦相手は同い年のHIRO柴田。第39期鳳凰戦A1リーグを首位で走る男。
そして、同じく鳳凰戦A1リーグを戦う獲得タイトル数は数知れない藤崎智プロ。そして、佐々木寿人プロの代役となったのは「雪原の求道者」と呼ばれる萩原聖人プロ。日ごろから日吉プロが頭が上がらない人のようだが、獲得タイトルは、第6回麻雀最強戦各界雀豪大会、New Wave Cup、第5回モンド21杯と枚挙にいとまはない。
相手に不足なし。
AKracing杯は2回戦で行われ、順位点はない。1回戦から2回戦に点数がそのまま持ち越される。麻雀の正式ルールである一荘とほぼ同じこととなる。一発・裏・赤ありはMリーグと同様。
1回戦 東1局
東発から日吉プロに続々と好ツモが押し寄せる。だが、それは全員にとってもそうだった。フリテンとはいえ萩原プロがリーチ、HIROプロは面前混一色聴牌をドラ北単騎で待ち、藤崎プロもテンパイに到達。
日吉プロもカン8pを鳴いてテンパイ。1回は無筋の2pを押して勝負したが、全員に危険な6sを掴んで撤退。HIROプロはメンホン・チートイ・ドラ・ドラのハネマン確定、ツモれば倍という恐ろしい手で待ち構えたが、惜しくも流局となった。
1回戦 東1局1本場
あっという間の4巡目に藤崎プロがリーチ。10巡目にHIROプロが追いかけるが、あっさり藤崎プロがツモ和了。1300・2600で一歩リード。
1回戦 東2局
前局に上がって親番を迎えた藤崎プロのツモが効きまくる。一方、日吉プロも地道に手を進めるが、ペン張を自模ったところで切った2mが萩原プロのダマに当たる。ただ1000点だ。
1回戦 東3局
こちらも上がって親番を迎えた萩原プロのターンが続く。2副露からのツモ和了で1000オール。
この局、藤崎プロが忍者的にピンフ6・9mヤミテンを構え、日吉プロの手に9mが浮き牌になっており危険な状態になっていが、振り込みを免れている。
1回戦 東3局1本場
攻めのターンが続く萩原プロに好配牌が降り注ぐ。2巡目でイーシャンテンとなり、時間はややかかったが13巡目でテンパイしてリーチ!
一方、日吉プロはリャンシャンテン。これでは勝負に行けないか。とはいえ、萩原プロも自模れず流局。萩原プロの一人聴牌。
1回戦 東3局2本場
惜しい流れが続くHIRO柴田プロが4巡目チートイ一向聴。萩原プロも好形の一向聴だが、藤崎プロが混一色・一通・赤・ドラ・ドラという高打点手で聴牌し、これを自模って3000・6000を決めて試合が動く。萩原プロが痛い親被り。
1回戦 東4局
やっと日吉プロの親番だ。そして好配牌。ドラ中が暗刻のリャンシャンテン。さわさわと日吉プロの周囲に風が吹き始めたか。
9巡目に赤5p引いて聴牌もダマで構える慎重派の日吉プロ。これを交わすのはムリだろう。HIROプロから1mが切られ「中・ドラ3・赤」の12000点。これはたまったものではない。
1回戦 東4局1本場
やはり日吉プロに風が吹き始めたようだ。好配牌から発の一鳴きをスルーするも、7巡目で自模り3暗刻聴牌。そしてリーチ。そして一発ツモだ。しかも高目発。「リーチ・一発・ツモ・三暗刻」だけで親マンだが、なんと「裏3」が暗刻の発に載ってしまった。親倍の8000オール!!
この風は強すぎる!
1回戦 東4局2本場
配牌も自摸も良い日吉プロ。10巡目聴牌で即リーチにいくがこの局は流局。
1回戦 東4局2本場
風が吹き荒れた。こう言ってはなんだが、ほとんど手なりのまま巨大なリードを築いてしまった日吉プロ。ここからどうするのか?
