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私の気もちと猫の気もち(7)          人間の子育てと同じ事!?

 

 家が1番落ち着くけど


 私と娘達は、動物病院とホームセンターから、自宅に着いた途端、張り詰めた気もちがピンと切れた感じになった。
 そりゃあ、ラジオ体操を終えた時間に、赤ちゃん猫を保護してから、これまで踏み入れた事がない場所ばかりに行ったのだ。しかも、3匹の赤ちゃん猫が入った段ボール箱を、ずっと抱えながらだ。
 仮にも猫とは言っても、3つの新しい命なので、段ボール箱を持つ力にも重さ以上の力が必要なのだ。

 時刻はもう12時を過ぎていた。
自宅に戻って、私達人間も、飲まず食わずであったことに気付く。
 冷蔵庫の中から、冷えた麦茶を急いで飲み干し、3人で期限切れ間近の菓子パンにかじりついた。

 「さて、何からしょうか?」と、娘達と話し合う。

動物病院から貰ったカルテとパンフレット


  何から行動する?

  

 
 まず、餌とミルクをあげる事、トイレの準備をする事になった。
 これは、人の赤ちゃんと同じで、栄養を摂ることと、排泄の準備をすることは、通じるものがある。初めての育児をした時、大泣き虫だった長女の対応に悩んでいた私に、義母が言った「昔から赤ちゃんは、飲んで、ウンチやオシッコをして、眠れば、それで一人前と言われたのよ。大丈夫。」と、励ましてくれた言葉を思い出す。

 ミルク缶に付いている説明書を読みながら、久し振りにケトルでお湯を沸かし、赤ちゃん猫用のミルクを作った。
 それから、たった30g程度しか入ってない、赤ちゃん猫用の、いわゆるカリカリと言われてる餌を、刺身用に醤油を垂らす小さな小皿に少しだけ入れた。このひと袋で1週間足りると、獣医さんに言われてたので、ほんの少しで良いんだろう。

 まず、フローリングの床に新聞紙を敷いて、その上に餌の入った小皿を置く。
 そして、段ボール箱から、恐る恐る3匹の赤ちゃん猫を抱き上げ、小皿の前にそっと降ろした。
 赤ちゃん猫は、ぐにゃぐにゃとしてて、今にも潰れそうで、抱き加減がむずかしい。

 しかし、赤ちゃん猫達は、餌の入った小皿に、必死に顔を突っ込んで、舌を上手に使いながらカリカリをたべている。
 餌を食べているのを、娘達に見守って貰ってる間に、私はミルクを作った。
 動物病院で購入した、50CCサイズの、小さな哺乳瓶。ゴム製の吸い口も、凄く細くて小さい。取りあえず、ミルクは、10CCくらい作ってみた。
 突然3匹の赤ちゃん猫達は、ミルクの匂いの湯気に気付いたのか、餌を食べるのを止めて、
ミルクを冷ましている私の所に寄ってきて、「ミーミー」と、泣いた。
 不思議と、赤ちゃんだからなのか、やっぱりミルクが好きなのかなぁなんて思いながら、哺乳瓶を赤ちゃん猫達の口元に近付けた。
 しかし、赤ちゃん猫達の、ミルクの欲しがり方といったら、半端ない。3匹とも、前足を上げ2足歩行状態て、まるで踊りを踊ってるかの様に、ちょうだい!ちょうだい!と、哺乳瓶に集まってくる。

 取りあえず、1番大きなオス猫の勢いか強かったので、哺乳瓶の吸い口を近づけた。
 オス猫は、哺乳瓶を両前足の肉球でがっしり掴み、仁王立ち状態で、勢い良くミルクを飲んだ。
 普段、赤ちゃん猫ってどんなポーズで、お母さん猫の母乳を飲んでするだろう?見たことがない。まぁそれほど、お腹が空いていたんだろう。
こんな、飲ませ方で良いのか分からないけど、まぁ飲めてるに越したことはない。ミルクを飲んでいる赤ちゃん猫の目つきの面白いこと!遠くを見るように少し細めた目は虚ろで、遠くを見ているようだ。
 その顔に、思わず、私と娘達は、爆笑してしまった。(良く考えると人間の赤ちゃんもこんな目をしてた気がしてきた。)結局、ミルクを飲んてる時って、お母さん猫から与えられる最高に幸せの時間なのかも知れない。
 どれくらい飲ませば良いのか曖昧だったが、そばで私にもちょうだい!と、2匹のメス猫が
訴えていたので、「次は交代ね。」と、オス猫に声を掛けて、無理やり飲ませるのを中断した。

