未来の子ども達から学校を奪うな!!愛知県稲沢市の小学校統廃合問題 その3
稲沢市教育委員会による強硬的な計画承認
令和6年8月の教育委員会定例会で稲沢市学校施設整備基本計画(以下「計画」とします)が承認されました。
令和6年1月に行われたパブリックコメントでは異例の424件の意見が寄せられ、本来3月に承認予定だったものが、継続審議となっていました。
8月の定例会でも、ある委員は「こんなことを通したら、私は祖父江の子ども たちに顔向けできません、外を歩けません。」と発言されており、半ば強硬的に承認されたことが、この計画が欠陥だらけで、破綻したものであることを表していいるように思います。
欠陥だらけで破綻した無責任な計画
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現在23校ある小学校のうち14校を廃校とし、16校に統合再編する計画となっています。廃止される大半の小学校は、市中心部ではなく約20年前に合併された旧祖父江町や旧平和町の小学校です(旧祖父江町6校→1校もしくは2校、旧平和町3校→1校)。
計画のスケジュールを見ると、祖父江小など4校では、2024年~2028年に長寿命化工事を行い、2029年~2038年に学校の廃止、新設を行うことになっています。計画には長寿命化工事には、1校あたり2億5千万円と積算されていますが(実際はもっとかかるのでは?)、仮に2028年に長寿命化工事を行い2029年に新設した学校に移るとしたら、たった1年のために2億5千万円かけることになり、経済合理性が破綻しています。
そもそも1校に集約なのか2校に集約なのかが決まっていなければ検討のしようがないため、無責任極まりない計画だと思います(教育委員会の本音としては、できれば1校にしたいけど、計画通りに児童の数が減らなかったら標準規模24学級を超えてしまうため、2校になっちゃうかもってところでしょうか)。
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計画では「新たに学校を建築する場合は、原則として既存の学校敷地又は市有地を第一候補地」とし、「借地ゼロを目指」すとしているため、旧祖父江町の6校を廃止して、1校とする場合は、既存6校のうち、唯一借地率0%の長岡小学校に新たな校舎を建設することになると思われます。
通学距離が実際の距離で2.5km以上でスクールバスによる支援としているため、上の地図の黒円の外が対象となり、600人以上の児童がスクールバスを利用することになると思われます。
保護者アンケートの回答では許容できる通学時間は30分未満との回答が90%を占めており、それを踏まえるとバス1台に乗る人数は多くとも20人程度と考えると、30台のバスを同時に走らせ、30台のバスが駐車できる乗降スペースを学校に設ける必要がありますがこのようなことが実現可能なのでしょうか。
パブリックコメントでも通学に関する意見が52件寄せられていましたが、市教育委員会からそれに対する回答はたった4件にまとめられ、要約すると「(仮称)地域協議会等で検討していく」という無責任なものでした。
計画では、地域のPTAや地域住民等からなる(仮称)地域協議会で、再編・統合のスケジュールやスクールバス、さらには跡地利用についてまで協議・合意形成を図るとしており、前々回のその1で言及した「学校施設整備基本計画策定委員会」のように、市教育委員会が地域と協議したことの建前として利用するものになるのではないかと危惧すると同時に、この計画において、本来検討すべきことがなされていない、無責任な計画になっていると強く感じさせるものです。
学校削減が目的化された無責任な計画
先に述べたのは、この計画が破綻していると感じたことの一部分であり、424件ものパブリックコメントも、私と同じようにこの計画がおかしいと感じた人が多いことの表れです。
破綻した計画にもかかわらず、学校施設整備基本計画策定委員会と市教育委員会の承認を経て成立してしまっているのは、学校を減らして行政コストを削減するという市教育委員会の最大の目的が達成されるものであるからと考えます。
この計画の中身を簡潔に要約すると、「取り急ぎ中心部以外の小学校を廃校にして行政コストを削減する、細かいことは市で決めるから黙ってろ」といったところでしょうか。
周辺部が中心部から搾取される構図は、16世紀における大航海時代の帝国と植民地の関係を思わせます。
実際に、旧平和町役場があった地区は、農地に工場や倉庫が次々と建設され、大型車両が往来する中、中学生の登校やこども園の送迎が行われている状況です。
地域の声を届けることが必要
少なくとも私は、このような行政コスト削減を目的とし、地域住民の声を無視した無責任な計画で未来の子ども達の学校が奪われることが許せません。私と同じように思われる市民の方も多いのではないかと思いますし、コスト削減を目的とし、地域コミュニティを破壊する計画に対しては徹底して反対の意見を示すことが重要ではないかと思います。
意見を示す方法として、今回廃止の対象となる小学校のPTAでテトル(情報配信アプリ)を活用するなどして、この計画に対する保護者の声を集めるといったことができるとよいのではないかと考えます。
より多くの地域の人々が納得できる学校整備がなされることを望みます。