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さい視点「天国はまだ遠く」を読んで

心地いいけど居場所はここじゃない、と判断できた主人公は賢い。
でも、と少し考える。
自分の居場所がどこかなんて、きっとずっとわからないままだ。「自分の居場所なんて誰かの心の中にしかない」って言っていたのは誰だっけ。

似たような話を知っている。
吉本ばななの『ハゴロモ』もそうだった。
限界がきた女性が片田舎でじっとしてゆっくりと回復していく話。
人間の回復に必要なものとして2つの話に共通しているのは、圧倒的な自然と、人の温もり。人と離れたくて田舎(自然)に引き寄せられるのに、結局人を癒すのに必要なのは人の温もりというのは皮肉な話だ。

人は、誰かと一緒にいたいのに、それがストレスになりうるジレンマを抱えている。一緒に住みたいけど一人にもなりたい。職場の人間関係に巻き込まれたくないけど、一人きりは嫌。絶妙なバランスというは意外と難しくて、人間を人間らしくする要素はここにある気がする。

息が詰まってどうしようもなくなったら、遠くへ行きたい。
行ったことがない遠くへ。
ふと思い出した大切な人に手紙を書きたい。
湿った葉の匂いを嗅ぐ。
大きく深呼吸を繰り返す。
自分を守るために。



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