2月6日(昼)
自室の扉を開けると、よくわからない匂いが一階から漂っていた。
―何の匂いだ?
母以外は、寒いと、換気というものを極端に嫌う。ので、部屋の中の空気が基本的によどんでいる。
よくはないと分かっていながら、寒いよりはマシじゃないかとか、言い出す。
むろん私もそう思っていたりする。寒いの嫌い。
しかし、この匂いはほんとになんだ。
今日も今日とて、妹が下に居るはずだが。
あの、態度があほみたいにでかい妹が。
「……何の匂い…」
「キムチ」
「………あぁ、」
分かった。
数日前から言っていた、キムチのスープを作ったのだろう。昨日材料買っていたな、そういえば。確かに、今朝がたキッチンからやけにガタガタ音がすると思った。
私は辛いのはダメなので、キムチは好まない。好まないというかむしろ嫌いだ。
しかし、なんでキムチって加熱するとこんなに匂いが広がるんだろうな。個人的には、あのパック?に入っている状態でも、匂いがきつい。辛味っていうだけで匂いが鼻をつく。酸味とかも、そうだよな。
「……」
よく見れば机の上には、それを食べた後であろう食器が並んでいた。
それを流しに片付けるという発想はないのかコイツ。
そのままにしていて、文句を言われるのは私なんだが。
―なんでだろうな?
ま、今に始まったことじゃないし。
こちらから文句を言っても、聞かれはしない。
「……」
それより、私も昼食を食べることにしよう。
何があったか……。
今朝ご飯は炊いていないはずだ。弁当とかもない。パンは買い置きがあるが、食パンは苦手なので却下。
「……」
インスタントラーメンやら、スープやらもあるが……。
却下。
この辺は、味が濃ゆくて食べられなくなった。インスタントラーメンなんて、食べなくなって何年経ったんだろう。スープぐらいは、たまに食べるが。あれが一番苦手だ……。あの、インスタントのうどん。
「……」
あぁ、これがあったなそういえば。
母が昨日言っていたんだった。
最近は、これに頼りきりだ。
「……」
冷凍のパスタ。電子レンジでチンで一発。おいしいパスタが食べられる。
一番のお気に入りは、ナポリタン。次にボロネーゼ。あとは……なんだ。この2種類ぐらいしか食べないな。なんなら、ナポリタンしか食べない。
そして今日も、ナポリタン。
「……」
平皿を取り出し、キッチンに置く。
冷凍の中身を袋からだして、その上に置く。
そのまま、電子レンジで……600ワットで4分半。500ワットなら5分。
「……」
電子レンジをセットし、回っている間に、飲み物を用意する。
年中飲んでるパックの麦茶。最近は私しか飲まないので、毎回毎回自分で作っている。―割と面倒なので、たまにギリギリまで飲んで放置したりするが、結局自分で作るので、意味なし。
「……」
ん。できたできた。
電子レンジから取り出し、袋を開け、中身を皿に出す。
ずるん―。
引き出しからフォークを取り出し、適当に混ぜる。
ナポリタンのいいところは、麺にもある程度味がついているところだよな。
ケッチャプおいしい。
「……」
麺を混ぜたまま、フォークを刺したまま。
皿とコップを持ち、炬燵へ。
机の上に置き、そのそばに置いていたリモコンでテレビの音量を上げる。
「美味しそうなのたべてんね」
「……」
むしむし。
くるくると面を巻き、口に放り込む。
ん、相変わらずおいしい。家で作るナポリタンと違って、程よい味だ。
更にふたくちめ……。
「何……」
「ちょっとちょうだい、」
「……」
頂戴も何も、すでに皿に手をかけているあたり。この妹は、ホントに……。
まぁ、今日はさほどお腹もすいていないから、ひとくちならいいか。
「ありがと♡」
「……」
媚びへつらうとは、こういうことか。
いやはや、末っ子というものは、こんなにも世渡り上手になるんだな。
ひとくち食べて、こちらに返してきた。
返ってきたそれを、黙々と食べていく。
「……」
難点は、口が汚れやすいってところだろうか。白い服とか、アウトだな。
あと、口内に味が居残るので、歯を磨いても味がする気がしてしまう。気のせいだろうが。
「……」
ふぅ。ごちそーさまでしたぁ。
満腹満腹。おいしゅうございました。
さっさと皿を下げて、部屋に戻るとしよう。
「……」
長しに皿を置き、水を出す。水というより、お湯だが。
水につけ置きしておかないと、これは洗うのが面倒なのだ。そこも難点だろうか。
「……」
ジワリと、油が浮かんでいる。
―それなりに油って摂取してんだなぁ。
別段ダイエットしているわけでもないので、気にはしないが。
なんだか、胸焼けがする。