 2番目に大きいメス猫は、流石にオス猫とは違って、ミルクの飲みが少し弱い。しかし、しっかり飲めている感じである。メス猫がミルクを飲んでいる間も、先に飲み終わったオス猫が、哺乳瓶を奪おうと接近してくる。

「ごめんね。1本しかないんだよ〜」と、通じてる訳ないのに、思わずオス猫に声を掛けてしまう。勿論、オス猫には会話が通じていないらしく、ずっとミルクを欲しかっている。

 最後に、1番小さなメス猫にミルクをあげる。欲しがるジェスチャーは、先の猫達と変わらなかったものの、いざ哺乳瓶を咥えると、吸い込む力が弱い。しっかりと嚥下は出来いるが、飲み込みも遅く、ミルクが全然減らない気がする。結局、自ら数口程度で飲むのをやめてしまった。
 「もしかして、お母さん猫から母乳を飲むのが下手だったのかなぁ。だから、小さいのかなあ」と、長女が言った。そうかも知れない。生まれつき小さくて、ミルクを飲むのが下手であれば、大きい猫と体格差がついて行くのは、仕方ないことだ…。強い者が生きていけるのが、きっと野良猫の世界では、当たり前なんだよなと思った。
 動物病院で購入した2CCサイズのスポイトに、ミルクを吸い上げ、小さなメス猫の口元に持っていき、やや強引にミルクを飲ませてみる。メス猫は、仁王立ちしてても体が安定しないので、背中を支えてあげる。少し飲んだ所で、嫌がる素振りを見せたため、これ以上飲ませるのをやめた。

 相変わらず、先に飲んだオス猫が、哺乳瓶の周りをウロウロしていたので、残っていたミルクを飲ませる。やっぱり、吸い込む力が全然違う。一気に全部飲み干してしまった。

 私が3匹の赤ちゃん猫達に、ミルクを飲ませている間に、3女が猫のトイレの準備をしていた。A3サイズのプラスチック製の四角い収納ケースだが、そこに、おしっこが固まるという猫砂をいれただけ。
 また、ティッシュの箱の大きさ程度の、古いタッパーやクッキーの空き缶に、柔らかいタオルを敷き、寝床を作ったりしてくれている。

 「結構、自宅にあるもので何とかなるよ!」と、動物病院の待合い室で話しかけてきた女性に会えて良かった、と思っていた。

 それにしても、お腹いっぱいになった赤ちゃん猫達の行動が面白い。ありとあらゆる物の匂いをかぎまわったりしたと思ったら、私達人間の歩く足に反応して、飛びついてくる。
 動く物に飛びつくって、狩りをする習性がある動物独特なのかも知れない…。
 その飛びつく時の様子がすごく可愛くて、まさしく、「ピョンコピョンコ」って言葉がぴったりだ。

 それから暫くすると、3匹の赤ちゃん猫達は、3女の作った砂猫入りのトイレに入り、おしっこをしはじめた。チョロチョロとおしっこの音が聞こえて、目線は何故か遠くの方を見ている。
 私が、猫がおしっこする所を見たのは生まれて初めてだと思う。おしっこするだけで、こんなに可愛くて、見てて飽きない。逆に赤ちゃん猫達は、今朝出会ったばかりの、見ず知らずの人間に、こんな至近距離でおしっこしてる所を見られているのは平気なんだろうかとも思えてきた。

 ただ凄く感心させられたのは、ここがトイレなんて、ひと言も教えてないのに、3匹ともちゃんと手作りトイレでおしっこをしたこと。
 猫砂に、感謝するしか無い。

 それから、3匹の赤ちゃん猫達は少し自宅内を歩き回ったり、娘達に抱っこされたりしながら、疲れたのか寝てしまった。

 ティッシュケースと同じくらいの缶の中で、3匹ともだら~んと寝ている。3匹とも完全にリラックスした表情だ。
 ずっと寝顔を見てても、飽きない。沢山のヒゲ、時々モゴモゴする口元、真っ赤になった鼻と肉球。
 これまでテレビや雑誌でしか見たことなかったら、こんなに、間近に見られることに幸せな気分になった。娘達も私と同じ様に、スヤスヤ寝ている赤ちゃん猫達を、笑顔で見ていた。


沖縄の守り神。シーサー。

                 つづく

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