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落とし物の鍵から考えたこと

この前落とし物を警察署に届けたときの話を。

数日前、学校帰りに教頭先生と自転車で帰っていると、路上にキラッと光るものを見つけた。

一瞬だったけど、鍵だとわかった。思わず
「あ!鍵…!」
と呟くと、教頭先生は
「え!全然気付かんかったで。どこや。」
と言いながら、先陣を切って引き返してくださった。

教頭先生、また通り過ぎていたけれど。
おしゃべりでちょっとお人好しな、素敵な方だ。
「ここです。」と言うと、何度も目を凝らしながら「ん!見えへんで、どこや?!」とおっしゃっていた。

私がそれを拾い上げると、
「ほんまやぁあ!!もうそれ、もう才能やで!」
と言ってくださった。

大袈裟だあー、と思いながら嬉しくなってしまった私は
以前梅田の一番大きな横断歩道で、人混みの中、すこし前を歩く人が落とした定期を拾い上げ、無事に渡せた話をしてみた。
早歩きで進む波に飲み込まれながら、手を伸ばすとギリギリ拾うことができて
誰が落としたか分からないながらも当てずっぽうで声をかけてみたら、ちゃんと落とした方に渡すことができた話を。

話しながら、「これは私の新たな才能なのか?!」という思い込みが始まって
またちょっとワクワクした。

話が戻るが、鍵を拾ったからには、どこかに届けたいと思った。
でも、落とし物の処理には、少々の時間がかかることも知っていた。もう21時も過ぎていた。
届けに行くと言うと、絶対に一緒に来てくださるであろう教頭先生。早く帰りたいだろうな、と頭によぎって、教頭先生の時間を取ってしまうことだけが懸念点だった。
けれど迷っていたら、もう教頭先生は警察署の場所を調べようとしてくださっていた。
さすが、教頭先生…!

ほっとして、なんだか疲れていた身体が、ふわっと軽くなった気がしながら、警察署に向かって2人で自転車を漕いだ。

警察署に入ると、必要な書類を書いてから10分か15分ほど待った。
鍵ひとつで、書類の作成にこんなに時間がかかるんだなと、改めて思った。
待っている間、
 私は拾った証明の紙とかいらんけどなぁ。
 でも警察官の方にとっても渡すことが義務なんやろなぁ。
 ここって24時間空いてるんよなぁ、教師よりも大変やんか…。
 警察官の方もこんな手間かけさせてー!って思ってはったりするんかな、そのまま見過ごしてた方がよかったんかなぁ…。

などなど、いろんな思考が飛躍したり、
時々口に出して教頭先生と話したりしながら過ごした。

初めて入った警察署の雰囲気にのまれて、ドアを出た時には、届けるときの高揚感はなくなっていた。
ほんとにこれで良かったんかなぁ、
そのままにしてた方が落とした方に届きやすかったり。

なんて考えてしまって、ちょっともやもやしながら自転車を漕いだ。
すぐに「届けよう!」ってなる私の思考を、ENFPである性格のせいにしようとしてみたり、した。



教頭先生と別れてからの帰り道、電車で同僚の先輩とお会いした。
誠実で、ユーモアありながらもしっかりされている、尊敬できるお父さん先生。

鍵を拾って届けた話をするといつの間にか忘れ物の話になって、
「俺もめっちゃ鍵とか財布とか落とすねんけど、警察行ったら全部帰ってくるねん。そこの運はいいねん!」
と笑いながら話された。

そのとき心の中で
「それは、私みたいに拾って届ける人がいるからやんー!!!」
と思った。
やっぱり届けてよかったかも、と思えて
ちょっとにやにやした。
口には出さなかったけれど。

ひとつの鍵からいろんなことを考えた夜だった。

この鍵落とした人、どんな人かなぁ。
ちゃんと、届くといいな。

おっちょこちょいな私は、きっといつか、落とし物で警察にお世話になることがあるだろう。

いつかその日が来た時に運が回ってくるようにするためにも、
私の新たな才能(?!)をどんどん磨いていけたらいいな。

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