某激安ドリアの店

 私の目の前の席には、お昼休憩をとる会社員。手には、香り立つコーヒーの入ったカップが握られている。ここ、緑・白・赤がイメージカラーのカフェレストランでは、多くの人間が各々時間を過ごしていた。都会のど真ん中に構えてあるこの店で、客足が収まる気配はない。食事をするサラリーマン、おしゃれな女大生、早帰りのJK。片手にスマホ、テーブルにはノートPCと食べ終わったサラダの皿を展開している眼鏡マンは、ここをオフィスと思い込んでいるらしい。
 今回私がいただくのは、ミラノ風ドリアだ。スープとサラダがついてきてワンコインのランチメニューだ。スープは飲み放題、具は入っていなが、コンソメのいい香りと素朴な味は、私を十分温めてくれる。しかしここのドリアは何故こんなにも美味いのだろう。ソースの濃さ、チーズの焼き加減、米の硬さ、極め付けに完璧な半熟卵。誰になんと言われようと、手頃でハズレがないこの店の看板商品を批判する機会は訪れないだろう。       
 ここではいろんな人間を観察できる。あまりにジロジロみていたからと、喧嘩をふっかけられるのは勘弁被りたいが。人間観察は面白い。特に、ドリンク一杯で私より長く滞在しているやつを見ると話しかけたくなる。私と同じ、書き留める事をしている人間であれば、意見を聞いてみたい。最近だと選挙があったが足を運んだのかとか、ここのドリアで何回火傷を負ったのかとか。
 都心で繁盛している店でも、そこそこ人手不足であるように思えた。先程から私の前を同じ従業員が、席の用意と注文用紙の受け取りを淡々とこなしている。だが、私も飲食店に従事ていた時を思い出すと、平日昼ラッシュのこの時間に、この広さの店で表に3人は妥当なのかもしれない。きっとキッチンの人間が優秀なのか、システムがよく出来ているのだろう。
午後のエネルギーはチャージできた。順番待ちの同士とためにも、サッサと会計を済ませる事にしよう。

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