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K川県からの脱出(2)

【導入2】
 舞台となるのは、20XX年の春のT市、周辺の県とは隔絶された都市である。
 この街では、ここ数年、一部の過激派によるネトゲ法違反者への集団暴行事件、短期強制移住者を標的にした村八分・集団いじめによる対象者の自殺事件等が発生していると、ネット上では騒がれているが、県外からは真偽を確かめることはできない。
 探索者たちがこのT市を訪れることになるのは「短期強制移住プログラム」に選出された男性にして、探索者たちの友人である「初月 海」(はちづき かい)を救出するためである。
 初月 海は、インターネット上でMMORPG (Massively Multiplayer Online Role Playing Game、マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム)をほぼ毎日のようにプレイしていた。探索者たちは、全員、初月 海のゲーム仲間である。オンライン・ゲーム上で出会った関係ではあるが、チャットで会話をする内に、お互いが比較的近隣に住んでいることを知り、オフ会で実際に顔を合わせるようになっていた。初月 海は、専門学校を卒業した後、数年間はゲーム製作会社に勤務していたが、激務で身体を壊して退職してからは実家で暮らしているとのことだった。時折、在宅勤務のできる派遣のような仕事を受けることはあったらしいが、本人はニートと言われても否定することはなかった。そのため、MMORPGにいる時間は、探索者たちより長かった。
 そんな初月 海が、ここ1週間、まったくゲームにログインしていない。チャットやダイレクトメールで連絡を試みるが、読んでいる様子もなく、返事はない。
 探索者たちが初月 海の安否を気に掛ける中、突然、ゲームにログインがあり、「初月 海の弟」を名乗る人物から「兄がK川県の短期強制移住の対象になった」と知らされる。短期間強制移住の対象者は、政府が無作為に選出するとは聞かされていたが、まさか初月 海が対象になったとは誰も予測していなかった。初月 海の弟を名乗る人物が言うには、「現在は実家にある兄の部屋からログインしている」「兄はスマートフォンと財布以外すべての持ち物を置いて、強制移住させられた」らしい。そして、数日前、兄から「俺はK川県で暮らす、実家には戻らない」という短いメールが送られてきた。そのメールに違和感を覚え、「兄がそんなことを考えるはずはない」「何とかして兄をK川県から救出したい」と考えているとのことだ。
 探索者たちは「初月 海の弟」を名乗る人物からの依頼を受けて、K川県に乗り込み、初月 海と合流、その後、K川県を脱出しなければならない。

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