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ヌマガエルを食べた話

【はじめに】

さて、今回はカエル、その中でもヌマガエルというカエルを食べた件について紹介していこうと思います。

※写真はありません。撮ってはいるので、ご興味があればメッセージ等ください。

※この記事は、ヌマガエルの食材としての絶対的な安全性を保証するものではありませんし、本種を食用とすることを推奨するものでもありません。もしも実践される場合は、あくまでも自己責任でお願いします。


【ウシガエルとヒキガエル】

さて、「カエルを食べるの!?ゲェ〜ッ…」って方でも、大多数は「食用ガエル」がいること、そしてカエルを食べる文化圏がそれなりにあることなどはご存知なのではないでしょうか。

ここでよく挙げられますのが、まず「ウシガエル」です。こいつは前述した「食用ガエル」の代表であり、特にフランスや中国などではよく食べられていますね。
僕もいただいたことがあるのですが、上等な鶏肉のような味わいに微かな魚の風味があり、美味しかったです。

とはいえ、今や日本の至るところに生息し、生態系に与える影響が懸念されるほどの定着を見せている本種も、食文化の方には定着しませんでした。1917〜1919年に、食用としてアメリカ合衆国から移入され、当時の農商務省(今の農林水産省)が養殖を奨励しましたが、その頃から日本国内では殆ど消費されなかったんですね。

さて、次に「ヒキガエル」。こいつは、一部では食材として有名ですね。
ブフォトキシンという毒を持つのですが、肉自体に毒はないため、注意して皮を剥げば大丈夫なようです。ただ、かなりの手際の良さが要求されるでしょうね…。インターネット上でそういったブログなどを開設されている、僕などよりもよほど野食に明るい方でさえ、毒液を肉に付けずに上手く捌くことは難しいようです。

僕はまだ食べたことがありません。探してるんですけど、意外に見つからないんですよね…。
美食家としても知られる北大路魯山人などは、『蝦蟇を食べた話』において、このヒキガエルを絶賛しています。

https://www.aozora.gr.jp/cards/001403/files/54977_48524.html


僕の今回のnoteの題名も、これが元ネタですね。

食材として用いた旨の記述の多さについては、ウシガエルのそれには遠く及びませんが、ネット検索でも書籍でもちらほら見られます(書籍では他にも『ゲテ食大全』など)。
僕が勝手にリスペクトしている、野食系YouTuberのカメ五郎さんも、「【自然を食べよう!】山菜とカエルの塩スープ編」においてヒキガエルの肉を紹介されています。

他にも、今や保全状態が危ぶまれているアカガエルなどは、一昔前の山間部でよく食べられていました。

【ヌマガエル】

さて、ようやく題にある「ヌマガエル」の話に入ります。今回僕が食べたこのカエルは、上記の連中よりも一回りも二回りも小さく、茶色の体色を持つ種です。流石にアマガエルよりは大きいですけどね。

「ツチガエル」とも似ていますが、ヌマガエルは腹部が真っ白です。これが形質上、最もたる違いかと思われます。また、背中に一本の白い線が通っている場合もあります。
(ちなみに、ツチガエルの食味については『カエルを釣る、カエルを食べる 両生類の雑学ノート』という書籍で紹介されています←訂正です。僕の記憶違いで、ツチガエル特有のニオイにしか触れられていなかったかもしれません。今、本が手元に無いので、確認して追記します)

場所によっては国内外来種に指定されていたり、要注目種であったりします。
僕が住んでいる静岡県では特に指定がありません。元々は県内における一部の地域のみでよく見られたようですが、近年は急速に生息域を広げており、県内の至るところで大量に生息するようになったみたいですね。


さてさて、このヌマガエル、特にウシガエルを狙ってフィールドワークをした経験がある方にとっては「お前じゃねぇよ!」なカエルの筆頭ではありませんか?
ウシガエルと同じく水田などに住んでいますし、やっぱりカエル探してる時に「ポチャン!」って水音がしたら首が捻じ切れそうな勢いでそっち見ますし。そんでコイツだった時は、「お前じゃねぇよ!」ってなると思うんですよ。

まあ、僕も今まではそうでした。しかし、今日はどうにもこうにも、両生類か爬虫類の肉を食べたかったんですよね。
そんな時にフィールドワークをしていたら、そこそこ太ったヌマガエルが現れたんですよ。もうそんなん、とりあえず確保してみるしかないじゃないですか。

そういうわけで、とりあえず確保した。その後インターネットで調べてみたら、「食べた」って記述が全然無いんですよ。
「ヌマガエル 食べられる」、「ヌマガエル 食用」、「ヌマガエル 食べた」「ヌマガエル 野食」などなど色々な検索ワードをかけてみましたが、見つからない。

その上で、です。どうも、取り立てて毒性も無いみたいなんですね。まあ、微弱な毒も含めれば多かれ少なかれ毒を持っているのがカエルという生き物らしいので、本当に無毒と言っていいのかどうかは分からないですが、少なくとも取り上げるほどの毒性は無いっぽい。
事実、捕食者から不人気なヒキガエルと違い、ヒバカリやシマヘビのみならず、我々と同じ哺乳類であるイタチやタヌキ辺りにも捕食をされているようなんです。

