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連続小説「アディクションヘルパー」(ノート2)

人生全て「運」。努力することも「努力できる運」。だから「運」しかない。

この物語は、私の誇張された実体験を基に妄想的に作られたフィクションですので、登場する人物、団体等は全て架空のものでございます。

<「入校式」>

私なりの「不安」を抱えた入校式となりました。入校するまでの手続きもソコソコめんどくさかったのですが、何とかこなしこの日を迎えております。

入校するまで「事前見学」とか「面接試験」とかがありました。事前見学の時に案内してくださったのは三島さんという女性のスタッフの方で、人を引き付けるような目力があり、私もついつい引き寄せられて、入校後もこの方の講義を受けることになるのですが、なんとなく視線を合わせるとそのまま瞬きをしないで受講するような感じになりました。

面接試験は、ここ「魁進ケアスクール」の上山校長との面談を行い、志望理由とか介護職のイメージとか基本的なことを聞かれ、率直に「ほかに仕事が無さそうだから」ということと「覚悟が必要な職場とか聞いているが覚悟してまでやるつもりはありません。」と話したので、こりゃ下手すりゃ印象悪くして落とされるかと思いきや

「いいですねー!そのアプローチで取り組んでもいいと思います!ぜひ、この仕事の「楽しさ」を知っていただければと思います。」

と、何か知りませんが「肯定的」に反応してくれて、面接試験はパスして無事入校ということとなりました。

そういや三島さんも、施設見学のときに眼球を最大限に大きくしながら私に

「介護の仕事って、実は本当に楽しいし、あと利用者さんから学べることが色々あるんです。それでやりがいも大きくなるんですよ。」

正直、半信半疑でしたが、その時も三島さんのあまりにもの真っすぐな口調と眼力に吸い込まれてもいたので

(まあ、この訓練期間中は真面目に頑張ってみるかな)

ということで、今ここ「魁進ケアスクール」の入校式の席に、私はこれから共に学ぶ仲間と座っている状態でございます。

で、この「魁進ケアスクール」なんですが、元々は「魁!進学塾」という学習塾が事業拡大し、介護ケア部門を設立しこの名前になったとのことです。ここの常任スタッフは講師も兼ねていて、女性の三島さんの他に、男性で藤瀬さんと藤原さんという「藤藤ペア」がいらっしゃいます。

そういうわけで入校式が始まりました。この時点で仲間の皆さんとはまだ会話できていない状況ですが、見渡してみると老若男女幅広くかな?いやでも年齢層は全体的に高めかな?などと気にしながら、校長の訓示やら受講説明やらを受けて、あとは、職業訓練ということで色々な関係書類をわけもわからずひたすら書いていて、そしてこの日は終わりました。

仲間の皆さんとは、事務的な挨拶程度でしたが、まあ最終日までこんな感じでも別に問題ないなと、専門学校の前例もあるから、ある程度の「距離感」はあったほうがいいのかな、なんて勝手なことを考えながら、帰宅の途の反対方向の行きつけのネットカフェに向かうのでした。

<「あいさつ」>

さて、職業訓練の入校式を終え、2日目を迎えました。

この日は、主にここの訓練校の概要説明会的なことが行われました。

私は一つ決めていることがあって、この訓練校には授業開始30分前までには着席し、前日の復習をこのタイミングでやるということでしたが、本日はとりあえずその必要がないので若干遅めに来て着席しようとしてました。

