サファイヤ
7月の誕生石ルビーの記事でもお伝えしたように『ルビーとサファイヤは同じコランダム (corundum)で赤色の範囲に含まれる物はルビー、その他のカラーをサファイヤと宝石名称で呼んでいます。』ということで赤以外の様々な色、特に[黒色・無色]も含まれています。マルチカラーもとても煌きに趣きがあり魅惑的なのですが、個人的にはブラックとクリアーのサファイヤがその色のダイヤモンドと違って何かこうコレクション心とファッション感覚を刺激して、ふとデザインしてみたくなる宝石です。職人としても硬度が硬いのはとても嬉しく、様々なデザインの留め方が可能なのでデザイナーとしても気兼ねなくイメージできるのが魅力の一つです。
その中でも特にサファイヤと言えばブルー(青色)ですね。その色はチタンを含んで青色を呈したものとなりますが、その中でも『コーンフラワー(ヤグルマソウ)』のような深い青で透明感のあるものが最高級品です。
この青色を発色するメカニズムで一応の産地が特定されているというのが宝石鑑別の知識の中にあります。簡略に説明すると「コランダム【Al2O3】としては不純物としてかなり少量含まれる鉄【Fe】と、同じく不純物でその10分の1程含まれるチタン【Ti】とのイオン間の電荷移動による発色」ということが1976年に解明されたと宝石学の文献があります。この光のエネルギーによるイオン間の電荷移動のお話は内容が難しいので興味がある方はより詳しい理化学的な専門家の方へご訪問くださいとして、宝石学の見聞からするとこの仕組みで発色の綺麗な物を最高級品のカシミール産と位置付けられ有名でした(近年はインドのカシミール地方産地は枯渇してほとんど採掘されないそうです)。そしてその不純物の鉄【Fe】の濃度が高くなる事が基本的に多くの光を吸収するために黒に近くなり暗い青色が流通としては多いです。
正にこの事で産地によって微妙に色合いが異なる原因となりとても興味深い話です。
次に上質で希少なサファイヤとしてご紹介しなくてはいけないのが「パパラチア・サファイヤ」だと思います。ネーミングの由来はシンハラ語で「蓮の花」「蓮の花の蕾」とされていて、産出量が少なくく幻の宝石です。この「希少で幻」というキーワードによって世界中のコレクターや愛好家、そこにジュエリーとしての必需性も加わって急激に価格は高騰し枯渇しました。そうなると世界中の宝石業界はパパラチアのガイドラインである「桃色と橙色の中間色」という若干の赤色を含めた範囲が曖昧なことからそれを広げて鑑別書にパパラチアと表記した経緯があります。当初のパパラチアを見てしまっていると本当に見劣りするものが多く、やはり消費者もそこまでの価値を一見して感じる事が出来ず衰退しました。この業界の宝石をコマーシャル化する世界中の文化によくある事なのですが、いつもやりすぎな感じがしてしまいうのはそれだけ宝石という「手に入れたい」という欲求に需要を感じて何とか供給しようという節理によると感じています。
そして光の効果が驚きを感じる「スターサファイア」があります。ドーム型にカット(カボション・カット)された石の表面へ光のラインが交差するように浮かび上がります。それが本当にそのまま星が浮かんでいるように見えるので、その名の「スター」がついています。このスターが現れる原理は、石の結晶の中に細い針状のルチル(酸化チタン)が交差して規則的に並んでいて、この「ルチルの針」が石を透過する光を同じ角度に散乱させることで焦点がスターの位置に光を集め放つ状態です。という事でレンズを思い浮かべて頂けると解りやすいと思いますがドーム型のカットでなければ現れません。そして光の透過をやや防ぐなどの理由で底面は擦りガラス状の未研磨と言いましょうか、そのような状態がほとんどです。「スター効果」は三本が60°の角度ごとに交わるという事で三方晶系の鉱物などの結晶が六角形の柱状であることが条件となります。
最後に宝石業界の方々でもあまり聞いた事のない記事としては、今も良く知られている宝石に[薬]として利用されていた記録のある鉱物はいくつかあるのですが、実はサファイアも「強壮剤」や「解毒剤」として用いられた時代もあったのだそうです。
【産出国】
主要産地国 オーストラリア・ミャンマー・スリランカ・タイ王国・インド・カンボジア・タンザニア・ケニア・アメリカなど
【鉱物組成】
コランダム(鋼玉、【Al2O3】)の変種
硬度 : 9
比重 :4.0
結晶系: 三方晶系
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