この東4局2本場に解説の白鳥プロが疑問を呈する。
藤崎プロの発ポンを警戒して5p勝負に行かずカンチャンの1mを外し。次いで、3・5mのカンチャンの3mも外してしまう。白鳥プロの「堅すぎぃ~!」の解説が印象的だ。危険牌を守っているうちに西対子も落としてしまう。勝負に行っていれば、既にカン2m聴牌していたはずだった。最終的に聴牌したが、ラスツモが2m。白鳥プロの風理論が見事に的中した形だ。この後の日吉プロの流れに一抹の不安が生じる。
1回戦 東4局3本場
日吉プロが10巡目にカン3pリーチに行くが上がれず流局。この局で萩原プロが4sのプッシュを見せた。この段階で萩原プロから日吉プロの背中ははるか遠くになりつつある。
1回戦 東4局4本場
萩原プロが一通を完成させリーチ。藤崎プロ、HIROプロが止めて上がれず流局も、萩原プロが日吉プロの連荘を止めた。
1回戦 南1局
日吉プロへの風はまだ吹いていた。
藤崎プロに好配牌が入り、やはり忍者らしく5・8s待ちをダマで聴牌。タン・ピン・赤・高目一盃口。
一方、日吉プロも6巡目にカン3sを自模って聴牌し即リー。これにHIROプロが放銃。今日はHIROプロは厄日だ。リーチ・ドラ・赤に裏が乗ってしまい8000点だが、供託3本に5本場で12500点の放銃。藤崎プロがリーチしなかったので、日吉プロに有利に働いたか?
日吉プロの持ち点は7万点を超えた。
1回戦 南2局
親番藤崎だが、日吉プロが発ポンから中もポンして3・6m待ち聴牌。発・中・赤・赤。待ちも良い。
一方、萩原プロが3mを掴むが何とか当たり回避。その後3mを3枚抱えながら一向聴まで持っていく。が、日吉プロが鬼のように6mを自模った。発・中・赤・赤、2000・4000。得点は79800点のワンサイドゲームに。
Youtubeのコメント欄には10万点行くんじゃないか?といったコメントが出始める。風はまだ吹いている。
1回戦 南3局
この試合を通じて赤牌が標準装備されている日吉プロ。この局も赤牌を内蔵。
ここまで勢いに任せて8万点を稼いだ日吉プロが今度は技を見せる。
一見不要と見られる4pを親の萩原プロの現物として手に残し変化の余地を残す5mを先に切る日吉プロ。その後萩原プロが10巡目に七対子をリーチ。待ちは7m。ここで狙い通り4pを打って一発を回避。12巡目にチーテン。先に切った5mが手にあったら、この反撃はできていたか分からなかった。そして自模ったのも日吉プロ。2山の4mをツモ。中・赤・赤の1000・2000。持ち点は84800点に。強すぎる。
1回戦 南4局
またも赤牌標準装備の日吉プロが7巡目に聴牌。これに対し、ドラ2枚を擁し、挽回を期してリーチを打ったHIROプロだったが宣言牌で日吉プロに放銃。リーチ・赤・赤7700点。日吉プロの持ち点はついに90000点を超えた。
1回戦 南4局1本場
萩原プロが平和・赤をダマで待ち、薄いながらも自模って700-1300。ようやく1試合目を終わらせた。
日吉辰哉 90100点
藤崎 智 30700点
萩原聖人 20900点
HIRO -11700点
日吉プロの得点はAKracing杯の1局目レコード。
だが、ここからが決勝進出に向けての本当の勝負となった。
2回戦 東1局
点数持越しゆえ、10万点差を追いかけるHIROプロ。心が折れそうな点数差だが、5巡目に聴牌して即リー。7山を一発で自模って「リーチ・一発・ツモ・一盃口・ドラ1」で2000・4000。藤崎プロが親被り。これは日吉プロに良い流れだ。
日吉 88.1
藤崎 26.7 → 61400点のリード
2回戦 東2局
ここまでほぼいいところがなかったと言って良い萩原プロが反撃ののろしを上げる。5巡目にHIROプロとともにリーチを入れた萩原プロがツモって「リーチ・ツモ・平和・赤・赤」で4000オール。
日吉 84.1
萩原 31.9 → 52200点のリード
2回戦 東2局1本場
日吉プロの周囲に風が全くなくなったか。8巡目にやっと1メンツ完成。ドラなし。HIROプロがリーチして日吉プロ降り。HIROプロが一人聴牌で親番へ。とはいえ、局が進む日吉プロには良い流れ。
日吉 83.1
萩原 30.9 → 52200点のリード
2回戦 東3局2本場
