愛知県稲沢市の小学校統廃合問題 その2
保護者や地域住民と共通理解を図りながら、学校統合の適否を考えて
平成27年1月に国(文部科学省)が出した「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する 手引」のP3(2)学校規模の適正化に関する基本的な考え方には「各市町村においては、これからの時代に求められる教育内容や指導方法の改善の方向性も十分勘案しつつ、現在の学級数や児童生徒数の下で、 具体的にどのような教育上の課題があるかについて総合的な観点から分析を行い、保護者や地域住民と共通理解を図りながら、学校統合の適否について考える必要があります。」と記載されています。
前回の投稿で詳しく書いたように、稲沢市(教育委員会)は、令和5年度に開催された全6回の学校施設整備基本計画策定委員会をもって市内小学校23校のうち14校(清水小学校、片原一色小、国分小、坂田小、高御堂小、祖父江小、山崎小、領内小、丸甲小、牧川小、長岡小、法立小、六輪小、三宅小)を廃校とする計画案を決定する予定でしたが、令和6年稲沢市教育委員会第3回定例会で継続審議とすることとなりました。※当初「決定しました」と記載していましたが、会議録を確認し、修正しました(R6.6.5)。
その計画案の策定過程には「保護者や地域住民と共通理解を図」る手順がすっぽりと抜け落ちています。パブリックコメントに寄せられた意見にも耳を貸さず、共通理解を図る姿勢はまったく見られません。とにかく市議会の承認を得さえすればよいと考えているのではないでしょうか。
このような市民の声に耳を貸そうとしない行政の強硬的な進め方は、廃校となる地域の市民の反発を生んでしまうのではないでしょうか。
いったん計画は白紙にして、廃校とする各地域の保護者や地域住民との共通理解を図る取り組みから始めるべきです。保護者向けのアプリを活用すればアンケートを取ることは容易です。
小学校の廃校はその地域の将来に大きく影響する重要な決定です。拙速に行政が決めてしまうのではなく、その地域において深く議論され、納得の上で行われることを願います。
(参考)他市の事例
栃木県日光市では、市(教育委員会)が学校の統廃合などの検討を始める基準を設けています。例えば「複式学級の編成が見込まれる場合」は「学校統廃合等の適否について検討を開始する。」、「学年で単学級となることが見込まれる場合」は「学校統廃合等の必要性や時期について検討を開始し、将来の児童・生徒数の動向等を注視していく。」といったように、具体的に検討する方法や手順を定め公表しています。
※複式学級とは二つ以上の学年の児童・生徒を一つに編成した学級のこと
富山県富山市では、再編対象となった校区別にPTAや地域住民で再編の方向性に関する協議会を立ち上げ、その後、統合の可否を判断する協議会を立ち上げ、統合することとなった場合、さらに具体的に決めていく協議会を立ち上げる形としています。