銀行等による取引モニタリング等の共同化と「為替取引分析業」の創設

私は、金融機関に対する内部管理態勢構築等のコンサルティングを行っています。AML/CFT高度化の1つの論点である「銀行等による取引モニタリング等の共同化」について、情報を整理します。

1.背景

AML/CFT対策強化の一環として、金融業界における取引モニタリング等の共同化が検討された結果、2022年6月に法改正(2023年6月施行)が行われ、複数の金融機関等から取引フィルタリング、取引モニタリング業務の委託を受ける「為替取引分析業」が創設された。当該業者は許可制で、金融庁から監督を受け、業務運営の質を確保するものである。

2.「為替取引分析業」の要件

金融庁の監督指針にもとづき、堅牢な態勢が求められている。経営管理の観点から、取締役会のガバナンス、適正かつ十分な人的構成、財務の健全性(資本および収益性)、内部管理の観点として、法令等遵守態勢、個人情報を含む情報管理態勢、コンティンジェンシープラン等の業務継続態勢、事務・システム・苦情・外部委託等のリスク管理態勢が求められる。また、再委託の禁止および兼業規制がある。

3.為替取引分析業者の設立について

全国銀行協会は、AML/CFT業務と為替取引分析業の高度化・共同化を目的とした新会社(当協会100%出資)の設立することを決定した。また、SCSK株式会社は、100%子会社を設立し、為替取引分析業の登録・認可などを前提に2023年度中の事業開始に向けて準備すると発表している。

4.今後について

為替取引分析業の共同化により、日本の金融業界の透明性と信頼性が向上すると共に、最新技術を活用した取引監視が実現されることが期待される一方で、同じ金融機関と言えど、事業特性、企業文化、内部管理方針の相違点を考慮しつつ、仕組みを共通化することは簡単ではないと考えられる。今後の検討および準備状況を見守りたい。

5.参照リンク

財務省:マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/councils/aml_cft_policy/index.html

財務省:マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/councils/aml_cft_policy/20210830_2.pdf

財務省:為替取引分析業について
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/ftta/index.html

金融庁:金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」報告書の公表について
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20220111.html

金融庁:銀行等による取引モニタリング等の共同化への対応
https://www.fsa.go.jp/common/diet/208/03/setsumei.pdf

為替取引分析業者に関する命令(令和五年内閣府・財務省令第三号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=505M60000042003_20230601_000000000000000

為替取引分析業者に関する内閣府令(令和五年内閣府令第四十九号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=505M60000002049_20230601_000000000000000

金融庁:為替取引分析業者向けの総合的な監督指針
https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/ftta/index.html

金融庁:コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方 (為替取引分析業関係)
https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230526/02.pdf

全国銀行協会:AML/CFT業務の高度化・共同化に係る新会社の設立について
https://www.zenginkyo.or.jp/news/2022/n101302/

SCSK:マネー・ローンダリング等対策高度化推進に向けた準備会社設立について
https://www.scsk.jp/news/2023/pdf/20230616.pdf


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