書評(『少女と二千年の悪魔』)

「君を食べてあげようか?」
 幸せだったはずの12歳の誕生日にすべてを失った少女・マリィが、魔女キタカゼが残したひとかけらの"希望"に縋りながら成長していく物語が本作である。
 多くの物語において、悪魔という存在は人を欺き、魂を喰らう"悪"の象徴のように描かれる。しかしながら、本作に登場する悪魔は魔女キタカゼからマリィを"護る"ためにその姿を現す。二千年という長きに渡る約束を果たすために。
 孤独は時として人にすべてを失ったかのように錯覚させる。孤独を感じた人間にとって"希望"は同時に"呪い"となる。かつて、哲学者のサルトルは"人間は自由の刑に処されている"という言葉を残した。サルトルは人間の実存が不安定であることを自覚した上で、自由な主体として生き、世界と関わることが混沌とした時代を生き抜いていく希望になると考えていた。少女と悪魔の紡ぐ"希望"の物語が、私に人生を歩むことの意味を思い出させてくれた。

書評
藤原靖浩(顧問P)

著者
みこ

2020.01.06
本編↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054934545825

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?