さて、ここでいくつかの事実が見えてきました。

①、少なくとも我が県においては、保全状況が危ぶまれているわけでも、その他法的な規制があるわけでもない。

②、どうやら強力な毒があるわけでもない。

③、今のところ、少なくとも「ヌマガエルを食べた」という報告は見られない。

じゃあ俺が食いましょう。


僕の前に道はない
僕の後ろに道はできる
ああ、自然よ
父よ
僕を一人立ちにさせた廣大な父よ
僕から目を離さないで守る事をせよ
常に父の氣魄を僕に充たせよ

(高村光太郎『道程』より)


【捕獲】

実家の近所の山のふもとにある、小さな用水路の横を歩いていると、茂みからぴょんと飛び跳ねて水路の中に逃げようとします。水場の近くならゴロゴロいます。カエルなのでゲロゲロですけど🐸
そこを網で抑え、逃げ場を無くして鷲掴み。今回はお試しということで、2匹だけとりました。

【捌く】

カエルの捌き方は、ググればいくらでも出てきます。僕は、前述したカメ五郎さんの捌き方を踏襲しています(そのやり方が出てくるのも、同じく前述した「【自然を食べよう!】山菜とカエルの塩スープ編」2/2です)。全く同じ要領で捌くことができました。
シメる前に祈りを捧げる所も完全にトレースしています。

カエルをシメる時は、まず後ろ足を握り、コンクリートの角などに思い切り頭を打ちつけるのですが、ここで下手な手加減をすると無駄にカエルを苦しめることになるし、痛々しい様子でピクピク動く獲物を見るのは、こちらとしても精神衛生上よろしくないです。
食うと決めたのですから、一思いに一撃で絶命させます。

そして皮を剥ぎ、傷つけないように内臓を取り出し、恐らく食道に位置するであろう箇所を本体と切り離します。
これで完成なんですが、僕は、その、こんなことやってて本当に今更なんですけど、頭部および手足の先端がビジュアル的に苦手なので、ここも落としました。

さて、思ったより肉がありますね!特に、カエルの可食部として代表的な後ろ足のモモ。勿論、前述したウシガエルやヒキガエルとはサイズからして違うので、そこまで過度な期待は寄せるまいとしていたのですが、なんともプリプリとして「肉!」という感じがします!
いいですね、美味しそう!これは期待できるぜ!

手が川魚を捌いた時と同じニオイに。

【調理】

最初ですので、シンプルに塩焼きでいただきます。
よ〜く手を洗って調理に取りかかりますよ。寄生虫ほんとこわい。カエルはあの悪名高き広東住血線虫の宿主でもありますからね。

焼いていると、なんとも香ばしい、良い香りに。鶏皮を焼いている時のニオイと似ています。カエル肉は魚と鶏の中間のような味わい、とよく言われますが、これは匂いにもよく表れます。生だと魚、それも川魚特有のドギツイ生臭さですが、これが炒めると一転。美味しそうな鶏肉の香りとなるのだ。
まあ、カエルの生臭さは恐らく肉ではなく、殆ど皮に集中しているんですけどもね。

焦げないよう弱火で、よ〜〜〜く火を通していきます。いやもうほんと、何度でも言いますけど、寄生虫や病原菌が怖いからね。カエルに限らず、野生のものを食べるなら完全に火を通します。
中には、野生のものでも生で食べる人もいますが、ちょっと自分にはそこまでの知見も技術も経験も度胸も無い。まだ死にたくない。

【実食】

結論から言いましょう。美味い。カエル肉らしくクセがないのに、噛むほど旨みが滲み出てくる。

なんと言っても、焼いただけなのに骨が気にならない。丸ごとバリバリいけます。
これ、素揚げとか唐揚げにするとよりGOODなんじゃね?

今回はお試しってことで2匹だけを塩焼きにしたけど、この豊かな旨みとクセのなさ、そして食べやすい骨のコラボは色んな料理に活かせると思います。かなりのポテンシャルを持っているのでは?

元々、今日はサワガニをとってきて唐揚げにしようと思ってたんですよ。思いっきり旬外れてるけど、ポリポリつまめる野食が欲しくなったんですよね。
ただまあ、いずれにせよサワガニって、そこまでして食うほど美味いかというと微妙なんですよね。いや、美味いんですよ?美味いんですけど、そこまでして食うほどかと言うと。
がん漬けなんかだとサワガニの旨みを存分に堪能できるようなので、そのうち買ってみようかなと思ってますが(がん漬けだと寄生虫は死ぬらしいけど、それでもやっぱ野生の食材で火を通さないものを自作するのは怖すぎる)。

まあ、そんなこんなで「うーん、だったらやっぱりサワガニよりも今日は両生類か爬虫類を食べたいなぁ…」となったわけです。
でも、同じ「丸ごとポリポリつまむ」なら、これヌマガエルで正解だったのでは。肉の感じもきちんとありますしね。

調理に使った器具を熱湯で消毒して終了。何度でも言いますけど、本当に怖いんで。

というわけで、次回は素揚げか唐揚げにしてみようと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

それにしても、指に残り離れない生のカエルの匂い。

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