連続小説「アディクション」(ノート15)
ギャンブル依存症から立ち上がる
この物語は、私の誇張された実体験を基に妄想的に作られたフィクションですので、登場する人物、団体等は全て架空のものでございます。
〈「新天地?」〉
6階から7階に上がるだけなんですがね。
年明け早々、まずはその「メンタルヘルスグループ」のフロア内の1角の事務スペースでスタッフとの面談をしました。
女性スタッフ島貫さん、男性スタッフの庄司さんとの2名が常駐しています。
「島貫ですよろしくお願いします」
「庄司ですよろしくお願いします」
「屑星ですお世話になります」
「では、ここのグループのルールについて、私島貫から説明します。こちらのペーパーに沿って話します」
「はい、よろしくお願いします」
「まず、屑星さんの担当の産業医さんの連絡先を教えてください」
「え?、私は担当産業医はいませんよ」
島貫さんの表情が一瞬曇ったが、すかさず庄司さんが耳打ちすると、
「あ、失礼しました。そうでしたね。」
今思えば、ここは自分にとって時期尚早だし、場違いであったと思います。特に他のメンバーと明確に異なるのは、「所属する組織に戻る前提」と「所属する組織を辞める前提」の違いということで、
私の場合、社会復帰する前にまず今の仕事を辞めて退職金を作って破産管財事件の集結を目指すことが優先なので、このフロアにいる意味合いに乏しいのです。
島貫さんから、引き続き説明がなされましたが、ペーパーに何か変なことが書いてありました
「ここのフロアでは、恋愛禁止です」
ここは欅坂46なんだろうかと思いました。先程入室した際にこのフロアのメンバーさんを見渡したのですが、どうやれば「恋愛」できるのか訳がわかりませんでした。さらに、
「アディクショングループの話は、ここでは一切しないでください」
「はい?」
「ここにいる人たちは、ちゃんとした人たちなんです」
(おいおい、なんかヤバいとこ来たな。てか、このスタッフ、私を含めてアディクションの方々を見下しているかな。)
「ミーティングでもダメということでしょうか?」
「当然です、あのフロアの話なんかされるとここのメンバーのうつが悪化し、社会復帰に支障を来たしてしまいます。」
「なんか、随分な言い方ですね?」
「それを守れないなら、アディクショングループに帰って頂きます」
「じゃあそうします。」と、言おうとも思いましたが、ここの世界を覗いてみたいという興味もあったので、とりあえず「居座ってみるか」ということで、あとは説明を機械的に聞いて終わりました。
〈「再会?」〉
面談で胸糞になりつつも、事務スペースから出て、いよいよメンバーさんとの御対面となったのですが、衝撃が走りました。
(え、マジかよ)
このフロアは、一人ひとりに挨拶するしきたりがあるようなんですが、
「始めまして、峰です。」
「あ、存じ上げております。」
「え、僕のこと知ってるんですか?」
「三年前、東京支部の『ファンとの集い』でお会いして、写真もあります」
「それは感激だなぁ。」
「『江戸川平八』を知らない人はいませんよ」
「屑星さん、これ以上の私語は禁止します」島貫スタッフに止められたが、
まさか、現役のボートレーサーがいるとは。この方は峰平八さんといって、大きいレースでも活躍する一流選手で、私がそれこそ絶賛競艇依存中だった時に活躍されていて、特に江戸川競艇場では滅法強く「江戸川平八」の異名を持っております。
ここ2,3年、見かけないかと思っていたのですが、いわゆる「フライング事故」を頻発するようになり、特に説明しませんが、「F3」を、短期間で2回やらかしてから、出場機会がなくなり、精神が不安定となり睡眠障害を起こし抑うつ状態になっているのを、理事長の知り合いという東京支部の選手会長の勧めで、このクリニックに繋がったとのことでした。
競艇選手にしては、長身で、精悍でハッキリモノを言いそうな感じです。
「ほう、屑星さんも競艇やるんですか」
と、挨拶がてら声を掛けてきた柳田さん。この人は、パワハラ被害で病んでしまった証券マンです。かなり色んなギャンブルに精通しているようです。
女性のメンバーで、結婚相談所のチーフマネージャーという大竹さん。皆んなから「おたけさん」と呼ばれていて、結婚相談所のチーフマネージャーなのに「結婚詐欺」に遭ってメンタルを病んでここに来たようです。
そして、大手スポーツ新聞社の記者の湯口さんは、大物芸能人のスキャンダルを突き止めたものの、デスクに揉み消された上に仕事を干され、さらに好意を抱いていた女性の同僚がそのデスクと不倫関係にあるのを知り、失踪騒動を起こしてここに来たようです。
このフロアも、アディクショングループと同様に、4つのシマから出来ていて、私はこの方々と同じシマで過ごすことになります。
それにしても、おたけさんとの恋愛はまず無いなw
他のシマにも、色んな個性的な方々はいますが、それは後ほど。
今回はここまでとします。
GOOD LUCK 陽はまた昇る
くずぼしいってつ
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