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金融機関との話

 ある金融機関とマンション管理組合に関してお話しする機会があり、マンション管理組合をどう捉えているのか、今後、どうなって行くと思われているのかなどをお聞きしました。

 まず最初に、マンション管理組合には多くの種類があり、大きく分けて3系統6種類あると言われ驚きました。
 系統として、自主管理組合・委託管理組合・店舗等並列管理組合の3系統があるとの事です。
 また、種類として、実住管理組合(区分所有者が所有且つ居住している)と、賃貸管理組合(区分所有者が所有はしているが賃貸物件として貸し出している)の2種類あり、それらを組合わせると3系統6種類になると説明され、確かにそのように分類されるのだと感心しました。

 確かによく考えてみると、最近は運営環境の多様化により分類数が増えてきているのは間違いなく、タワーマンションと低層マンションでも、その分類が変わってくるようにも思え、単に分譲マンションと一括りにすることは難しくなって行くように感じました。

 面談の相手が金融機関と言うこともあり、活動内容に関して少々踏み込んで聞いてみましたところ、主に管理会社と委託契約を締結している管理組合を営業活動対象として、特に実住管理組合を融資先として捉えている、言い換えれば、賃貸管理組合と言われる投資型マンションや、管理会社が介在していない管理組合は、融資の対象外とのことでした。

 何だか、系統や分類数や委託契約内容から考えると、金融機関の方々は物凄く狭い範囲を営業活動範囲としているのだと判りましたが、もう少し聞き出そうと思い、なぜ、管理会社を介在させる管理組合だけを対象としているのかと質問させて頂きましたところ、しっかりしている管理会社と脆弱な管理会社では、管理組合の運営に大きい差があると思っているためで、マンション管理組合へ、資金を融資するためには、ある程度、リスク軽減を図る必要もあり、その補完要素として管理会社も審査対象として見るようになった。マンション管理組合自体が 一般法人でもなく、個人でもない形態なので、どこを審査すべきか見え難い対象だと教えて頂きました。

 マンション管理組合自体は、一般の人には聴き慣れないと思いますが「権利なき社団」と言われ、法人格を持つ企業と個人の中間に位置しているようですが、金融機関の方々も、明確に「権利なき社団」を理解している方は少ないように思われます。
 金融機関としても、一般企業のように日常金融機関から借り入れや返済、売上の回収や送金などを、日ごろやり取りしている訳でもない管理組合のことは、簡単には理解できない団体なのかも知れません。

 弊社といろいろ話を進めてゆく中、「権利なき社団」の取扱に迷っているような発言が多くあり、もう少し、マンション管理組合という市場を知りたいのか、最近、自主管理組合が増えているようだが、なぜ増えてきているのか?なぜ管理組合は自主管理を選ぶのかを知りたいので教えて欲しいとの質問を頂きました。

 私の知る限りの情報だとお伝えしたうえで、近年のフロントのなり手不足はじめ、マンション管理に対する人材不足が大きな要因で、管理会社が受託する管理組合を選別する事例が多発していると聞いているとお伝えしましたところ、物凄く驚かれました。

 管理業は、一般的にクレーム産業と言われる業界で、管理組合から業務を単年度契約で委託して頂き、管理組合からの依頼内容や日常業務などを実施しているのが管理業だと聞いていますが、最近、管理費の支出仰制や区分所有者間の問題などを、管理組合が管理会社へ丸投げして、それを管理会社が丸呑みすることにより、現場で動く管理会社のフロントが疲弊して退職する事例が多発していると聞いています。
 不足した人員を新たに募集して補充が出来れば、これほど大きな問題にはならなかったと思いますが、人材の募集を行っても募集定員に至らない、応募さえもない状況に陥っているとも聞こえてきています。
 また、管理組合としては管理費の抑制は無駄の削減を図るうえでも必要なことですが、その管理費の抑制を管理会社への委託費の抑制に置き換える管理組合が多くなり、大手の管理会社の運営に大きな影響を及ぼしてきたためか、採算が取れない管理組合との委託契約は辞退する事例が発生しているようです。
 まだ、管理会社の採算に乗れるだけの管理料を支払える管理組合は、管理会社を乗り換えることで済みますが、管理会社との管理料の折り合いがつかない管理組合になれば、必然的に自主管理に移行せざるを得ないのではないかと説明しました。

 それを聞いた金融機関の方から、運営や資金的に問題が無い上位の管理組合は、これから増えることはないのか?と言われましたので、多分、マンション管理士さんやマンションに関するNPO団体の役員からも、組合の運営自体が悪化する管理組合が増加すると口を揃えて言われていますと返しました。

 金融機関としては、マンション管理組合市場は未開拓の市場だと捉えているように思えます。しかし、契約先となる管理組合は権利なき社団であり、適用される法令も聴き慣れないものとなると、管理組合であれば何でも取り込もうと言う事にはならないと思われます。
 
 資金の供給者である金融機関が、マンションに対する考え方が、またしっかり固まっていないという事は、これからのマンション管理組合の運営にも大きな影響を及ぼすように思えます。

 現在、マンションに対しては二つの高齢化があると言われていて、建物自体の経年化、区分所有者の高齢化の二つの老いが重くのし掛かっています。
建物自体の経年劣化を止めるためには、計画的な修繕工事を行う必要があるのですが、その工事を行うためには、各区分所有者から修繕積立金を集める必要があり、資金が工事予算に満たなければ、増額等を行う必要もありますが、増額を行う際には、各区分所有者の経済状況が大きく関わってきます。
年金受給者が区分数の過半数を超える管理組合であった場合には、そう簡単に管理費や修繕積立金を値上げすることはできないと思います。値上げが出来なければ、必然的に節約という抑制が始まります。その抑制が管理会社への委託料の抑制に置き換わり、自主管理への道に入って行くことになると見ています。

 このような管理組合の活動状況に、最近増加傾向にある管理費の滞納という要因を付加すると、理事会はじめ理事の方々への精神的並びに肉体的な負担が増加して、より運営が困難になって行くように思えます。