「従業員さんが定着しない理由」本当にわかっていますか?【その2】事例あり
いつも記事を読んで頂きありがとうございます。
前回は入社してくる「新人さん」がヒントをもっているのではないかとお伝えしました。今回は【その2】として、会社が把握している退職理由と本人の本音の違いについてです。私が実際に担当した事例も交えてお伝え致します。
入社した新人さん達は、その会社で当たり前のようにルーティン化されている、もしくは慣例化していることに純粋に疑問を持つことがあります。
そんなときに新人さんの些細な疑問や違和感があると感じたことを客観的に受止める仕組みが必要だと思っています。しかしそんな新人さんたちも、いずれ慣例化している業務に慣れてしまい、良くも悪くもその会社に染まっていきます。
どちらが正しいかは別として「客観的にみた疑問」として耳を傾けることが必要ですね。
従業員の「本音」を聞くためには色々な手法があります。
① 従業員アンケート
② 上司との1on1やグループディスカッション
③ 第三者によるヒアリング など
①や②については従業員満足度の向上やマネジメントの一環として実施していると思います。
①の従業員アンケートは形式的になってしまうこともあり、アンケートでは簡単に引き出せないこともあります。とくに質問の仕方や回答者の心理的な問題により、本来出るべき結果とは異なるデータが集約されてしまうことも多くみられます。
②の1on1やグループディスカッションも、企画やマネージャー・ファシリテーターしだいで大きく変わってしまうことが懸念されます。そのため一定の成果をだすまでの仕組みづくりに時間や手間がかかります。
そこで、③の第三者によるヒアリングについて、従業員の「本音」(わがままではなく感じていること)を引き出す手法をご紹介します。
これは私が実際に担当した事例です。
ーーーーーーーーーーーーー 事例 ーーーーーーーーーーーーーーー
大手企業のエンドユーザーを対応する部門でのことです。
部門内の従業員は全国で約1,500名、拠点は約100拠点、統合や新しい体制をつくっていくために、新人を一定数採用していくとになりました。とは言え、以前からも3年未満の離職率が高い部門でした。
今まで各拠点から本部に報告される退職理由のほとんどが「家庭の事情」や「体調不良」でした。
そうなると採用部門としては一番採用しづらい若年層をターゲットにし、採用基準も更に厳しくせざるを得ません。そして採用する入口がどんどん狭くなり、現場からは欠員補充がなく、満足なお客様対応ができないという悪循環が生まれます。こんな状態では従業員満足度も向上しませんので、顧客満足度も向上するわけはありませんね。
疑問:本当に退職の理由は家庭の都合や体調不良だけなのか?
そこで会社として「従業員の本音」を聞き、本当の退職理由を知るべく、新人が入社した後、1週間、1ヵ月、3ヵ月、6か月、1年と定期的に「第三者」からのヒアリングを実施しました。「第三者」とはその部門や会社に属しているわけでなく利害関係にもない、いわば「外部」の人間です。新人が入社するときにこのシステムを説明しているので、本人達からもスムーズにヒアリングができます。
内容的には、込み入ったことよりも体調、睡眠、疑問に感じたこと、どんな流れで業務をしているかなど一般的なことです。
その後、別のタイミングでマネジャーからも本人の現状を上司としてどう感じているかをヒアリングします。
一定期間、両者をヒアリングすることで、課題に対するヒントが生まれます。
・本人が悩んでいることとマネージャーが感じていることの違い
・自己評価と上司からの評価の違い
・新人に対してどんな環境なのか
特に同じ拠点で複数名を実施すると、起こっている事象の信憑性も上がります。このヒアリングを新人が入社している全拠点の本人・上司と個別に実施をし、傾向を分析していきました。そして同時に退職が決まった人にも退職日の数日前に「イグジットインタビュー(退職者ヒアリング)」も実施しました。(こちらは次回以降詳しくお話ししたいと思います)
個々のヒアリングや傾向を分析した結果、退職に至る理由で「家庭の都合や体調不良」はおおよそ20%前後でした。
その代わりに、退職に至る理由として見えてきたものは「孤独感」「人間関係」「知識習得の苦労」「マネジャーへの不満」「会社の方向性への不満」など・・・
「家庭の都合」や「体調不良」はほんの一部です。
これだけでおわかりかと思います。退職する人は本当の理由を言いません。(理由は次回で詳しくお伝えします)
このように
本当の問題を可視化して、改善に取り組まなければ課題解決に至りません。
社内の人間同士や本人だけのヒアリングでは、困っている本当の理由にたどり着けないことも多々あります。
生産性を向上させ業績を向上をしていくには、問題を可視化していくことが一番重要なプロセスです。
大きく括ると
①従業員が退職してしまう本当の理由をみつける
↓(手段の一つとして「第三者」ヒアリングが有効)
②退職に至ってしまう理由や生産性を下げてしまう阻害要因をみつけ、働きやすい環境をつくる
↓(阻害要因を取り除く)
③正しい施策を実施する
↓(生産性向上や顧客満足を実現するためアクション)
結果、従業員満足・エンゲージメント・業績向上につながる。
当たり前ではありますが、このステップが重要になります。そして「人」を正すのではなくエンゲージメントが向上する「仕組み」を作り、繰り返し実施していくことが重要です。
実施以降、この企業では採用基準を厳しくすることではなく、ポテンシャル採用や新しい選考基準をつくり、多くの人に働く機会を与えられる採用方法に切り替えます。その代わりに、新人の受入れ態勢の整備、研修方法の改善、マネジャー指導、経営方針の浸透などに改善時間を費やしました。以降、離職率も下がり、生産性が向上し業績好調を維持しています。
定着しない本当の理由にたどり着いたことが、業績好調を生み出したという事例です。
V&F国際人事では専任の人財コンサルタントが貴社の「第三者」として、公平性を保ちつつ客観的な目で問題を可視化する仕組みを取り入れています。可視化できた問題を解決するために、私達は経営者の方々と寄り添ってサポートしてまいります。
次回は「退職者」の本音について考えてみたいと思います。
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次回は「退職者の本音」について考えたいと思います。