萩原プロが絶好の手組を見せ、HIROプロも好形からの聴牌、リーチを入れるが流局。
上がれなかったが、萩原プロの1・2・3のリーピン3色確定リーチは美しかった。萩原プロ、HIROプロの2人聴牌。
日吉 81.6
萩原 31.4 → 50200点のリード
2回戦 東3局3本場
萩原プロが地味ながら加点を続ける。5巡目で中のみだがリーチ。日吉プロは引き気味。勝負に行かざるを得ないHIROプロの放銃となり、リーチ・中2600点。
日吉 81.6
萩原 37.9 → 43700点のリード
2回戦 東4局
2試合目のラス親の日吉プロ。だが、3巡目で好形2向聴の萩原プロに対し、日吉プロ5巡目で2枚目のダブ東が切られるもこれを鳴かないという選択を採る。白鳥プロがギルティーと呼んだこの選択。さすがに消極的すぎるか。たくさんの貯蓄を抱えて人生逃げ切りを図るどこかの高齢者のようだ。
この局は萩原プロが10巡目で高目三色のリーピンをくみ上げて即リー。藤崎プロが4・5・6三色確定、赤・ドラ、跳満確定、ツモるか一枚裏が乗れば倍満のリーチに出るが成就せず流局。
日吉 80.1
萩原 38.4 → 41700点のリード
2回戦 南1局1本場
日吉プロ北が対子だが、出された北をやはり鳴かない。供託2本もあるが、とにかく守りを固めている。往年の亀田興毅のガードを見ているようだ。これは堅い。
しかし、一転ドラ6mをチー。この流れはどっちなんだ。行くのか、行かないのか?
その後南が鳴けて日吉プロ聴牌。ここでHIROプロが聴牌してリーチ。カン2p待ち。残り1枚だがリーチ・チャンタ・三色の高打点。
この2pを日吉プロが掴んでしまう。
振り込むのか?
止めた。
やはり軸足は守りにあった。
なんだかんだで2pに4pをくっつけて聴牌。最終自摸も危険牌5sを自模り、打2pあるかと思われたが5sツモ切り。ナイス!全員聴牌で点数動きなし。
2回戦 南1局2本場
日吉プロは12巡目でピンフ聴牌でダマで待つが、萩原プロの当たり牌を掴んで降り。1人ノーテン。供託は5本に。
日吉 77.1
萩原 39.4 → 37700点のリード
2回戦 南1局3本場
追う3者が厳しい条件に追い込まれているからか、進みの遅い第2試合目の南場。9巡目に萩原プロが聴牌し、勝負にでたHIROプロが放銃。ピンフ・赤・ドラ3900点は4800点。
やっと南2局に進む。
日吉 77.1
萩原 49.2 → 27900点のリード 決勝進出に黄色信号点滅
2回戦 南2局
追い上げ急の親番萩原プロに超好配牌が舞い降りる。既に両面・カンチャンの一向聴。3巡目に8sを自模って聴牌。とりあえずダマ。6巡目に両面・両面に組み替え、そして安目だが9sを自模ってリーチ。
手変わりを待つ選択もあったが、ここは親の連荘を優先だ。そして5mをしっかりツモって連荘。1300オール。
日吉 758
萩原 530 → 22800点のリード さらに点差縮小
2回戦 南2局1本場
流れは完全に萩原プロ。狙い通りドラ2pを引き入れて7巡目リーチ。カン6s待ちだが場況は良さそうだ。惜しくも自模れず流局も一人聴牌。
日吉 748
萩原 549 → 19900点のリード いよいよ2万点差を切った
2回戦 南2局2本場
この局は日吉プロも、目いっぱいに構えて上がりを目指したが、やはり萩原プロが一人聴牌となった。
萩原プロがノーテン罰符でどんどん差を詰める。
日吉 738
萩原 579 → 15900点のリード
2回戦 南2局3本場
まだ1回の親番を残すHIRO柴田プロがリーチから安目だが自模り、やっと萩原プロの親番が終了。リーチ・平和・ドラ1の1300・2600。萩原プロが親被りで少し日吉プロから遠ざかる。
ただ、この局で日吉プロも一向聴だったが、8mを引いてあっさり降りており、勝負に行かなかったところに一抹の不安。
日吉 72.2
萩原 55.2 → 16700点のリード
2回戦 南3局
HIROプロの最後の親番だが、日吉プロに好配牌が舞い降りる。中が暗刻で手がまとまっている。これは鳴いていけばいい。のではないか?300・500でも萩原プロのオーラスでのハネ自摸条件を消すことができる。
だが、HIROプロから4s出るがチーテン取らない。why?4・6mの6mを切っていく。これは索子の混一色を見ているのか?行くのか、いかないのか?
