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ニューオキライを訪れ、無人化した駅を再利用した珍しい事例を体感する

廃校した校舎の利活用は増えているが、無人化した駅舎の利活用は、まだまだ事例として多くない。駅舎は校舎に比べて建物の規模が小さく、校舎ほど多機能な施設でないためかもしれないし、校舎ほど人々の感情や感傷を掻き立てないからかもしれない。

無人化する駅は、利用者減による影響で無人化しているケースが多いだろうし、そうした駅の多くは地方のような自動車社会の世界に存在しているケースが多いだろう。だから学校のような誰もが頻繁に利用した記憶のある建物に比べて愛着が薄い可能性はある。

岩手県大船渡市の三陸町越喜来地域は、そんな無人化した駅の再利用の道を模索し、活動を始めている地域である。また、実は廃校舎の利活用も進めている。全国を探しても、廃校した校舎・無人化した駅の両方を再利用した活動を展開している地域は少ないと思われ、稀少な地域と言えるかもしれない。

ニューオキライ(Instagram / Facebook

甫嶺復興交流推進センター(Instagram / Facebook)※三陸アクティブ

無人駅化した駅舎を活用したニューオキライ

ニューオキライ(旧・三陸駅、三陸町観光センター)

夏の日差しが辺り一面を輝かせる昼時、ニューオキライを訪れた。三陸駅だった頃、雑然と物が並んでいた時分と比べて中はスッキリとしており、以前より広くなったように感じた。

大船渡市の中心市街地でさえ閑散としている昨今、そこから遠く離れた三陸町は、一層閑散としていた。中心市街地に比べて辺り一帯に建物が少ない分、どこか寂しさは感じられない。

あるがまま。人里と大自然が雄大に広がっている景観が、寂しさよりも今や映画でしか観られなくなった田舎の原風景がもたらす心の安寧を感じさせる。もっとも、少し先にはイチゴ栽培のハウス、その隣ではトマト栽培工場の建設風景が目に映る。

更に先には防潮堤が窺えるため、人工色はそれなりに強い。人によっては、それらが景観を損ねていると感じるかもしれない。だが、筆者はそう思わない。一度として思ったことがない。

そうした人工物による人の息吹とその周囲に広がる海・山・空の雄大さが織り成す景観こそ、森羅万象の生を感じさせる自然だと考えるためだ。どちらか一方だけでは不完全である。両方そろって初めて我々が生きる世界の実像たりえるのだ。

ニューオキライでまちづくり・来訪者を増やす難しさを考える

ニューオキライの施設内に目を向けると一人の女性の姿があった。ニューオキライ創設に動き出した人物の一人、佐々木イザベル氏である。佐々木イザベル氏は、大船渡市への移住者としても知られる人物だ。

イザベル氏は、ホタテ養殖を行う漁業者であり、観光ガイドであり、空手家でもある、とても数多くの顔を持つ人物である。テレビや雑誌など数多くのメディアでも取り上げられており、大船渡市の関係者としては数少ない全国区となっている人物だ。

コーヒーを頂きながら、イザベル氏と話す機会を頂けた。感謝するばかりである。話題は、日本に住み始めた当時の話や大船渡市内の話である。大船渡市を訪れる人々をどうすれば増やせるか。話を聴けば聴くほど、人々の流れを生み出すことの難しさが感じられる。

会話の中で、越喜来の三平食堂で金曜日の夜にビアガーデンを行っている話を聴いた。お酒を飲みながら、声をかけられた地元の人々が飲みに加わっていく話は、まさに人々の交流が生まれる瞬間の話で、とても楽しげで良さが感じられた。

そうした人のつながりが気軽に生まれていく瞬間こそが、地方の良さでなかろうか。そんなことを思った。何せ、狭い世界である。通りすがる人々の多くは知り合いであり、だからこそ気軽に声をかけ、フランクに宴会を始められるのだ。

東日本大震災から早10年超。そんな話を聴く機会が減っていただけに、今なおそうした世界が広がっているのは、とても素敵に感じられた。お酒の場に限らず、そうした世界がニューオキライを中心に町全体に広がっていくと素敵だと感じられる。

今回は少し立ち寄っただけだったが、今度は周辺の散策と併せて訪れたい。そう思った。ニューオキライを訪れる人々が、どんどん増え、かつて三陸町として独立していた頃に中心部だった当時の賑わいを取り戻して欲しい。そう願わずにいられない。


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