「はい、どれか好きなの一つ取って。」

私が席につくやいなや、素早く私のところにやってきて「ばかうけ」のアソートの袋を私の前に差し出した方がいらっしゃいました。

「え、いただいていいんですか?」

「そうよ、いただいていいから出しているのよ。ハハハ。」

「確かにそうですよねw。ありがとうございます。いただきます。」

「石毛って言います。よろしくね。」

「どうも。屑星と申します。よろしくお願いします。」

と、返答するやいなや、またしても素早く他の人の席に行っては「ばかうけ」を配っておりました。

私より多少人生の先輩のような方と見受けられましたが、私は後にこの方を師と仰ぐこととなりますw

「なかなか元気な方もいるもんですな。」

後ろから、私に話しかけてきた人がいました。こちらは私よりは若干先輩と思われる男性でした。

「そうですね。しかも素早いですよね、、って、あ、私屑星と申します。」

「よろしくお願いします。私は松沼といいます。ということで『あにやん』と呼ばれたりします。」

「なるほど。しかし若い人たちにわかりますかねえ。てか、よっぽどでないとわかりませんよ。」

といいつつ、この人はその後皆さんに「あにやん」と言われ親しまれることとなるのですが、時折小ネタをぶち込んでフォローに困ることをしでかすことがあります。

「あにやんですか。なるほどなるほど。」

と言いながら、私の隣の席にやってきた男性がいました。私と同世代くらいでしょうか。

「あ、どうも初めまして。田辺と申します。」

「屑星です。よろしくお願いします。」

なかなか社交的な感じの方でございまして、

「私は野球と競馬が大好きなんですよ。屑星さんはやられますか?」

「ハハ、競馬は5年前に絶ってからやってません。」

「ほう、辞められたんですか?」

「あの、ギャンブル依存症ってやつです。」

「そうなんですね。失礼しました。でも辞め続けられるんですね。」

「ちゃんと治療すれば、止めることはできますよ。」

などと、結構初日から込み入った話ができました。まあ、お隣さんということで。


ちなみに座席は4列あって3列目までが机が5つ、4列目が4つということで19人が着席しているという状況です。

私は2列目の右端に座っていて、その左隣が田辺さん。

その真後ろに松沼さんがいて、そしてその左隣に石毛さんが座っています。

前列には女性2人並んでいて、とりあえず挨拶せねばということで、

「屑星と申します。よろしくお願いします。」

「西岡です。よろしくお願いします。」

「駒崎です。よろしくお願いします。」

どちらも私より一回りくらい若い感じの方々でしょうか。ちゃんと目を見て挨拶をするので、心なしか照れてしまいましたw

そんなこんなで講義が始まりました。

本日の講義は「職務の理解」ということで、午前は「あいさつ」をテーマとしております。

講師は三島先生でした。

「では、みなさん、おはようございます。」

非常に発声が心地よく、そして例の目力も加わって皆さんを引き付けておりました。

「こちら『魁進ケアスクール』は、あ、い、さ、つのそれぞれの文字を頭にした「4つの基本キーワード」を掲げています。さあ、皆さん、「あ」から始まる、あいさつの基本のキーワードってわかりますか?」

当然、どなたも発言いたしませんw

「みなさん、緊張していらっしゃるようですので、私から当てますね。松沼さん、わかりますか?」

「アルコール」

一番緊張してない人に当たりました。

一瞬の静寂がありましたが、

「何言ってんのよ、アンタ」と石毛さんがすかさず突っ込みを入れました。

「みなさんの緊張をほぐされたのですね。松沼さん、素晴らしいですよ。」

と、さわやかに褒め殺しをしたところは流石講師です。

「失礼、『明るく』ですかね。」

おそらく自らも「スベった」と思ったのでしょう。

「はい、素晴らしいです!「あ、か、る、く」正にその通りです。」

本当に褒めてるのか、褒め殺しているのかが今一つわかりませんでしたが、まあこれで教室内の空気は何となく温まった感じにはなりました。

「では次行きましょう、「い」について、石毛さんわかりますか?。石毛さんの「い」ではありませんよ。」

三島先生も時折、心が美しいような雰囲気を出しつつも、ちょいちょいそういう「アクセント」を付けて来ます。

「いつでも、の「い」ですか?」

さっきまでの闊達な感じと裏腹に自信なさげに答えましたが

「はい、そのとおりです。素晴らしい!」

こういうふうに返してくれると、皆さんうれしくなるんだろうなと感心して見てました。

いつでも、どんなときでも、人と会ったら挨拶を心掛けるとのことです(だったっけ?)

私は「いちおう」だと思っていたけど、それはむしろよろしくないか。

「はいそれでは、屑星さん。「さ」は、わかりますか?」

当たっちゃったよ・・・

「えーと、さわやか、とか、さくっと、とか、さっさと、とか・・」

見守るような微笑みののち、

「どれもありそうですし、私の思い浮かばないことも仰ってくださり素晴らしいです」

これが褒めているのか褒め殺しなのかわかりませんが、間違っていることだけはよくわかりました。

「実は、「さ」は、「先に」ということなんです。」

なるほど。そして私は「これはやってみよう」と、人に会ったら「先に」あいさつすることは習慣にしようと決めたのです。

ちなみに最後の「つ」は、伝えるという意味で、相手に伝わるように挨拶をすると、まあ心をこめなさいということのようです。

随分と長くなってしまった。今回はここまでとします。

GOOD LUCK 陽はまた昇る
くずぼしいってつ












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