2月2日(朝)
目が覚めたら、家の中に誰一人としていなかった。
―まぁ、それは割といつものことなのだが。
何せ家族全員、自分より出勤時間が早い。自分が遅いとも言える。
ただ。
確か、学生の妹は、2月から自宅待機だなんだと言っていたと覚えているが……。出校日というやつだろうか。
2月に入って早々……というのはなんだか、気が削がれる。
あぁでも、そんなことも言っていた気がする。
今日成績の発表があって、赤点があればどうの、なければどうのと。
自分には関係ないので、忘れていた。他人の成績なぞ気にしたこともないから……家族だろうと。どうでもいい。
まぁ、先に生まれた人間として、赤点の回避ぐらいは祈っておこう。
―赤点取って、2月いっぱい学校いけるといいね。
「……」
それはさておき。
我が家は二階建ての一軒家なのだが。
一階は、リビングとか風呂とかキッチンとか、そういう生活するのに必要なものがある。
二階は、各自の部屋という感じで。
大抵の家はそんな感じだと思っているがどうなのだろう。他人の家に行くことがあまりなかった身なので、よくわからない。
まぁ、そんな我が家で。
タイマーの時間を大幅に過ぎて目を覚まし。
「……」
寝起きの頭で、一階に降りてきた。
ら。
リビングの机の上に、りんごが剥かれて皿に盛られていた。
我が家は母の趣向で、毎朝こうして何かしらの果物が置かれている。
ここ最近は、毎日りんごが居る。たまに苺があったな。
「……」
正直、りんごは好きではないので、置かれても食べることはない。
―あの味自体は気にならないので、食べられなくもないのだが。
「……」
どうも、あの触感と、酸化したりんごの見目が、得意ではないのだ。
なんというか……。
シャリシャリとしたあの触感は、昔間違えて口にした、砂のような感じがしてしまってダメだし。
あの水分量を考えると、泥の方が近いのかもしれない。
―なかなかにやんちゃな子供だったのだ。なんでも口にしてたらしい。それのせいで、こんな訳の分からないトラウマじみたものができてるんだから、世話ないな。
「……」
あとはそう。
酸化して、黄色く変色していく様が……朽ちていく感じが。
それを口にしたら、ダメなような気がしてしまう。
ヨモツグヘイ―とまで言わずとも、そんなもののような気がしてならない。
杞憂もいいところだろうが。
「……」
口にしたら戻れないなんて、そんなもの。
考えただけで身が震える。
死にたいとは思えても、生きたくないわけでもない。
「……」
余計な知識を身につけると、訳の分からない気持ち悪さに襲われるのは、なんなのだろうなぁ。
何も知らなかった幼い頃なんて、そんなこと気にもしなかったのに。
「……」
今更嘆いたところで、意味もないか。
忘れようとしたって、忘れられるものでもなしに。
「……」
朝から嫌な思考回路なこって。
鬱々としたくないなら、楽しいことを考えなくては。
さてさて、今日は何をする。
なにをして、心を溶かす。
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