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心震わせる試合~シンデレラファイト3決勝を見て


この一年、麻雀に対するモチベーションはほとんどなくなっていた。

Mリーグも見なくなり、関心も薄くなった。

ただ、シンデレラファイトだけは自分の中で特別な意味を持っていた。なので、スリアロチャンネルも購入し、解約していたABEMAも再契約しシンデレラファイトを見始めた。

しかし、再びモチベーションダウンに見舞われる。

思い入れのある選手が敗退していったこともあるが、note書きの私において自分の文書力のなさに嫌気もさしていた。

大会が始まった当初はある程度観戦記を書こうと思った。そして書いた。良くかけたものもある。しかし、力不足なものもある。

考えてみて、一つの理由に辿りつく。

読書量が足りてない

そりゃそうだ、ここ数年デジタルメディアに入り浸り、活字というものをほとんど読んでいないのだ。基本的な文書の流れや構成、展開などが自分の中から抜けてしまっているのだ。

大会途中ではあったが、付け焼き刃的に急きょいろんな文書を読みあさった。知人から本を借りたり、買ったり、ヤフオクでNumberのバックナンバーを大量に購入したて読んだ。

その結果どうなったか。

自分はネガティブな性格であるが、それが災いする。

色んな文書を読んで、さらに自信をなくしてしまう。

そして思う。

今シーズンは観戦記は書けそうにない


とはいえ、決勝までは見届けたいとも思った。

決勝4選手の中で、台風の目になりそうなのは鴨舞選手。

プロ3年目だが、ここまでストレートに勝って決勝まで勝ち上がってきた。が、裏を返せば、無名に近い鴨舞選手が有名選手をなぎ倒して勝ってきたとも言える。

私にとって思い入れのある選手も、鴨舞選手にやられてきた。

そんなこともあり、この段階で鴨舞選手は私にとって敵役となってしまっていた。




2024年8月23日 決勝ははじまった

2試合トータルで行われるうちの1試合目で鴨舞選手はトップとなり圧倒的なポイントを稼いで2戦目を迎えることとなった

このまま何事もなく鴨舞選手が優勝しそう

そう思った。

かなり縦長な点数状況になっており、2試合目は鴨舞選手はトップに25,000点差つけられなければ2着で良く、川上選手・みあ選手・酒寄選手はトップになった上で、並びだったり、状況によって相当の点数を稼ぐ必要があった。

しかし、私は鴨舞選手が勝利した1試合目のとある場面が少し気になっていた。

1試合目東1局

鴨舞選手は東発から幸先良く8巡目でテンパイするのだが、私には全ての待ち牌を理解するまでかなり時間がかかるような複雑な形だった。(結論は1・4m、3・6m)


鴨舞選手、なかなか9mを切らない。

「たぶん、待ちをチェックしているんだと思いますけどね」

「実際ね、これ決勝の けっこう緊張している、まだ3年目ですよね?プロ。ぐわぁ~っときますよ」

と松本プロがコメント

「槓子含みの10枚連続形はけっこうややこしいですからね」

と綱川プロもコメント

鴨舞選手は9mを切ってダマ聴にとった。打った後に念を入れてチェックすることもあったか。

しかし、鴨舞選手の打牌直後に下家の川上選手から6mが打たれてしまい、ロンの声が出せなかった。鴨舞選手もすぐに気づいてはいたか、少し表情に変化もあったように思った。

負の連鎖は続く。同じ巡目でさらに下家のみあ選手が3sをつかみ川上選手への12000点放銃となってしまう。

この時鴨舞選手はどんな心境だったのだろうか。

鴨舞選手が6mを当たっておけば、みあ選手は12000点の放銃をすることはなかったとも言える。

経験の浅さが出てしまった形になるが、私は鴨舞選手を責められない。大きな大会の放送対局、しかも決勝。チョンボが許される場ではないのだ。

これも麻雀というゲームの難しさ。


大会を通じてここまで鴨葱パフォーマンスを含めてイケイケで勝ち進んでいた鴨舞選手だが、2試合目はどこか戸惑いを感じた。気のせいかとは思うが、遠慮気味に試合を進めているような感さえ受けた。

これまでチャレンジャーの立場だったのが、守る立場に切り替わったとうこともあったかもしれない。

もしくは1試合目東発の打牌のように、自分の麻雀が打てていないことがどこかに引っかかっているのかもしれない。

これまでの圧倒的な存在感がすっかり薄くなったようにも感じた。


大丈夫だろうか

誰だって、振り返りたくない過去はある。

誰だってそうだ。

鴨舞選手。いいんだ。

好きに打っていいんだ。


私にとって敵役だったはずの鴨舞選手はいつしか私の応援の対象になっていた。



南場に入った。鴨舞選手はまったく上がれず、テンパイもできず、点棒は減る一方となっていた。

南2局1本場。みあ選手が優勝を引き寄せる1300オールを上がった時だ。

まったくの気のせいかもしれない。だけど、鴨舞選手の表情に少し変化があったように感じた。

とはいえ、鴨舞選手の点数は引き続き減り続けた。

南3局。酒寄選手のリーチに混一進行をいったん迂回し、そして降りた。そして点数は箱を割った。

そしてついにオーラスとなった。

川上選手は何でも良いので上がれば優勝。流局でも優勝。みあ選手も3000・6000で逆転優勝。

気がつけば鴨舞選手は400点持ちの4着目で、ほぼ優勝の目が消えかけていた。

しかし、私の目には鴨舞選手から悲壮感のようなものは感じられなかった。かといって、がむしゃらに仕掛けて上がりを取るような麻雀も打たなかった。

あえて言うなら、いつも通り以上にいつも通りだった。

南4局5本場

中ぶくれではあるが中張牌で使えそうな4sをツモった場面。既に5・8pが薄いため、形からも打1mで2mの雀当固定は十分に考えられたが、鴨舞選手はこの1mを手元に残した。

