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N / biasと思想の旅

4ヶ月ぶりに降り立った東京の地の匂いを纏い、翌日のライブに向けて気持ちと体を整える最終段階に入っていく。
ホテルのチェックアウトを済ませ重たいキャリーケースとおさらばしたら、桃の看板を掲げた某中華ファミリーレストランで夕飯を済ませることにした。家族でひしめく店内の音をBGMにしながら青椒肉絲に海老餃子、まぐろの漬けをキリッとしたレモンサワーで流し込んでいく。長時間の移動と慣れない地の雰囲気に若干疲労を感じていた体に歯ごたえのある食感と爽やかな檸檬が染み渡り満たされていった。


食事が終わる頃にはお店の営業が終わってるかもしれないからとケーキ屋さんで先に買っておいたストロベリーミルフィーユとアップルパイの箱を慎重に持ち歩き、無事に帰宅してデザートとしてまずはストロベリーミルフィーユをぱくり。甘酸っぱさと薄く幾つも重ねられた生地の層の段々とした歯触りがとても楽しい。流石に一気に2個食べることは出来ず、2日目のライブに向かう前の朝食としてアップルパイの上だけを味わうことになるのだが。
胃袋も満たされ湯を張って体を癒したら、頭のてっぺんから足の先までありとあらゆるスキンケアをしっかりして濡らしたタオルをドアノブにかけてしっかり睡眠を取る。ホテルでの乾燥対策が現場前のメイクのノリや喉の潤いを良くすると言っても過言ではない。

朝すっきりと目覚め、ライブのコンセプトに合わせたグレーのカラーコンタクトを装着してお気に入りのメイクを顔に施したら、友人と原宿で待ち合わせをしてお気に入りの喫茶店で食事をする。それぞれお気に入りの小さなぬいぐるみを飲み物と食事に添えて撮影して落ち着いたら、マスターが静かに注いでくれたヴェルヴェットティーをこくりと口に運ぶ。チョコレートの甘い香りが鼻腔をくすぐって、リラックス効果に誘導された体は目的はさておき家に帰ろう、と訴えるほどだった。お気に入りのあつ焼きのタマゴサンドと酸味が強めのキーマカレーを頬張り、デザートの青のクリームソーダで血糖値をしっかりと高く上げた。


ほんの少しぼんやりする脳を抱えながら向かった池袋で、周年を迎えた愛らしいピンクと黒のうさぎ達の展覧会をめいいっぱい楽しんできた。カチューシャも装着してしっかり浮かれてきて、夢の国で「みんなで着ければ怖くない!」と楽しむ人達の気持ちが初めて分かったりした。カメラロール上の写真の枚数も増えるばかりなわけだ。


乗り物を乗り継いで乾いた潮風の冷たさに奥歯をかちかちと震わせて歩いた先に着いた有明のライブ会場。友人と共通の知人と会話をしてから、2日とも運が良いとは言えなかった座席に着席。高揚と緊張が入り混じった心臓と胃を抱えながら、色々な界隈で話題沸騰売り切れ御免となっていたペンライトとこの日の為に作ったうちわ、1年ぶりの彼を隅々まで瞳に焼きつける為の双眼鏡を身につける。そして始まりのオープニング、上がる幕――。
初っ端から飛ばされる「ピカレスク」から始まり間に挟まれた嘲笑も含まれた「ヒトゴト」、その後挟まれるアイドルソングと上空からのフライングの演出に「スタンド全体にも届くくらいSHOCKを超えるくらいのフライングをしてほしい」と話していた伏線が回収されることとなり度肝を抜かれる。
初日は精悍な顔つきに比べ所々抜けている愛らしい場面があって彼らしく変わらない部分があるところに安堵して笑みが止まらなかった。個人的ハイライトは酒と鮭のイントネーション。
「Scene29」でスクリーン映し出されるアルバムのような演出から、アイドルとして磨かれることによって輝きと煌めきを身に着けていった人なのだなと涙ぐみ「Jasmine Tea」で肩の力を抜けた後に投下された「ROSSO」の濃厚なダンサーとの絡みにリアルに恋をしているファンの心配をしつつ「ChapterⅡ」の衣装とメイクを合わせてくれたら昇天していたであろうと贅沢な願望を持ってしまった。
「jealous」のポップで爽やかな演出にペンライトを振りかざした後は「Nocturne」でNの入った旗を翻す姿を見て建国してー!!と拳を掲げたことは言うまでもない。
2021年からのオタク、古から愛されてきた数々の中島健人ワールドアイドルソングを生で新鮮に浴びつつ、慣れないコールも周囲のファンの熱量に促されて腹から声を出して喉を枯らすことが出来ました。初日のケンティーも中盤で声を枯らしていたけれど、翌日からコントロール出来ているようで安心した。「迷夢」でしっとりと歌い上げる表情と歌声の揺れに、濃厚だった昨年の色々な「あの日」を重ねてみたりなどをした。
1度セット裏に捌けた彼に声帯と肺活量の限界まで彼の名を届け続ける。この時の会場の一体感が改めて好きだ。焦らされること数分、代表曲であり相思相愛を体感出来る「CANDY 〜Can U be my BABY〜」が流れ、念願のLOVE KENTY!コールを最大音領域で叫び「Unite」でフィナーレに相応しく踊った後はケンティーの「LOVE?」の問いに「ケンティー!!」と愛の砲弾を打つ。煌めきの余韻を残したままの閉幕はいつだって寂しいし、愛おしい。

2時間半ほとんど立ち続けて浮腫んだ脚で、打ち上げをする居酒屋やワインバーまでの道程を移動することは大変だったけれど、興奮冷めやらぬテンションのまま友人達と味合う日本酒やワイン、天ぷらや生ハムは格別な味だった。聖地巡礼と称して予約していたもつ鍋屋で胃に収まりきらなかった〆の麺に心残りはあるが主である肴は言うまでもないだろう、酩酊していたい夜になった。

前夜に湯船に浸からなかったことを後悔するほどの肉体的疲労に鞭打って、昼食に友人と夢の国の某リスのキャラクターのコンセプトカフェでパンプキンパスタを啜りお礼を伝えて別れてから、向かった羽田空港でお土産を買うことに成功。これも旅の醍醐味の1つである。
 地元に帰り凍てつく寒さに現実に戻ってきたことで旅の終わりの寂しさを消すように、帰宅して自分用に購入した銀座のピクルスとひもかわうどんを胃に入れて荷解きを終えたらぐっすりと熟睡した。12時間。

麗しく気高く愛らしい彼との時間は終わりを告げないようだった。4月から各都市を巡るホールツアーもお楽しみに。いや、全力で楽しみたいと思っている。まずは席がご用意されることを祈って。
最後にお決まりの愛のコールを再び叫んでおきたい。LOVE KENTY!

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