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第433回、ドローン開発秘話にみる禅問答

「あなたはこの世に、UFOが存在すると思いますか?」

一人の記者が発した問いかけに、その科学者は即答をした。
「君のいうUFOと言うのは、つまる所、宇宙人の乗り物としてのあれの事を言っているのかね?だとしたら答えは明確だ。ノーとしか言いようがない。中には宇宙人はいる。UFOは存在するのだと真面目に考えている者達もいるようだが、そんなのは科学者の私から言わせて貰えれば、科学的根拠のない妄信でしかない。ナンセンスも甚だしい」

その科学者は、鼻息も荒げに言葉をまくしたてた。

「UFOの存在を信じている人の中には、実際に自分でUFOを作ろうした者もいるようだが、全く持ってバカげた話である。UFOなんて存在しないのに、それを作ろうとするなんて。
実際出来上がったそれは、見た目が円盤型なだけで、人が乗る事も出来ない手の平に乗る程度の、小さな物だそうじゃないか。
彼らの言う宇宙人と言うのは、妖精のような、小さな生物だったのかな?
そんな小さな物で、広大な宇宙を行き来する事が、出来るのだとでも?」

科学者は両手を上に向けると、おどけた様な仕草で、小首を傾かせた。
何かの洋画番組で見たのであろうその仕草を、その科学者は自分でも一度、してみたかったのだろう。

「何でもそのUFOは、ドローンと言うのだそうが、私に言わせれば、そんな物は子供のオモチャでしかない。リモコンを使って嬉しそうに空を飛ばしてそれが一体、何になると言うのだ?

いいかい、科学というのはもっと崇高な物なのだよ。頭のいい限られた者がこの世の真理を求めて、正しい事を追究する行為なのだ。
UFOなんてあり得ない物を信じて研究をする事は、科学とは言わないのだ。
正しくない間違えた事の追求なんて、科学を愚弄しているし、愚かな人間の科学に対する背徳行為なのだっ!」

その科学者は、さらに鼻息を荒げて、語尾も強めていった。

その記者は、表情一つ変えずに、淡々と科学者に質問を続けた。

「世界の真理を求める研究をして、あなたはそれで、人類の利益になる事を何か発見したのですか?」

「お前達一般人は、すぐに損得勘定で物事を図ろうとする。
いいかっ科学とは、損得で測れる様な、俗物的な物ではないのだよっ!!
全く持って不愉快だ。もう出て行ってくれっ」

科学者を怒らせてしまったその記者会見は、そこで中断をされた。

世間にまだ発表されたばかりだった、ドローンと呼ばれる小型の浮遊機械はその後開発が進み、人間の様々な生活に、活用をされる事となっていった。

科学とは、この世の真理を追究する行為であるが、真理には辿り着かない、間違えた理論を追求する事も、全く無意味な事と言う訳ではないのである。


※話の意図を伝える為に、ドローンの話を持ち出していますが、ドローンの開発経緯が、UFOの試作品であるのかどうかは、定かではありません。


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