大阪を「知る」旅⑤―”骸骨芸術”が導いてくれた一杯のテキーラ―
国立民族学博物館見学後、北浜に戻り、夕食を取った後、ホテルの近くにあるバーへと向かった。テキーラを飲むためだ。
国立民族学博物館の特別展ではメキシコの骸骨芸術も紹介されていた。「カー(Kah)」というテキーラのボトルそっくりである。それを飲みたくなったのだ。仮にカーがそのバーになくとも、イイ感じのテキーラを飲みたい。その思いだけであった。
店内は常連の方たちで賑わっていた。バーカウンターはあるものの、インテリアの雰囲気は家庭的であり、お客さん同士の会話のボリュームも比較的大き目だ。東京や横浜で行く店にはなかなかない雰囲気の店である。
まずはテキーラのソーダ割りをいただく。いつも一杯目は軽めの度数のカクテルにしよう。そう思って注文したのだが、テキーラを遠慮なく使って作ってくださった、想像以上に度数が高い一品である。予想以上の度数ではあるものの、非常においしい。元々、テキーラを飲むことはほとんどない。個人的には苦手な種類の酒なのだ。しかし、そのお店でいただいたお酒は非常においしく感じられた。変な味がしないのが何よりも良い。
マスター曰く、安いテキーラだと、アガベを100%使っていなかったり、着色料を使っていたりして、それが味や酔いやすさに影響を与えるのだという。とはいえ、自宅にあるテキーラ(別ブランド商品)もアガベのみを使ったものであった。だが、自宅にあるボトルは熟成期間が短い。他の酒でも同じではあるが、蒸留所や熟成期間の違いが、こうも味が変わるのかと、改めて思う。
2杯目はDon Julio(ドン・フリオ)をストレートでいただいた。マスター曰く、「ちびちび舐めるように」飲んでほしいテキーラだそうだ。ウイスキーのような感じの香りがする。それでいながら、さわやかさと甘みも若干感じる。まさにマスターのお話の通り、ゆっくりと味わいながら飲むための酒だ。決してグイっと飲んで、酔うための酒ではない。
2杯目を飲みながら、マスターや常連の方から色々なお話を伺うことができた。地元のバーの話だけでなく、関東にあるおススメのバーの話、さらにはおススメのお好み焼き屋まで。おいしいお酒をいただくだけでなく、面白い話を色々と聞けた。それにしても、関西の方たちのジョークをふんだんに交えた会話は、聞いていて本当に心地よい。まるで国立民族学博物館で見たラテンアメリカ世界、それがそのバーにあるかのように感じるものであった。あらゆる会話にジョークをふんだんに交えながら、カラカラと笑い合う。そういうコミュニケーションこそ大切、そう思えた。
マスターから伺ったお好み焼き屋に翌日行こうとしたが、行列ができていた。オンライン哲学カフェの時間との兼ね合いもあり、今回は断念した。これは「次回への宿題」だ。こういう宿題があるからこそ、またその地へ行ってみようと強く思える。次回大阪に来るとき、紹介してくださったお好み焼き屋で食べ、その後バーへ伺ってみよう。今度はまた別のお酒を飲みに。
大阪の2日目は朝から晩まで、楽しむ・学ぶ、そしてそこから様々に考えさせられる1日となった。そこで得たものはおそらく直接的かつ短期的には何の効果もない。しかし、中長期的に見た時、いつかどこかで役立つだろう。もっとも、それらが「役立った」とは気づけないかもしれない。それでも、その「いつかどこかで役立つ」だろう経験は大切なのだ。
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