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連続小説「アディクション」(ノート49)

ギャンブル依存症から立ち上がる

この物語は、私の誇張された実体験を基に妄想的に作られたフィクションですので、登場する人物、団体等は全て架空のものでございます。

〈「幸せのかたち」〉

まずは、例のポンコツ詐欺師が隣のボックス席に鼻息を荒くして座ってます。

どうやら、毎日私をストーキングしているらしく、夕方にクリニックの前で張り込み、私を待ち伏せ、私が普段の通勤ルートと違った電車に乗ると、すぐ様尾行するというように、しかも見事に気配を隠して目的地まで付いて行っていたようです。

そういえば、この人はクリニックに居た時も、事務スペースとのパーテーションに耳を当て、スタッフの会話や、他のメンバーの診察を立ち聞きして、あらゆる個人情報を収集していたようですが、これまた周囲の人にはあまり気づかれませんでした。

「倉骨さん、お久しぶりです。」

「どうも。向こうの席の方とも久しいですが。」

「敢えて無視して結構です。特段話に割っては入りませんし、たまに話題によって鼻息が荒くなるだけで、基本何にも喋りません。」

「なるほど。ゆっかーも大丈夫?」

「私も大丈夫です。てか、あれ魚さんですよねw」

「島野さんは『ゆっかー』って呼ばれているんですか?」

「まぁ、下の名前が『友香』ですからね。」

島野さんは、私の卒業より一週間先に「産休」に入り、既に6か月の安定期ということで、まさしく「ザ・妊婦」となっておりました。あと、魚さんが「ゆっかー」という言葉に反応して鼻息が荒くなっておりました。

「そういうわけで、屑星さん、卒業おめでとうございます。」

「ありがとうございます。」

「屑星さん、バイトは見つかりましたか?」

「まだこれからです。取りあえず、明日から早速学校ですので、学校生活に少し慣れてからと。」

「屑星さんは少し『ワーカーホリック』の気があるから、無理して体は壊さないように気をつけてほしいです。」

「島野さん、ありがとうございます。まぁ基本何事も『ゲーム感覚』で取り組もうと思ってますから。『仕事依存症』にはなりたくないですし。」

「はは、たぶんその『ゲーム依存症』に陥る可能性がありますよw」

「確かに。肝に命じますw」

さすがにそこは、そういうのを職業とされている方の視点だなと感心しつつ、

「で、ボネさん、仕事の調子はどうなんですか?」

「お陰様で、結構顧客が増えて、安心して出産してもらえるくらいは稼いでいます。」

「もともとそういうポテンシャルがあったんですね。まぁ玉井さんもそうだけど。」

「屑星さんだって、色々とお詳しいじゃありませんか。」

「それが世の中の役に立って、お金になればというとこなんですがねw」

まぁ本当に世の中の「役に立たない」と言われていることの知見だけは人よりは抜きん出るところはあるのですが、生活の種に結びつくところまでは、そうなるともっとオタクで博士みたいな人は世の中にゴマンといます。

「でも、良かったですよ。これからは何とか安心して暮らせますかね。」

「いやいや、私は『痴漢』です。そして被害者もいるし、それは一生背負います。で、『いつやらかしてもおかしくない』という危機感は持ち続けます。」

「そうなんですね。まだ、そういう渇望が消えるとは思えないと。」

「一人で電車に乗ったらどうなるかわかりません。『魔が差す』というスイッチはどこに設置されているか、それは全く予測できないですから。」

そこに、ゆっかーこと島野さんは、

「もし、キヨさんが、、」

「ん?キヨさん?」

「あ、下の名前、清なので」

「へえ、、あ、いや、どうぞ。」

「もし、この人が電車に乗ろうとしたら、イコール『痴漢をしよう』と考えてるなと思ってます。」

「え、そこまで言い切れるんですか?」

「なかなか、ミーティングとかの場ではそういうこと敢えて言わないようにしていますが、大体は『引き金』を手にして引かずには終わらないし、もしその時たまたま引かなかったとしたら、次の機会は確率がさらに上がるんです。」

倉骨さん的には、電車に乗るイコール痴漢をするというふうには思っていなかったようで、

「実は今日もここにはタクシーで来ました。通勤ラッシュでもないし、二人で行くので電車の方が安くていいと思ってたのですが、まぁ妊娠中ということもあるのでタクシーでもいいかな、くらいに思っていたんですけどね。」

