2月3日(昼)
帰宅すると、炬燵の中に下半身を沈めた妹がいた。
―こういうのを見ると、イラっとするのは私だけだろうか。
仕事を終え、心身ともにすり減らして、どうにかこうにか生きて。
心休まる家に帰ってきたら。
何をするでもなく、ただ携帯をいじっているだけの人間が、炬燵でぐうたらとしている。
―言語化するとさらにイラつく。
心が狭いと言われれば、それまでなのだが。広くはないし。
実家暮らしをしているから、別に、私がコイツの生活費を賄っているわけでもない。
ただひたすらに「私は働いていたのにコイツは一日ぐうたらしていた」という事実が、やけに頭に来るのだ。
「……」
ふぅ。
帰宅早々、脳内の治安が悪いぞ私。
今に始まったことじゃない。これは今日から毎日起こるんだから、こんなの毎日繰り返せるか。そんなのいくつ心臓があっても保たない。
―なんで赤点取らなかったんたコイツ……。
まぁいい。もういい。
「……」
それより昼食を食べよう。
午前中だけの仕事とはいえ、減るものは減る。
更に今日は、苦手な人とのマンツーマン状態での仕事だったので、精神もすり減っている。
こういう時は、甘い菓子パンでも食べるのが一番だ。
「……」
昨日あたりに買っておいた、チョコ味の何かしらのパンがあったはずだ。
……あった、あった。
これと。あとは、ひたすらに甘いだけのものは食べられないので、口安めにスティックのカフェオレを淹れておこう。
「……」
職場にもっていっていた、水筒を、適当に流しに置く。
そのまま、ケトルを手にし、水を淹れ、スイッチを入れる。
流れ作業で、そのままカフェオレスティックを取り出し、もう片方でマグカップに手を伸ばす。
「……」
これは、とある乳酸菌飲料の、キャンペーンか何かで手にしたものなのだが。内側に、おいしく飲める目安の目盛りが入っている。
私はこれを参考に、カフェオレを飲む際の、お湯の量の目安にしていたりする。
乳酸菌飲料があるときは、それはそれは活躍するのだが。正直そこまで頻繁に飲む家庭ではないので、企業の意図した形で働くことはあまりない。
―申し訳ないとも何とも、思ってはいないが。
「……」
ん。
さてさて、お湯が沸いたようだ。
お気に入りのマグカップに、お気に入りのカフェオレ。好きでもない、初めて食べるチョコレートのパン。
今日の昼はそんな感じで。
「……」
妹の居座る机の反対側に陣取り、食事を始める。
がさりと空けた袋の中から、甘い香りが鼻をつく。
それを一口食べ、飲み込み。カフェオレでさらに流し込む。
甘いチョコレートのおかげで、カフェオレの苦みの方が主張されるが、それもそれでおいしい。
割と個人的にはおすすめな食べ方なのだが、母親にはあまり好評ではない。
「……」
食べては飲み込み流し込む。
それをひたすらに繰りかえし、減った腹と精神を満たす。
「……」
最後に、マグカップを限界まで傾け、液体を残らず口に流し込む。
「……」
カップの内側には、目盛り。
それと、茶色の液体の跡が残る。
「……」
張り付いた泡のような、その跡は。
どこか不安定な形をしていて。
日々揺れ動く、心のようにみえた。
なんて言ってみる。
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