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連続小説「アディクションヘルパー」(ノート5)

人生全て「運」。優秀とは変態である

この物語は、私の誇張された実体験を基に妄想的に作られたフィクションですので、登場する人物、団体等は全て架空のものでございます。

<「シーツ交換」>

この物語において語る私の心境などについては、その時点で私が感じていたことをお伝えするものであり、日々様々な経験を重ねるにつれ、変化していくこともあるということをお断りしつつ、話を進めてまいります。

ここ「魁進ケアスクール」において実施されるプロブラムは、大きく分けて学科と実技があり、この日は蓬莱先生の監視いや指導のもと、「実技研修・シーツ交換」が行われておりました。

午前中は、その実技研修を行う前の講義があり、蓬莱先生の例によっての熱弁により、このシーツ交換の意味とか重要性とか、シーツ交換できない者は介護職にあらずとか、シーツ交換もろくにできないやつに色々語る資格はないとか、私にはそのように聞こえたので、まあ、できなきゃこの職になんか就かないでもいいやと、半ば投げやりな態度となり、休憩時間中に私はついつい前列に座っている駒崎さんと目があったところを捉えて、

「ああ、よくわかった。介護職になるの私辞めます。」

「もう、屑星さん、そんなこと言わないでくださいよ。」

「ははは。駒崎さん、私は手先が不器用なんで、たぶんダメです。」

「そんなことないですよ。練習して慣れればきっとできるハズですから、午後の実技研修頑張りましょう。」

「そんな、ありがとうございます。」

なんてお優しい方なんだと、感心しているところに石毛さんが割り込んできて、

「ちょっと、何あんたデレっとしてんのよ。」

「いやいや師匠、デレっとはしてませんが。」

「あのね、辞めるだのなんだのグダグダ言ってないで、やってみればいいのよ。」

「まあそりゃそうでしょうけど。ちょっと気持ちが萎えただけです。」

「は、萎えた?あんた大の男なんだからシャキッとしなさいよ。」

「ははは、随分クラシックな励まし方を、わかりました、ありがとうございます。」

励まし方にも甘口と辛口があるんだなと思いつつ、シーツ交換の実技研修に臨むことになったのですが、シーツ交換の実技研修は男女それぞれ2班ずつに分かれて行われることになりました。

で、私のグループは私と田辺さんと松沼のあにやんのほか、笘篠さんという私よりは少し若い感じの人が加わり、私に挨拶がてら、

「屑星さん、さっきは駒崎さんに励まされていましたね。」

「はあ、そうですけど、それが何か?」

「羨ましいなあ。僕、駒崎さんのファンなんですよ。もう可愛くて。」

一瞬、何の寝言かと思いましたが、

「そうなんですね。それは失礼しましたw」

「僕も言ってほしいんだよなあ『ケンちゃん、一緒に頑張ろうね』って。」

「ケンちゃんって、笘篠さんのことですか?」

「名前が健太ですから。」

「そういやそうでしたね。」

「何すか屑星さんその余裕は?私に対するマウントですかw」

「ははは。じゃあそういうことにしておきましょうw」

などというやり取りがあって、シーツ交換の実技研修が始まるわけなんですが、このケンちゃんの大活躍も含めて話が色々ありますので、後半は次回とさせていただきます。

〈「褥瘡」〉

そういうわけで、シーツ交換の続きになりますが、予想どおり私はシーツを上手く「シワのない」ように敷くことが出来ませんでした。

あれ、今考えると最初の置く位置を決めることと、マットのしなりを利用して上下キツめに引っ張れば、結構うるさく言われた「三角コーナー」なんてその次の話なんですよね。

「三角コーナー」も、シーツがシワのない状態でずり落ちにくくする方策の一つであるということのようなんですが、その時の私はこれを如何にキレイに拵えるかばかり考えていました。

とはいえ、なかなかその「三角コーナー」が上手くできない中、私のグループにおいてはケンちゃんこと笘篠さんが天才的に上手で、

「屑星さん、ここは軽く抑えるだけでいいんですよ。」

「なるほどね。でも、ケンちゃんから離れて一人でやると出来ないんだよな。」

これって、どれだけイメージできるかの違いだと思っていて、まぁシーツがあってマットがあると、こうやってシーツをかければキレイに敷けるんだけど、まずはこれをやって、その次に、、というイメージが湧く人と、私のように全然イメージが湧かない人とが存在するわけで、特にこういう手続き的なものは本当にダメで、実はダンスを覚えるのも遅くてというのがあり、とにかく最後は「慣れる」しかなく、一番大事なのはギブアップしないことだとは自覚してます。

その点は実は気楽に考えていて、基本的には「失敗を恐れるなあやまれば済む」でやって行こうと思っていたら、例の蓬莱先生が、これ聞こえよがしに、

「褥瘡は介護職の怠慢ですよ」

褥瘡って、この場合だと「床ずれ」による傷を負うことで、高齢化になるとその傷の回復が遅く、それどころか細菌の繁殖などで悪化し重症化して生活の支障に繋がってしまうことがあるのですが、床ずれの原因として、しわやたるみのあるシーツの上で日々起床すると褥瘡が起きるリスクが高くなるということです。

私は「褥瘡は介護職の怠慢」というフレーズについては、真っ向から反対する立場を取らせて頂いております。

そもそも、褥瘡を起こすのは「弱ってるから」です。おそらく介護が入らない状況ならば、より早く褥瘡となり悪化すると思います。

いやでも、お金頂いてそうならないようにするのが仕事だろ、ということなんでしょうけれども、もちろんそのように尽力はしているはずです。

シーツのたるみでも、介護職の手抜きでそうなるかはわかりません。利用者が相当不規則な寝返りをうつかもしれないし、自分でシーツをイジるかもしれません。

これについては、「日頃からの観察」で対応策を講じることができるはず、という方々も多くいらっしゃいます。

しかし私は、これだけでもシーツのたるみを100%解消はできないと思ってます。なぜなら「動かそうと思えば動かせるもの」だからです。たるみを起こすトリガーを潰してたるむ「確率を下げる」ことはできてもゼロにはできません。

私の依存症と同じです。私は自分がもう大丈夫だと思った時が一番再発するリスクが上がると考えています。

昨今の感染症もゼロにはできないし。

少し話が横にそれましたが、「褥瘡は介護職の怠慢」については反発します。医療職の代表者が、こういう見方をしているあたりが現場での軋轢に繋がるんじゃないかと疑義を持ちました。

皆さんのご意見をお待ちしてますw

個人的には、シーツやマットで褥瘡を起こさない素材をいち早く開発すべきだと思っておりますけどね。

今回はここまでとします。

GOOD LUCK 陽はまた昇る
くずぼしいってつ








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