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気仙沼市を舞台に「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」を視考してみる|地域視考

地域視考の一環として、前回「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」を読んだ感想を伝えた。

『それは地域視考なのか?』と思われるかもしれないが、乱暴な言い方をすれば、『地域について考えたら地域視考である』と返したい気持ちをほんの少しだけ持っている。

それはさておき、そもそも前回の記事は前置きのような立ち位置であり、今回が本文である。あくまで記事を分けたに過ぎない。そのため、地域視考の枠組みから外れているわけでない。

早速だが、ここから本文であり本編となる気仙沼市を舞台に「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」について考えていきたいと思う。一旦、広告を挟んでから始める。


CSRに近い活動とアライアンスに近い活動が身近にある気仙沼市

「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」では、地方の内需企業が成長する上で、以下の3点が重要と書かれている。

  1. CSR活動(地域のお役に立つ活動)

  2. アライアンス(他企業との提携)

  3. メディア出演(パブリック・リレーションズ)

地方の内需企業とは、とどのつまり人口が減っていく環境において、自然に減っていくお客様を相手に収益を伸ばしていかなければならない企業である。何もせずに漫然と経営を続けている限り、人口減少とともに衰退していく宿命にあるため、危機的状況に陥っている企業とも言える。

内需企業の例としては、本書のエネジン株式会社のようなLPガス販売事業を営む会社や飲食店や小売店、建設・設備業者、福祉事業者など、様々な企業が例になる。

『飲食店や小売店は観光客を相手にしているので、外需企業でもあるのでないか』と疑問を持つ読者もいるかもしれない。しかしながら、有名な観光地やビジネス街でない限り、多くの地方において、飲食店や小売店のお客様のほとんどは地元の人間である。そのため内需企業に等しい。

逆を言えば、飲食店や小売店が外需企業になれるほど外需中心の収益構造を構築できるのであれば、人口減少とともに衰退していくような状況には陥らない。だが、大船渡市の中心市街地が顕著だが、残念ながら大半の企業・事業者が内需頼みになっているのが実情である。

そのため、本書で伝えられているようなより多くの内需を取り込み、収益を拡大していくための方策を検討していく必要がある。ただし、一点だけ先に言及しておくと、本書で伝えられている方策は、どれもが即効性のあるものではない。

運良く即効性を得られる可能性がゼロとまでは言わないものの、ほとんどゼロに近いと思った方が良い。3年、5年、10年と続けて芽が出れば良い方である。本書では速やかに効果が出ているように見えるが、前回伝えた通り、それは浜松市の人口あってのものである。

人口3万人〜6万人程度の大船渡市や気仙沼市などでは、同様の速度、同様の規模で効果を得られる可能性は低い。一方で、やらないよりはやった方が良い。そもそも何もやらなければ人口とともに消滅の途を辿るだけである。

飛躍的な企業成長とまではいかずとも良い循環ができつつある気仙沼市

「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」で取り上げている3つの施策の中で、

  1. CSR活動(地域のお役に立つ活動)

  2. アライアンス(他企業との提携)

実は1と2について、気仙沼市では芽が出つつある。規模こそ小さいものの、1と2が良い効果を生み出すと教えてくれている。

たとえば、先月に記事としてとりあげたくるくる喫茶うつみは、その一例になると考える。くるくる喫茶うつみは、通常営業時は一般的な喫茶店であるが、日曜日に非営利組織や市民団体などに場所を貸すことで、地域のお役に立つ活動をしている。

以前記事にしたつながるアジアカフェ、nihongo cafe もその一例である。このような地域のお役に立つ活動によって、くるくる喫茶うつみと新たに関わる人々が増える。また訪れた人々が交流し、時間を共有することで地域に繋がりが生まれる。その繋がりが、くるくる喫茶うつみに新たなお客様を呼ぶ好循環ができていくのである。

また、2024年2月には、おにぎり屋とのコラボレーションを実施している。洋食・喫茶に強みを持つくるくる喫茶うつみと、和食(おにぎり)に強みを持つおにぎり屋によるアライアンスに近く、お互いが普段提供していない部分を埋める形で、新たな価値を創出している。

営利的な組織ではないかもしれないが、ぬま大学も例に漏れない。地域で生活している人々のやりたいを実現べく伴奏する活動は、まさに地域のお役に立つ活動である。

ぬま大生個人のお役に立つだけでなく、ぬま大生のやりたい活動を後押しする形で、地域に対して多種多様な好ましい効果を与えており、影響力は決して低くない。また、ぬま大生の中には事業者も多い。そうした事業者と肩を並べて支援する動きは、ある種のアライアンスに近い。

あと一歩を踏み出す力に不安を持っているが地域にコミットできる強みを持つぬま大生と、一人一人にコミットする力に強みはあるが、広く地域にコミットできるほどのリソースがないぬま大学運営は、互いの強みを良い形でコラボレーションできている。

また、ぬま大学を通して、移住者が受け入れられるコミュニティを創造し、移住者と地元の人々の橋渡しを実現しているぬま大学は、内と外を繋ぐためのリソースが潤沢にない行政にとってお役に立つ活動である。

結果として、外から人を呼び込む一助になっており、良い循環を生んでいる。確かに6万人程度が暮らす自治体全体を活性化させるほどのインパクトを生み出すほどにはなっていないかもしれないが、未来を繋ぐ一筋の道を生み出しているのは疑いようもない。

上記の2事例のように、企業によるCSR(に近い)活動とアライアンスが生み出す個々の成長や地域の成長力に与える影響は、存外侮れない。気仙沼市には、そうした成長が生まれる好循環が芽吹いている。

まだまだ伸ばす余地があるのはメディアの活用

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