ペン3m悪くないと判断したか。

その読みは当たり、ペン3mを引き入れて手を進める。その後テンパイし流局となったが、テンパイ時にリーチをかけず、リー棒による点差縮小を防ぐファインプレーを見せる。何にせよ、テンパイできて命がつながった。

リズムを取り戻した鴨舞選手は6本場で3000・6000を上がって世界を一変させる。

2着に浮上し、優勝に大きく近づいた。

しかし、伏せられない鴨舞選手に再び守りの恐怖が襲いかかる。本場が積まれすぎて、川上選手から1,000点でも直撃されればみあ選手に逆転されるため、一枚の緩みも許されない状況となる。

明らかに鴨舞選手の表情がきつそうだ。長時間対局による極限の状態でもあったろう。

負けるな

今度こそ、負けるな

がんばれ

がんばれ鴨舞

・・・・


夜7時から始まった戦いは既に深夜0時を迎えようとしていた。

鴨舞選手は薄氷を踏むような状況の中、最後まで集中力を切らさず打ち続けた。

そんな姿を麻雀の神様は見ていたのだろう

鴨舞選手は3代目シンデレラの称号を手にした。


優勝した鴨舞選手の表情に笑顔はなかった。それどころか、今にもその場に倒れそうだ。

相当な疲労困憊。

人間の体は脳を回転させることに相当の体力を要すると言われている。脳だけではない。五感もフルに使って5時間近い試合を戦い続けた小柄な鴨舞選手にどの程度エネルギーが残っていたのだろうか。

長時間ライバル選手と競り合い、上り坂や下り坂を走りきって命からがらゴールラインまで辿り着き、そして倒れ込む長距離選手のようでもあった。



鴨舞選手が倒した相手は、間違いなく強かった。

川上選手の南4局3本場「違う」と頭を振って、自ら決めに行った4s。圧倒的実力が認められながらも、まだ自分と戦う姿勢を見せた一打だった。

最後に上がり牌をツモりながらも、鴨舞選手の優勝を前に河に置いて引き際の美しさを見せたその姿。

8mをツモって捨てるまでの数秒のためらいが忘れられない。




どんな状況でも諦めず打開してきたのはみあ選手。上手い、強い、それだけではなかった。死闘を尽くして最後の最後で鴨舞選手に5mを引き負けたときの心からの悔しそうな姿。

彼女のその姿は美しかった。そして、麻雀にかける強い思い。試合後に見せた涙。

私はみあ選手を多くは知らなかった。でも、どんな状況に追い込まれても打開しようとするその姿。一見気づきづらい牌をさらっと選べる思考力。私はそんなみあ選手に強さ、そして美しさを感じた。


そして、私にとってキャラクターとしてのイメージしかなかった酒寄選手。

ダブル役満条件まで追い込まれながら、それでもその条件を満たすために鴨舞選手に連荘を続けさせようと4pを3連打して「4pが薄い」という状況を伝えようとしたその姿。

気の遠くなるような点差に離されながらも、自分の条件をしっかり確認し、可能性を求め、そして場を壊さないように努めるその姿。

いつもはキャラクターを押し出す酒寄選手、しかし、しっかりとした根拠を元に緻密な麻雀を打ち、2試合目の序盤では優勝の可能性も感じさせてくれた。キャラクターだけではない。本当に内容は素晴らしかった。



私は思う。

納得できない打牌はあったのかもしれないし、1回も上がれずに大差4着でオーラスを迎えるのは悲劇的でもある。

しかし、鴨舞選手はそんな絶望的な状況でもどこか楽観的な部分があったのかもしれない。状況的には最悪だったが、心のどこかで自分が勝つ未来をしっかり見据えていたようにも見えた。

自分の麻雀を打つ

南2局の表情はその覚悟を決めた人の顔だったのかもしれない。




私は今日、決勝をもう一度見直し、感動し、その熱量をぶつけ、何だかんだこの文書を書いてしまった。

感動の力は偉大だ。

そして、この観戦記的な文書をいったんの区切りにして、しばらく文書について勉強をしようかと思う。

どんなに目標が遠いとしても、人が前進するときは一歩づつしか踏み出せない。時には一歩後退することだって必要となる。肝心なのは目標を見失わないこと。

試合を通じてそんなことを感じさせられた。


今はたいした文書は書けないのかもしれない。

しかし、その先に良い文書が書ける未来があるのかもしれない。

そう楽観的に考えてみるのも悪くない。



鴨舞選手 優勝本当におめでとう。

そして皆さん、本当に素晴らしい試合、ありがとうございました。

次の戦いを楽しみにしています。



2024.9.1  一部追記および写真追加

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のりべん
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