「ギャンブル依存症と違うのは、問題行動で即被害者が出て、犯罪になる、ということなんです。そしておそらく一度やったら、たぶん私は両親から縁を切られるかも知れません、、」

「ゆっかーを、そういうわけで裏切れないんというか、ゆっかー居なけりゃ僕は生きていけませんからね。」

確かに、「茨の道」ってことになってしまうんだよなぁ、と思いつつ、

「でも、私は幸せですよ。私のことをここまで思ってくれて大事にしてくれる人はキヨさんしかいないし、家族も増えるから、、もし仮に、あってはならないと思っているけど、問題行動起こしたとしても、私はこの人からは離れません。」

くー、ボネさん幸せモノー、などと羨ましく思っていたら、はい、となりのボックス席から、鼻水流しながら号泣している男がいました。

「あ、これちょっとオフレコで」

「ゆっかー、残念、既にここの様子を号泣している男が、ラインで関係者にばら撒いております、、」

「まぁ、クリニックのミーティングの場だと思うしかないですね。」

ちなみに、クリニックのメンバーが、この「魚さんの仕事」に関しては、高評価をしておりましたw

〈「モチベーション」〉

さてさて、「正力クリニック」の「アディクショングループ」から、この度卒業し、そしてこの日の夕方は、夜間部の調理師専門学校の「入学式」に出ておりました。

この学校生活は1年半送ることになり、単位取得して卒業すれば、晴れて調理師の国家資格を取ることができます。

学校生活は、なかなか面白く過ごすことができた、ということに留め、ここで話を膨らますことはしません。まぁもしかしたら「黒歴史」かも。

で、私はこの時「壁」にブチ当たっていました。

これから調理師専門学校へ通って免許を取ることが当面の目標なんですが、まぁ、それで調理師を生業としてなんか良い事があるんだろうかと今更ながら葛藤しておりました。

あくまでもイメージで言います。それを「偏見」とも言うかもしれませんが、私は人前で「偏見」を述べていいと思ってるし、「そう見えている」ことを述べることにはなんの問題もなく、結果それで誰か傷ついたら謝るだけでいいと思ってます。と、前置きはこのくらいで。

飲食の職場って「マウントの取り合い」って感じがするんですよねえ。

それで、長続きしない人、特に私くらいの世代の人たちは、先輩の熟練者に色々とダメ出しされて心が折れるというパターンに陥りやすくなります。

で、私の場合は心が折れずに、あまりにも直接的に感情をぶつけてしまい、結果気まずくなることがよくありますw

そこまでして、仕事続けて何かいいことあるのかしら、やる気出ないなぁと悶々としていた最中なのですが、

この度、乃木坂46の生駒里奈さんが卒業するということで、そして4月に日本武道館で卒業コンサートをやることが決まり、私はチケットを確保しようとしました。

が、チケットの抽選にハズレたので、全国の各映画館で同時開催のパブリックビューイングを申し込み、都内ではなく小田原の映画館で何とか確保することができ、小旅行兼ねて観戦することとなりました。

まぁ、悶々としている時に気分転換にもいいし、何と言っても生駒里奈さんは乃木坂46創設の功労者で、読売ジャイアンツに例えると、沢村栄治のような存在で本当に乃木坂46がメジャーになるまで身体を張って引っ張ってこられた方です。ついでに言うと白石麻衣と西野七瀬は長嶋茂雄と王貞治、齋藤飛鳥が江川卓、山下美月が松井秀喜、遠藤さくらが坂本勇人のような存在と言っていいかどうかはよくわかりませんw

とにもかくにも、なぜか欅坂46のサイリウムを持って観戦しておりましたが、

生駒里奈さんの最後のライブをこの目に刻もうと、なるべく瞬きをしないで集中してライブ映像を注視していました。

そして、ライブの終盤に、ファンへのメッセージの中の一部でこのような言葉が私の胸に深く刺さりました。

「私は、自分のためには頑張ることはできないけど、何かのために頑張ることはできる。」

正直、コンサートの内容はあまり覚えていない分、この言葉が私の明日からの活力となりました。

「誰かに良い物を提供するために頑張ればいいんだ。」

シンプルに、他のことはどうでもいいくらい、自分のモチベーションを持って行くことができました。

卒業コンサートはめでたく終わり、私は小田原で一泊し、特に観光もせずにこの言葉を土産に帰宅したのでありました。

今回はここまでとします。

GOOD LUCK 陽はまた昇る
くずぼしいってつ









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