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『風景をつくる宿』プロジェクトについて

自己紹介

みなさん、こんにちは。

徳島県神山町でWEEK神山という宿泊施設を経営している神先岳史と申します。出身は京都で、20代前半は京都と大阪で料理の仕事をしていました。その後、起業を志す中で紆余曲折がありながら、縁があって2012年に神山塾という職業訓練制度で神山町にきました。

神山塾を卒業後は屋台やカフェ、ケータリングなど、食を中心とした事業をやってきました。その後、いろんなタイミングが重なり2018年にWEEK神山の運営を引継ぐことになり現在に至ります。

WEEKの紹介

WEEK神山は神山町の中心を流れる鮎喰川のすぐ側に建っている宿で、客室の川側は一面ガラス張りになっています。施設周りも樹木や畑、石積みなど昔の里山風景の要素が残っていて、周辺環境を含めた景観整備や開発に力を入れてきました。

その中でやってきたこれまでの取り組み、そこから発展して生まれつつある、これからの取り組みについて紹介をします。

これまでの(風景に関する)取り組み

きっかけは宿泊棟眼下の石積みの修復です。かなり広範囲にわたり崩れていてどうしたものかと思っていたところ、石積み学校という空石積みという技法を使って石積みを修復し、その技術を普及している団体が、徳島や神山町でよくWSをやっていることを知りました。彼らに相談し生まれたのが、合宿型の石積みWS『石積みWEEK』という試みです。

≪石積みWEEK≫

その後、修復されていく過程で眼下に流れる鮎喰川へのアクセスがよくなり、川に目が行くようになりました。はじめはカヤなどの草が多くなかなか下りていきにくかったのですが、草を刈り、ゴミを拾い、石や枝をまとめたりしていくと、とても過ごしやすい河原になりました。そんなことをしていく中で、これからの川と宿の関係を考えるようになり、継続的に川と関わっていける機会をつくる『川づくり』という活動もはじまりました。(気になった方はぜひ詳細をブログでご確認ください)

≪川づくり≫

はじめは必要に駆られて動き出したことが、やっていく中で単に直ったりきれいになったりすること以上に、精神的にも身体的にもたくさんの気づきがありました。石積みの先生や、川や生物の先生、活動している方々と出会いも大きいです。同時に神山の各地で起こるプロジェクト、森づくりやランドスケープ、山や川の取り組み、エコビレッジやパーマカルチャー、生物多様性などなど、たくさんの専門性を持った方がここで開く勉強会やWSなどを通して、自分を取り巻く環境、思考が自然とこれからの風景を考える糧として蓄えられていったように思います。

これからの取り組み

そんな中、5ヵ年計画ではじめた石積みWEEKが区切りをむかえ、次にどんなことをしていこうと思っていた時に見たのが、これです。

≪着想を得た雑誌≫

神山の景観研究をしているSFCの石川初ゼミの卒業生で、現在フジワラボでランドスケープ担当をしている稲田玲奈さん(以下、レナちゃん)の仕事。これを見た時に、こうやって宿を取り巻く環境を鳥瞰視していき、『未来につながるような景観づくりができないだろうか』というぼんやりとした構想が浮かびました。レナちゃんは石川研卒業後も、年に数回宿に来てくれていました。よいタイミングで話を聞いてみようと思い、今年の春ごろに会った際に話したところ、彼女もいつか神山で仕事をと思っていたようで、ぜひ一緒にやりましょうとなりました。

同時系列で、今年3月に石積み学校代表の真田先生の著書『風景をつくるごはん』(とWEEK神山を設計した伊藤暁さんの『具体的な建築』)の出版記念イベントを宿ですることになりました。そのイベントに向けて、本の輪読会を真田ゼミだった小池さん、神山つなぐ公社で城西高校神山校のプロジェクトの担当の梅田さんと実施していました。

その中で景観について話すこともあり、宿から見える「まめのくぼ(神山校の生徒が手入れしている土地)」の風景も一緒に考えられるといいねとなりました。イベント後も他の景観についての本などを輪読会をしながら一緒に考えてくれるようになりました。

≪出版記念トークセッション≫

さらにまめのくぼの向こう側の「谷」という集落で、現在プロジェクトを立ち上げている隅田さんもその周辺のランドスケープを考えていて、ぜひ連携していこうとなりました。谷のランドスケープ担当の方が神山の『大埜地の集合住宅』で、ランドスケープを担当されていた田瀬さんを師匠に持つ竹林さんという方で紹介していただきました。

≪7月の顔合わせ会≫

最後に来年から宿で働く予定の井上くん(生物担当)も加わり、いろんな視点から風景をつくっていくプロジェクトが動き出しました。

≪井上くんの川の生きもの教室≫

小池さんと梅田さんとは2月以降の毎週、水曜日の朝にMTGを持ち、景観関係の本などの輪読やその週に感じたことなどをシェアしながら、お互いの共通言語を育んできました。7月以降はレナちゃんと井上くんが加わり、オンラインで都会や豊岡やそれぞれがいるフィールドが繋がり、その景観について思考を深める時間も生まれ、どんどんとおもしろくなってきています。なにより毎週話すことでの共通イメージを持てることがいいなと思っています。

≪zoomの写真≫

おそらくやっていきたいことは、『現代の里山の風景をつくり実践していく』ということで、活動を通してどんなものが生まれてくるのだろうかということに好奇心があります。

≪現在の宿周辺の風景≫

また、この活動のもう1つのテーマとして世代継承があると思っています。それはこれまで神山のプロジェクトで景観に関わってくださっていた田瀬さんや石川先生、真田先生(ほか、多数の方々)などが作ってきた風景や研究をベースに、次の世代がそのエッセンスを受け継ぎ実践していく(大袈裟ですが)ことができるのではないかということです。

偶然なのか必然なのか、それぞれを師にもつメンバーが関わることになったこのプロジェクトは、宿の景観づくりという枠組みを超えてこの地に根差したものになっていくといいなという想いがあります。

最後に

個人的な考えですが、今後、特に中山間地域で景観を保っていく人たちが少なくなっていく中で、そこで生業を営む事業者がその役割を担う時代になっていくと思います。WEEK神山という自然に囲まれた宿が、景観に手を入れていき新しい価値を創造していくことで、宿と地域との関係性もより深くなり、他地域でも応用できそうなこともあると思います。かなり実験的な取り組みになりそうですが、とてもわくわくしています。

というわけで、このような思いではじまるのが『風景をつくる宿』プロジェクトです。
メンバーの紹介や活動の経過報告などはこのnoteを通して発信して行く予定です。かなり長期的な取組みになると思います。末永くよろしくお願いします。

                            2024.9.3 神先

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