その後、4・7s、ペン7sの一向聴となるが、これはさすがに形が悪い。しかし、再び日吉プロに風が吹いてきたか?9巡目に超急所の7sを自力で引き4・7sの聴牌。ここはさすがにダマ。
しかし、萩原プロも諦めない。11巡目に一向聴に。そして3sを自模って聴牌。6・9s待ちのリーチだ。
日吉プロどうする?と、考える間もなく、萩原プロ6sを一発ツモ。
強い!
リーチ・一発・ツモ・赤・裏の2000・4000。
日吉 70.2
萩原 63.2 → 7000点のリード オーラスを残すのみ!
2回戦 南4局 オーラス
萩原プロはハネ自摸どころか、1300・2600がOKとなった。1000・2000は不可だが、マンガン出上がりもOK。
日吉プロは伏せることは可能。
親番のない藤崎プロ、HIROプロは上がらない、振り込まないだろうから、2人のタイマン勝負。とはいえ、萩原プロも2人からの振り込みやポン・チーは期待できない。
正直、ここまで来れば、日吉プロは下手に動かずとりあえず手作りだけしていくということでも良いかもしれない。それでも、勝利の可能性は間違いなく高い。
第2試合目に日吉プロは上がっていない。とことん守る作戦なのだから、このまま最後までこのスタイルを貫くだろう。
さて、注目の萩原プロの配牌。実質リャンシャンテンだが、やや苦しい。
一方日吉プロも実質リャンシャンテン。とはいえ、この局は止んでいた日吉プロの風が再度さわさわと吹き始めたか、5巡目に5mを引き入れて聴牌したのだ。
日吉プロは伏せればよいこの南4局。リーチをする必要はない。黙って、4・7mを待てばよいのだ。ここでリー棒を出せば差は瞬間的に6000点に縮小する。条件が緩和されて、1000-2000ツモ等で逆転してしまう。言うまでもないが、逆転したらその場で試合終了。ここはダマで良い。
ばしぃぃぃぃぃぃ!!!!
「リーチ」
リーチしてしまったよ。
ここまでダブ東も鳴かず、危険牌を守り続けていた男が最後の最後でついに勝負に行ってしまった。今日一番の打牌音だったと思う。気合が乗った。
一方、萩原プロの手も悪かった。悪かったなりに10巡目には聴牌に至った。
しかし、役がない。
ここはムリに上がらず、流局させて次局に持ち越す選択もある。赤牌を自模るまで待つ選択もある。
リーチをかけて一発・ツモ・裏にかける選択もあるが、それはそれでかなり難しい。日吉プロを直撃しても裏2枚のせるのは厳しすぎる。符ハネすれば裏1で1300・2600だが、ぎりぎり符ハネしない。厳しすぎる聴牌。また、リーチに出るとして打牌の7pが通るという保証もない。
萩原プロは悩みに悩んだ。この局面ではそうだろう。
結論は聴牌は取った。しかし、ダマ聴。
そして1巡回してリーチを宣言した。次局はない。一発・ツモ・裏1にかけた。
しかし、萩原プロのツモ番を見ることはなかった。
同巡の日吉プロが乾坤一擲のツモをさく裂させたのだ。
バシィィィイ!!!
「ツモ」
4mを自模った。リーチ・ツモ・平和・裏 2600オール。
勝負は決まった。
日吉 79.0
萩原 59.6 → 19400点のリード
南4局1本場は全員ノーテンで終わり、日吉プロの勝ち抜けが確定した。
試合後のインタビューで萩原プロはいつも通り、日吉プロをいじって笑いを取った。
日吉プロは特段の表情がなかった。どこか茫然としたような様子で「手が入ったのは、応援してくれた皆さまのおかげ」と全く面白みのない優等生発言だった。
ただ、最後の萩原プロのリーチが入った時、自分が大逆転されることを想像せざるを得なかったようだ。
風が吹きまくった1試合目の預金をがちがちに守って決勝進出するとしたら、超守備派としての日吉プロの一面を見たのかもしれないが、2試合目、ところどころ迷いながらも、最後の最後で勝負にいったところに、日ごろ見ることのできない、勝負師日吉辰哉の一面を見た。
白鳥プロ曰く、追うのは得意だが、守るのは不得手。なのだろうが、今回は苦手な展開を守り切った。
次の試合で伝説を作る可能性を誰も否定できない。
日本全国の日吉辰哉ファンが応援するAKracing杯決勝。
再び風は巻き起こるか?
完
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