
ベトナム法務 | 登記していない分野のビジネスをやったら、どんな罰則があるのか
ベトナムの投資ライセンスIRC(Investment Registration Certificate)。
ベトナムの標準産業分類に沿って取得し、その後、企業登録証明書ERC(Enterprise Registration Certificate)で法人登記します。
既に活動している現地法人が業種を追加するときには、企業登録証明書を先に手続きするケースもあります。
「投資ライセンス・企業登録証明書にない業種はやってはいけない」
これはベトナムにいる皆さんだけではなくベトナムを検討したことのある皆さんであれば知っていることですが、もし、万が一、投資ライセンス・企業登録証明書にない業種をやった場合、どのような罰則が待ち受けているのでしょうか。
そもそも聞きにくいテーマですし、「いまさら聞けない」というテーマでもあります。
法令による規定
投資法の観点からは「投資ライセンス上の内容と異なる活動をする場合に投資ライセンス調整手続きをしなかったケース」として、7,000万ドン~1億ドン(1円160ドンで計算すると約43万円~約62万円)の罰則金が定められています。これは2022年からの規定で、2021年までは2,000万ドン~3,000万ドンでした。
企業法の観点からは「10日以内に調整手続きをしなかったケース」として、遅延日数に応じた最大3,000万ドン(1円160ドンで計算すると約12万円~約18万円)の罰則金が定められています。これは2022年からの規定で、2021年までは最大1,500万ドンでした。
実際に罰則を受けた場合
内容や地域によりますが、企業名、罰則を受けた事実が詳しく公表される場合があります。
投資法による罰則、企業法による罰則、双方ともにその営業を停止し、すぐに投資ライセンス、企業登録証明書の調整手続きをしなければなりません。
未登録業種を運営するのに出費した費用は、法人税法上も付加価値税法上も税務当局から否認されることでしょう。
罰則金が課されるプロセス
当局が事実を掴んだ後、査察チームが組まれ、聞き取り調査~現場調査~罰則決定~不服申立或いは罰則対応~投資ライセンス・企業登録証明書の調整手続きと進みます。
私も全てのケースを知っているわけではありませんが、ハノイ市・ホーチミン市・ダナン市などで見たケースでは、聞き取り調査は、当局に呼ばれる事情聴取みたいな手続きです。投資法や企業法に関する罰則のみならず、行政罰則と言われるもの全て凡そ同じです。
聞き取り調査は、「いついつにどこどこに来るように」という通知書が発行され(大抵は1日前とか2日前のショートノーティスですが)、そこに出向いて議事録に双方で署名し合うプロセスです。
担当者によっては、その前に電話で主要な内容は話し、当日は準備した議事録に双方でさっと署名をして終わり、というケースもあります。
一方で、若いスタッフ一人で行くと担当者から強めに押し込まれ、議事録に署名する前に上司に確認する「隙」が与えられずに署名してしまうということもあります。
一般的な企業のスタッフは場慣れしていませんし、この「人治」に逆らうのも難しいので、最低限2人で行かせ、できれば録音を回しておいた方がよいでしょう(「こういったケースで何も言わず録音することはコンプライアンス的にどうなのか」という論点については割愛します)。
なお、罰則金の決定には、その金額によって当局側の決裁権者が違います。
今日はこんなところにしますが、いまさら聞けないシリーズ、たくさんありそうです。
資本金をテーマにすると、
資本金を振り込んでいないまま時が経ってしまった。
以前の経営者(出資者)が資本金を入金後すぐに引き出してそのままの状態である。
ドルで振り込んだ資本金(投資資本)とドンで表記されている資本金(定款資本)に誤差がある。
など・・・また時間を見つけて書いていきます。