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コンビニ人間を読んだら、バイト時代を思い出して懐かしくなった話

コンビニエンスストアを利用したことのない人間は、現代にいるのだろうか?

誰もが利用したことのあるコンビニを物語の舞台にしているからこそ、1文1文がすんなりと頭に入ってきて親近感がわく。

かく言う自分も、コンビニで夜勤のアルバイトをしていた時期があった。実際にコンビニで働いていた自分の経験を交えて、コンビニ人間の感想文を書いてみようと思う。

コンビニ人間で重要な2人の人物

大学生、バンドをやっている男の子、フリーター、主婦、夜学の高校生、色々な人が、同じ制服を着て、均一な「店員」という生き物に作り直されていくのが面白かった。

コンビニ人間

コンビニ人間には重要人物が2人でてくる。

1人目、古倉恵子

1人目は、主人公の古倉恵子。幼少期から普通の人と考え方が違うといわれ生きてきた。

小さい頃、公園で小鳥が死んでいたことがある。周りの子供たちが、かわいそうだからお墓を作って埋めてあげようとしている中、古倉は小鳥を捕まえて「お父さん、焼き鳥好きだったから、今日、これ焼いて食べよう」と発言する。

もちろん、周りの大人はぎょっとして「小鳥さんかわいそうなんだから、お花を添えて埋めてあげようね」と、花をぶちぶちと引き抜き殺して、お供えしてあげる。

これって、どっちが気持ち悪いんですかね。

その後、古倉は、自分が普通ではない人間と自覚する。コンビニで働き、コンビニの一部になることで、普通の人間を偽って生きていく。

2人目、白羽

2人目は、白羽。古倉が働いているコンビニに婚活目的で、アルバイトとして入ってくる。

白羽は、古倉と違い、コンビニ人間になろうとせず、横柄な態度やわけわからない言い訳を繰り返し、コンビニを首になる。

コンビニを首になった後、二人の利害が一致して、同棲することになる。そのあとの、普通側の人間たちの発言が、いやおうに気持ちわるい。

同棲したことが原因で、古倉はコンビニを辞めるのだが、その後どうなるのだろうか。

コンビニ人間の何がいいって判読性の高さ

コンビニ人間は、2016年7月27日に刊行された小説であり、第155回の芥川賞受賞作でもある。

コンビニ人間という小説の魅力は数えきれないほどあると思うが、この読書感想文では、あえて「読みやすさ」に着目したい。

ページ数も200P以下であり、文章に小難しい日本語はでてこない。反対に、作中には「パック飲料」だとか「ホットスナック」だとか、店長が気合を入れて100個発注した「マンゴーチョコレートのパン」みたいな、コンビニに行く人間なら1度は目にするであろう言葉であふれている。

え、まって。マンゴーチョコレートのパン?? 何それ? くそまずそう。

マンゴーとチョコレートのパンケーキとかなら、悩みに悩んだ末に、「少しほかのパンケーキに比べたら値段が安いから」という理由で頼みそう。

しかし! メロンパンとか明太ポテトサラダロールとかが「私を買って! もうすぐ廃棄されちゃうの!」と訴えかけてくる群雄割拠のコンビニパンコーナーで、マンゴーチョコレートのパンが売れるわけないだろ!!

マンゴーチョコレートのパンとかいうふざけたパンが本当にコンビニで売られていたことがあるのか、検索して調べてみた。

結論、そんなものはない! 各コンビニエンスストアのコンビニパン開発部(あるのかは知らない)で働く優秀な社員さんが、マンゴーチョコレートのパンなんて、ベロベロによってオールしちゃったテンションにならない限り、販売しないのは明白であったか。

だいぶ脱線したが、つまり1時間くらいでサッと読めるから、これから小説を読みたいと考えている人は、ぜひ「コンビニ人間」を手に取ってほしい。

おかき男

コンビニ人間では、夜勤のコンビニが描写されることはない。昼間のコンビニは、人が行きかいヒールの音やカゴに飲み物を入れる音など、「コンビニの音」であふれているらしい。

自分は、人通りの少ないコンビニで夜勤のアルバイトをしていた。夜のコンビニは、とても静かで、歩く音や買い物をする客の声が、昼間と打って変わって、異音のようにひどく目立つ。

でも、そんな静かなコンビニが好きだった。ゆっくりと時間が流れる感覚の中、納品された雑誌やお菓子を並べ、常連のお客さんと少し会話する。

1人だけ、どうも印象に残って忘れられないお客さんがいた。

あれは、アルバイトを始めたばかりの自分が、おにぎり界のトップに君臨し続けている「ツナマヨネーズおにぎり」様を恐ろしいことに、おにぎりコーナーの端っっこの方に並べていたときだったと思う。

60代くらいの男性が、業務用おかきを2つ持ってレジに並んでいた。

「いらっしゃいませ~」と、いつものように発声して、会計を進めていると、男性が「これ、食ったことあるか?」と聞いてきた。

返事を待たずに、「これうまいんだあ」と、執拗におすすめしてくる。

「食べてみる? やばいぞ」と、一袋もらえる流れなんじゃないかと思っていると、これはやべえとブツブツいいながら、2袋しっかり持って帰っていった。

ものすごいインパクトで、無性に業務用おかきを食べたくなった。知らない怪しい人からおすすめされたものでも、強烈なインパクトがあれば伝わるらしい。

コンビニの雰囲気と文学を楽しめる初心者向きの本

コンビニ人間の話をほとんどしていないが、問題はない。コンビニ人間の良さは、本を読んでこなかった人でも挫折することなく読み終えられる「判読性」だからだ。

とにかく、以下のような本を探している人はコンビニ人間を購入すべきだ。

  • 電車内でスラスラと読める持ち運びやすい本がほしい

  • 幼い頃以来、本を読んでいない人でも読みやすい本がほしい

  • コンビニが大好き

余談だが、コンビニパンにはマンゴーチョコレートのパンが売られていないが、「コトラボ」さんでマンゴーとチョコレートのパンを作る講座が開講されていた。

完成品がこちら!

出典:コトラボ

すごい、おいしそうじゃあないか。


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