連続小説「アディクション」(ノート11)
ギャンブル依存症から立ち上がる
この物語は、私の誇張された実体験を基に妄想的に作られたフィクションですので、登場する人物、団体等は全て架空のものでございます。
〈「勝利を目指して」〉
2016年も9月に入り、「秋の文化祭」も近づいてきました。ダンスの練習も最終段階となり、私もここまで何度も「サイレントマジョリティー」の動画を見て研究しました。
ちなみに、本番のフォーメーションは、フロントのセンターに赤嶺さんを置き、両脇を根市君と加茂川君の若手で固め、二列目は当初は島野さんの予定でしたが、なんと迫丸さんのダンスの覚えが超絶素晴らしく、既に欅坂46を凌駕しているようなキレを見せていたので、迫丸さんを2列目センターに置き、私と才所さんがその両脇。両端の方がむしろ目立つということで、島野さんと倉骨さんが2列目のウイングに収まりました。
迫丸さんは元甲子園球児だけあって、いくら運動とダンスのセンスは別と言われていても、それを超越する動きができていました。
島野さんは真逆なタイプで、ダンスのセンスは抜群ですが、他のスポーツは全くダメで、卓球なんかやらせると、サーブを何度も空振りしてしまいます。
根市君と加茂川君は若手だけあって、「体で覚える」のが早く、既に動きはモノにしていました。
倉骨さんは「好きこそものの上手なれ」で、キレは今ひとつですが、振り付けは完璧にマスターしていました。
で、問題児は二人。
そう、この私と才所さんでした。
とにかく「リズム感」というものが欠落していて、これってダンスをするには致命的だと思っています。
「屑星さん、どうですか?」
「そうですね。音楽がかかると私はダメなんですよ。号令だけならなんとかなるんですけど。」
「その感覚、私もわかります。」
「でも、音楽に合わせて踊らないとダンスとは言えませんからね。」
「だから私は「見るだけ」だって、あれほど島野さんに言ったんですがねえ。やっぱ魚さんに欠席裁判押しつければよかったかなあ」
「魚さんが、やるわけないじゃないですか。押し付けたらクリニックに二度と来なくなると思いますよ。まぁクリニックに来るしか選択肢は無いようですが」
「はい、雑談はそこまで」
島野さんが割って入って、「全体練習」に戻されました。
「では、全体での練習をします。それで屑星さんと才所さん、もし不安なら少し後ろに下がって、屑星さんは私のフリを、才所さんは倉骨さんのフリを真似るようにして下さい。」
本番が近づいてきたため、島野さんも「最終決断」をしてきました。
「あと、足の動きが難しいなら、大きく広げるだけでそのまま回るだけでいいです。腕の動きだけで大丈夫です。」
例のサビの場面か。あそこは右肘を上げる時に右足を上げるのだが、そこがなかなか上手く行かず、さらに首も動かすので私は足に意識が行かないのでした。
「では、曲をかけますね」
にしても、年齢不詳の赤嶺さんはよく研究しているよなと。冒頭のソロの部分は本当に頑張って練習していました。
私と才所さんは、「足の動き」を諦めて試みてみたところ、これがなんとかしっくりきました。
この曲は、意外と素早い動きが無く、むしろ全体の「統一感」で見映するんだなと、踊ってみるとそう感じました。
この曲は欅坂46のデビュー曲なんですが、本家のメンバーにもダンス未経験者が多く居て、動きそのものは初心者でもマスターできるようになっているということのようです。
これで何とか全体の見映も良くなり、何と言っても迫丸さんの動きはこれからプロのダンサーに転向してもいいくらいの見どころがありました。
「いやあ!すごいすごい。これは間違いなく優勝でしょう!」
と、才所さんがやたらと元気にはしゃぎ出しました。
「では、練習終わります。本番頑張りましょう」
さあ、勝利を目指して皆が1つになりました。まぁ、ご想像のとおり一筋縄では行かないのがこのクリニックですが。
〈「秋の文化祭」〉
ついに9月15日を迎えました。
「秋の文化祭」当日です。プログラムとしては、午前にフロア対抗ダンス対決を含む、クリニックの各文化サークルの発表会。申し遅れましたが、このクリニックにも「クラブ活動」が存在していて、サークルは文化系のものがほとんどで、この日を目指して合唱だの舞踊だの演奏だのと練習を積み重ねておりました。
こちらは3階のトレーニングルームを改装して観客席を設けて行われます。
そして、午後に料理対決。
こちらは、2階の会議室に4つの販売ブースを作り、各フロアの課題料理を提供し、理事長応接室に控えてる5人の審査員(経営陣)に届けられ採点してもらうこととなっています。
調理はそれぞれのフロアで行われて、調理できるガスコンロなどはフロアに常設されていて、実は休み時間に間食作り目的で調理してよいことになっています。
で、調理チーム(カレー)は、朝に買い出しして、午前から昼にかけて調理。午後2時くらいに販売提供の流れになります。
私と倉骨さんは、ダンスと料理の掛け持ちで午前の出番や直前練習で買い出しや仕込みに行くことができず、直前の仕上げと提供準備を手伝うことになります。
そういうわけで、午前中は必然的に「調理組」は、どこのフロアもダンス対決を観客として見ることはできないこととなっています。
そんなこんなで、朝9時になり、文化祭の開幕です。そして、満を持して理事長の「開会宣言」が行われます。
「本日はクリニックの文化の日です」
(いきなりブチ込んできたか)
「そして、この日にふさわしい素晴らしい一日になることを期待しています。まず、君たちに言いたいことがあります。依存症とは?うつ病とは?、、」
5分で終わるはずの開会宣言が48分の講演会になってしまいました。
冒頭でいきなりスケジュール40分押しで、進行役の門奈さんと島野さんが困り果ててしまいました。
さぁ、ここで猪口管理部長が初登場します。猪口部長から、進行役の二人に提案をしてきました。
「午後イチに回せるのは、なるべくそうしよう。文化サークルの発表を午前は優先させて、ダンス対決はやれるとこまでやることにして、11時半になったらひとまず打ち切って、13時から残りのプログラムをやることにするのはどうだろう」
「いや、それでしたら、午前プログラムを延長させたほうがいいと思います」と島野さんが反論しました。
「11時半は皆の昼食時間に設定してある。料理対決の販売品を買わないメンバーさんも多くいるから、この時間は動かせないよ。」
「しかし、13時の発表ですと、昼食やら販売準備やらで観客がほとんど居ないところでの発表になりますが」
「だから、文化サークルは優先させて午前に見てもらうんたよ。ダンス対決はあくまで採点勝負だから、審査員がいるだけでいい」
「観客に見てもらえるフロアとそうでないフロアと不公平が出る気がします」
「島ちゃん、そこはしょうがないんじゃない?部長としては11時半のお昼ごはんは動かせないんですよね。」門奈さんが島野さんを諌めました。
「じゃ、そういうことで頼むよ」
猪口部長の裁量でプログラムが変わることになりました。この人は「経営陣」の一人で実は理事長の娘婿であり、今回の「料理対決」の審査委員長を務める方で、塩月さんの言う「味のわからない人」はこの人のことでした。
私たちは、ダンスの出番に備えてフロアで支度をしていたのですが、そこに島野さんが文化サークルの出し物披露の合間に戻ってきて、
「あいつら、馬鹿じゃないの!」
と、いきなり吐き捨てたので、メンバーが事情を聞いたところ、その瞬間全員が島野さんの支持者になりましたw
今回はここまでとします。
GOOD LUCK 陽はまた昇る
くずぼしいってつ
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