見出し画像

「品質」が良いとはどういう状態か?


1. 品質が「概念」だとしたら、何を基準に良し悪しを判断するのか?

「品質」という言葉を聞くと、「優れたもの」「高級なもの」といったイメージを持つかもしれません。しかし、品質とは単なる「良し悪し」ではなく、明確な形を持たない概念 です。

では、何を基準に「品質が良い」と判断するのでしょうか? その答えの一つが 「期待値」 です。

2. 品質の良し悪しは「期待値」を超えているかどうかで決まる

品質は、人々の期待値を満たしているか、それを超えているか によって決まります。

例えば、

  • レストランの料理 が「価格に対して想像以上に美味しかった」場合、品質が良いと感じる

  • スマートフォンを購入 したとき、「スペックやデザインが期待より低かった」場合、品質が悪いと感じる

つまり、品質の判断には 主観的な要素 が大きく関わります。どれだけ高性能な製品や優れたサービスであっても、ユーザーの期待に届かなければ「品質が悪い」と評価される可能性があるのです。

3. 期待値とは何か? その対象と把握方法

期待値の対象(品質を判断するポイント)

期待値は、製品やサービスを構成するさまざまな要素に影響を受けます。

  • 機能性(求める性能を満たしているか)

  • デザイン(見た目の美しさや質感)

  • 使いやすさ(操作の直感性、学習コスト)

  • 全体の雰囲気(ブランドの一貫性、世界観)

  • 顧客サポート(購入後の対応、保証内容)

たとえば、高級ホテル では「洗練された接客」も品質の一部とされますが、ビジネスホテル では「コストパフォーマンス」が重要視されます。つまり、何が「品質の良し悪し」を決めるのかは、状況や顧客の求める価値によって異なります。

期待値の把握方法

期待値を正しく把握するためには、次のような方法があります。

  • 業界標準やベンチマーク・・・ベストプラクティス、法規制、ガイドライン

  • 市場調査・・・競合分析、トレンド調査

  • データ分析・・・購買履歴、行動データ、カスタマーサポート問合わせ分析

  • 顧客アンケートやフィードバック収集・・・ユーザーの声の定量定性データ

  • インタビューやヒアリング・・・期待値の背景や深層心理を探る

このような方法で、ユーザーの期待値がどこにあるかを探り、応える品質を目指す必要があります。

4. 期待値は時とともに上がり続ける

さらに「品質」は、時と共に上がり続ける性質を持ちます。そのため今日、「品質が良い」と思われたものが、明日も同じ評価を受けるとは限りません。

例えば、AppleのiPhone を例に考えてみましょう。

  • 毎年新モデルが登場するが、「去年と大差ない」と言われることも多い

  • 価格が据え置きでも、ユーザーの期待値が上がっているため、新機能がなければ「進化がない」と感じられる

  • 競合メーカーがより良い製品を出せば、相対的に「品質が劣る」と見なされる

このように、期待値は常に上がり続けるもの であり、企業はそれを超え続ける努力を求められます。

5. 品質保証エンジニアの役割とは?

期待値が多様化し、上昇し続ける中で、企業はどのように「品質が良い」と評価され続けるのでしょうか?

ここで重要になるのが、品質には「当たり前品質」と「魅力的品質」の2種類がある という点です。

当たり前品質とは?

顧客が当然のように期待する品質のこと。これが満たされなければ、不満につながります。

例えば、

  • スマートフォンの電池が1日持たない →「こんなにすぐ充電が切れるのはありえない」

  • レストランの接客が無愛想 →「せめて普通に対応してほしい」

魅力的品質とは?

顧客の期待を超え、驚きや感動を与える品質のこと。提供されることで高い満足度につながります。

例えば、

  • スマートフォンのカメラにAI補正機能がついていた →「すごい! こんなに綺麗に撮れるの?」

  • レストランでシェフが料理のこだわりを直接説明してくれた →「特別感があって嬉しい!」

このように、ユーザーが期待する「当たり前品質」を備えていなければ、2度と選ばれることが無いということになりかねません。一方で「魅力的品質」を備えていれば、今後も選び続ける価値に繋がります。

6. 品質保証エンジニアの役割

企業が成長し続けるためには、「当たり前品質」を維持しながら、「魅力的品質」を強化する ことが求められます。そのために重要なのが 品質保証エンジニアの役割です。

品質保証コストのバランスを調整する

当たり前品質を維持するには、安定した品質保証プロセス が必要です。しかし、それだけにリソースを割きすぎると、魅力的品質の開発に十分なコストや時間をかけられなくなります。

逆に、魅力的品質を追求しすぎて当たり前品質が疎かになると、「最低限の期待すら満たせない」と評価され、顧客の離脱を招く可能性があります。

品質保証エンジニアは、

  • 「当たり前品質を維持するために、どの程度の品質保証を行うべきか?」

  • 「魅力的品質の開発に向けて、品質保証のリソースをどこまで割くべきか?」

といった バランス調整 を担うと共に、これらにかける開発コストの最適化を図る重要な役割を果たします。

品質保証エンジニアは企業の戦略パートナー

「品質が良い」と評価され続けるためには、期待値を把握し、それを超え続ける努力が必要 です。
企業が注力すべき「当たり前品質」と「魅力的品質」は、どちらも重要ですが、どの部分にどれだけの品質保証コストをかけるかによって、企業の競争力や利益に直結する戦略が変わってきます。

このように、品質保証エンジニアは、単なるテストフェーズを担当するエンジニアではなく、企業が「当たり前品質を維持しながら、魅力的品質を強化する」ための戦略パートナー なのです。


次回の記事では、当たり前品質と魅力的品質の違いをより明確にし、「品質保証」という視点から、どのように企業利益にアプローチできるのかを解説します。


いいなと思ったら応援しよう!