偏愛音楽 vol.1「mudy on the 昨晩」
突然だが、クラシック以外のインスト曲がスマホに入っているだろうか?(クラシックをインスト(無音声)と呼ぶのも違う気がするが)
大概の人がないと答えるはずだ。またあったとしても、あるのはおそらくアルバムになぜかある1分もない短い曲や映画やドラマのサントラなどが多いだろう。インストアーティストの曲は多分入っていない。そもそもインストのみで活動しているアーティスト自体が少ないからしょうがないが。
インスト専門のアーティストとでいうと一時期DEPAPEPEが流行った。
CMなどでも使われていたから聞いたことがあるかもしれない。夏を想起させるさわやかないい曲だ。
なんとなく歌詞の無い曲というとクラシックを思い浮かべ、とっつきにくく思われるかもしれない。しかし、DEPAPEPEのように聴きやすい曲があることも知ってほしい。DEPAPEPEはアコースティックギターの聞きやすいメロディ故『キャッチ ア ウェーブ』という映画(三浦春馬の初主演作)の劇伴を制作してもいる。
劇伴で有名なインストアーティストといえば、2017年に放送されたドラマ『カルテット』で一躍有名になったfox capture planがいる。
いまや、現在公開中の『コンフィデンスマンJP』シリーズ(これまた三浦春馬出演作)をはじめとして、様々な作品の劇伴を担当している。
あとは東京スカパラダイスオーケストラやSOIL&"PIMP"SESSIONS、PE'Z、→Pia-no-jaC←などもインストアーティストと言えるだろう。
前置きが長くなったが、今回紹介したいのはそんなインストアーティストの一組、mudy on the 昨晩だ。「ムーディ・オン・ザ・さくばん」と読む。
出会いはこの曲。当時、iTunesには「今週のシングル」という新進気鋭のアーティストのオススメ曲を紹介し1曲無料でダウンロードできるコーナーがあった。借りてきたCDを読み込む間の手持無沙汰をそれでつぶすのが毎週の日課で、そこにあったのがこの曲。調べたら2008年の3月17日からの週に公開されていたものらしい。もう12年前だ。
激しいギターサウンドからやわらかな曲調に変わったかと思えば、また元のメロディーラインに戻り、さらにそこから展開し、激しくテンポアップした後また、メインのメロディに戻ってくる。2:44の中に濃密な展開が収められている。とてもそんな短い曲と思えない。でも短く感じる。終わってほしくないと思ってしまう。この文章を書くために何度も聞いているのだが、毎回「え、もう終わり?」と思ってしまうのだ。「パウゼ」=「pause」=「一時停止」という曲名の通り、メインのギターは音を繋げず単音の連続で始まる。そんな実験的なことをしているのに、聞きやすくキャッチ―だ。
フェスなどに出ていたりもしたし、9mm parabellum bulletのメンバーが期間限定でメンバーになっていたりもしたから知っている人も意外と多いのかもしれない。だが、インストの中でもピアノやジャズテイストのクラシックよりのサウンドではなくエレキギターのとがったサウンド、ギター3ベース1ドラム1の変則5人組の多重奏による爆音となかなかとっつきづらい音楽性だ。激しい音楽だもんでなかなか劇伴にするのも難しそうだ。未だに「mudy on the 昨晩」を知っている人に生で会ったことがない。
というわけで、あまりまだ知られていない(だろう)アーティストを勝手に特集する企画、「偏愛音楽」の第一弾として「mudy on the 昨晩」を取り上げたい。YouTubeに載っているものでオススメの曲を以下で紹介する。今年からiTunes、apple music、Spotify、Google Play Muisc、AWA、レコチョク、OTOTOYなど各種配信サービスでも聞けるようになったようなので、ぜひ聞いてみてほしい。
文句なし。疾走感という名のドラッグ。この曲も展開がものすごい。「YOUTH」というだけあって青春の生き急ぎ感と哀愁が伝わって来る。
同じフレーズを3回繰り返した後、巻き戻すところがかっこいい。銃のリロードのよう。この曲はサビ、Aメロ、Bメロ、サビ、Cメロ、B’メロ、サビという流れなのでJPOPと同じような構成で聞きやすいかもしれない。
この曲も2:01と普通のJPOPなんかに比べるとかなり短い。だが、展開が多いため短さを感じさせない。歌詞がない分、普通の曲構成とは趣を異にした展開が多いのが「mudy on the 昨晩」の特徴。なんならギターがしゃべってるようにさえ感じる。
こんな悲しい旋律を奏でたりもする。この曲が好きなら「夕日の」「夜が入ってくる」もオススメ。
とうとう、インストアーティストなのに歌詞入れちゃった。といっても「ア」と「オ」だけなんですけど。こんな感じで奇声や声が入ることはある。でも歌詞ではなく、あくまで「音」としての声。
YouTubeにあがってるのでいいうとこんなところ。公式の動画がないから貼らないけれど「ZITTA」「N/J」「IDEA」「lookius」「エゴ・ダンス」なんかもオススメ。アルバムでいうと「pavilion」はハズレなし。
そんな勝手にお届けした「偏愛音楽」ですが、「何で急にそんなことを」と思って人もいるやもしれませぬ。なんでかというと、ひとえに「mudy on the 昨晩」を紹介したかったから。というのも、最新のアルバムが出たのが2012年6月。8年前! 初ボーナスでそのCDを買って以来、一曲も出てなかったんです。しかもライブも本拠にしてる名古屋でしかほぼやらないからいけないし。
そんな中、この5月に「R.O.D」と「2006」が発表。ライブでやっていた作品の初音源化らしいですが、突然の音源発表に俺歓喜。「HUNTER×HUNTER」か「ベルセルク」かはたまた「ガラスの仮面」かってくらい間あけてのリリースで衝撃。正直このままフェードアウト解散かとも思っていたのでめちゃ嬉しい。展開が多く聞いてすぐ「好き」となる曲ではないことが多いので、何回も大事に味わって聞いてます。8年ぶりにお気に入りのアーティストが新曲発表した時の喜びよ。これを誰かに伝えたくて、わざわざマガジンを作ってまで記事を書いた次第です。「mudy on the 昨晩」知ってる人いたら教えてほしい・・・!!!
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