積み重ね 【のり35】
今日からいよいよMリーグが開幕する。一つ自分でも分からないのが、私自身のドリブンズへのスタンスだ。
雷電とフェニックスはFINALまでいってほしい。しかし、フラットに見て、私はドリブンズが優勝するのではないかとみている。
素人の勘である。でも、過去5年間の蓄積が今年花を開くような気がしてならない。
その蓄積とは何なのか。私はこの1局が思いつく。
以下の観戦記録は私がnoteをはじめた当初に書いたのを編集したもので、村上淳選手の2021-2022シーズン80日目の試合。このシーズンはドリブンズが1200ptを負けた雷電に次いで負けを重ねてレギュラーシーズンを敗退した年。村上選手も負けが続いた年だった。
南2局南場の親番を迎えた村上プロの持ち点は7200点でラス目。挽回のためには親番で加点し続けるしかない。
供託はたくさんある。まずは早めに上がって供託を獲りたい。なのに、親番の村上プロは声を出すことを禁じられた修行僧のように、ずっと黙ったまま手を進めた。
要牌の3・6pを鳴かなかった。対子で持っていた白も鳴かなかった。そのうち、白は手控えられ、3・6pも村上プロから見て山になくなった。先に萩原プロにテンパイが入り、やむなく白の対子を落として3段目を前にリャンシャンテンになっていた。
手替わりに必要な5mは既に自分の河にあった。自身の手を育てるべく、細々と手をつないできた村上プロ。でも、さすがにもうダメだ。私はそう思った。
しかし、残り4巡。村上プロはその右手でもう一度5mを引いてきた。
・・
耐え続けた男が聴牌にたどり着いた。本当によくここまでたどり着いた。
リーチ・・
その声はいつもの元気のあるの宣言ではなかった。
全てをやりきった
それが私には伝わってきた。こんなにガマンを重ねたリーチを私は見たことがない。
この局だけのガマンではない。今季のガマン全て載せた渾身のリーチに思える。
残り巡は少ない。あって数巡。ただ、待ちの2・5sは山にまだある。
自模れば6000オールだ。
・・・
実況の渋川プロが叫んだ。
村上プロの一発目のツモ番。
その手に2sが握られていた。
ツモ
村上プロが小さく発声した。
リーチ・一発・ツモ・ピンフ・タンヤオ・赤・赤
6000オール。裏が1枚のれば親の倍満。
裏ドラをめくる前に村上プロが一瞬頭を下げる。
今季の全ての不運が、伏線となる。
裏ドラには2mが眠っていた。
自身の手には1枚。1枚だがしっかりそこにあった。
8000オール
村上プロは両の手を膝の上に置き、その牌姿を確認した。盟友多井プロも少し身を引いてその上がりを見ていた。
供託が多いのに仕掛けを入れず、萩原プロのテンパイにも回り、要牌がなくなってからは形を変えた。いくつかの分岐点を乗り越えて辿り着いたリーチ。
自模れた。一発がついた。裏も乗った。それも大きい。だけど、テンパイまでの過程が苦難の連続だった。
麻雀という競技は、最善手を打てば勝てるというゲームではない。4人中の3人は上がれない。それでも、自身が考える最善の手を積み重ねない限り、チャンスは巡ってこない。それを見せてくれたのが村上選手だった。
その試合は寿人選手が124秒の長考となり、話題をさらった。ドリブンズファン以外、村上プロの倍マン自摸を憶えている人は少ないかもしれない。でも確かにそこにはあった。村上プロの積み上げた何かが。
打牌はそこで終わるものなのか。
ドリブンズに関してはそれが積み重ねされているような気がする。チームと自身の結果が出ない中で村上選手は黙々と最善手を追求し続けた。その積み重ねは、きっと新チームにも息づいている。私はそう思う。
それは丸山選手に関しても同じことで、彼女が戦った足跡はきっと誰かが引き継ぐ。
渡辺選手と浅見選手を加えて、選手層の幅が広がった今季。今までの積み重ねが実を結ぶのではないか。私はそんな気がする。
完
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